あなたを殺す_まえがき用

「あなたを殺す成功法則」のまえがきを無料公開中

はじめに

まずは、次のページにある
2つの円の画像をご覧ください。

さて、どちらの円が気になったでしょうか?

もし「欠けた円」が印象に残ったとすれば
あなたは「マイナス思考」の傾向があります。

おそらく、あなたは毎日の生活の中で
「欠けているモノ」
「満たされてないモノ」
そればかりにフォーカスして不平不満を言ったり
不安な気持ちになっていたりしませんか?

たとえば、あなたは
お金についての不安を
少なからず感じているはずです。

でも実際、なんだかんだ言いながらも
ちゃんと今日まで生活してこれましたよね?

ですので
「ないモノ」ではなく
「あるモノ」を数える
プラス思考でいきましょう!

さて……。

ここまでの文章を読んで、どう感じたでしょうか。

「なるほど、そうかぁ……」
「やっぱり自分はマイナス思考なのか……」
「たしかにお金についての不安があるし……」
と、感心してしまったあなたは
心がピュアで素敵な方だと思います。

でも、ご注意を。

実はこれ、インチキ占い師や、エセ心理カウンセラーがよく使う手口です。

円の欠けているところが気になってしまうのは、あなただけではありません。多くの人間が生まれながらに持っている本能です。それにお金についての不安も、誰もが少なからず感じていることです。

つまり、誰にでも当てはまることを、“心を読んで言い当てた”かのような演出をしただけ。

このような手法をコールドリーディングと言います。
相手の事前情報なしで「私はあなたよりも、あなたのことをよく知っていますよ」と相手に信じさせる話術です。

ですので、そういう胡散臭い連中には、
「そういうあなたも、私の『欠けた部分』にフォーカスしていますよね?」
「私にもいい面があると思うんですけど?」
「つまり、あなたもマイナス思考ですよね?」
「あなたもプラス思考をしたほうがいいんじゃないですか?」
と突っ込んでおきましょう。

さて、サクッとペテン師の手口を暴露したところで、ここからが本題です。

実際のところ、人間であれば「欠けた部分」に注意が向いてしまうのは事実です。

これは、自分の意志ではどうにもできない「つい反応してしまう」という性質のもので、思考をショートカットする人間の認知システムの一つです。

経済学に心理学的考察を持ちこみ、行動経済学という新ジャンルを確立してノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、この認知システムを「システム1」と定義しました。

いきなり、専門用語を並べ立てましたが、ビビる必要はありません。
小学生にも理解できる、超簡単な話です。

「つい反応してしまう」(システム1)

その実体験を今からしてみましょう。
一瞬でカーネマンが定義した「システム1」が理解できます。

次の数列を注意して見てください。

今あなたは頭の中で、1・2・3ときて「4」と思い浮かべたと思います。

「□に入る数字はなんでしょう?」とは問いかけていません。ただ「次の数列を注意して見てください」といっただけです。

「つい反応してしまう」とは、このことです。

先ほどの円の図も心理学で「ゲシュタルトの欠けた円」と言われるもので、「人間の意識は欠けているところに、つい反応してしまう」という性質を説明するために作られたものです。

ゲシュタルト心理学者たちは、人間は欠けている部分を補って見ようとする性質があると考えました。

ゲシュタルトとはドイツ語で「全体で認識することで、初めて意味を成す」ということを意味しています。

「ゲシュタルト?」
「ちょっと何言ってるのか、わかんないんだけど?」

そんな方のために、ここでもまた一瞬でゲシュタルト心理学者の言うことを理解できるよう、さらに実体験していただきます。

次の文章、読めるはずです。

こんちには!
みさなん、おんげきですか?


なぜか読めてしまいましたよね?

そうです。正しくは、

こんにちは!
みなさん、おげんきですか?


です。

あなたはなんの努力をしなくても、脳が無意識のうちに自動で補正をしたことが、おわかりいただけたでしょう。

つまり、あなたの脳は「本来ならば、こうあるべきだよね?」という文章の全体像を瞬時に捉えて、瞬時に本来の意味を認識したのです。

この性質をプラスに働かすことができれば、努力や向上心、やる気やモチベーションアップにつなげることができます。

たとえば、こんなことってありませんか?

なんとなく部屋の一部分を掃除したら、他の箇所の汚れが気になり、結局、部屋全体の掃除をやってしまった、とか。

または、定時をすぎたけれど仕事のキリがいいところまであと少しなので、がんばってやってしまった、とか。

つまり「未完了のままだと気分がスッキリしない」「だから、やらずにはいられない」という心理状態です。

本棚にズラーっと、お気に入りのコミックスが1巻から60巻まで順番に並んでいる……と思いきや、一部順序が入れ違っていて「あー気になる! 直したい!」というあの感覚です。

しかし逆に、「本来ならば、こうあるべきだよね?」の欠けている部分が、自分の行動や能力で埋められない場合にはマイナスに働くこともあります。

「顔のこの部分のホクロがなかったらなぁ……」
「この年齢でこの収入は情けないな……」
「このまま独身のままでいいんだろうか……」
「旦那が洗濯物をたたむのを手伝ってくれない」
「上司のくせして、あの人は役に立たないな」
「あの人、道にゴミをポイ捨てしやがった!」
「夜中だというのに、隣の家のテレビの音がうるさい」

そして人間は感情の生き物です。

「本来ならこうあるべき」である理想と現実のギャップを埋めることができないと、ネガティブな感情が瞬時にこみ上げてきます。

自己嫌悪、劣等感、焦り、イライラ、怒り、不安……などなど。

そこで登場するのが冒頭でも紹介した「プラス思考をしましょう」というアドバイスです。

「あなたは『ないモノ』ばかりに目がいっていますよね?」

「物事の悪い面ばかりを見ていませんか?」

「自分や人のアラ探しばかりしていませんか?」

「円の欠けた部分だけを見ていませんか?」

「それはマイナス思考です」

「そのせいで、自分が好きになれないのです」

「そのせいで、人間関係がうまくいかないのです」

「そのせいで、いつもお金がない……と悩むのです」

「『あるモノ』にフォーカスして感謝しましょう!」

「人や物事のよいところを見ましょう!」

「そもそも日本って平和で安全で豊かないい国じゃないですか?」

「だから、プラス思考で毎日ハッピーに暮らしましょう♪」

……たしかに、こういうアドバイスが有効な場合もあります。

でも、どうでしょう?

本当に精神的に参っているときのプラス思考って、息苦しくないですか?

理屈ではわかるけど、ネガティブな感情が「どうにもこうにも収まらない!」ってことが。

本書は、そんなプラス思考に疑問を持ちはじめた方のために書かれたものです。

私自身、バカの一つ覚えでプラス思考をしまくった結果、ストレスで十二指腸潰瘍になってしまった経験があります。今はすっかり元気ですが、ガスター10が手放せない日々が十数年も続きました。

しかし、だからといって安易に、プラス思考を全否定するつもりはありません。

それでは「0か100か?」「白か黒か?」の極端な二元論の狭い考え方、つまりバカの一つ覚えの裏返しになってしまいます。

『プラス思考は使い方によって毒にも薬にもなる』

このように考えるのが、よりよい人生を送るためには得策でしょう。

また、本書では自己啓発・成功法則などで、まことしやかに語られている一見正しそうな、目標達成術や成功するためのイメージ法についてもメスを入れていきます。

・目標を書き出すと達成しやすくなるのウソ
・プラスのイメージをすると恋もダイエットも失敗する
・むしろマイナス思考があなたを成功に導くカギ


これらについての真実を知ると、これまであなたが正しいと信じてきた常識が、実は何者かから思い込まされていた“真っ赤なウソ”であったことに驚くかもしれません。

さらには、引き寄せの法則「思考は現実化する」を信じて
「わたしはすでに志望校に合格している!」
「わたしはすでに大金持ちだ!」
「わたしはすでに素敵なパートナーと暮らしている!」
と日夜、自己暗示をかけている方……ヤバいです。

実はこれらのことも実証実験で効果がないばかりか、害になることが実証されています。

何者かによるコントロールから解放され、もっと自分らしい人生を送りたいと願う方は、どうぞ最後までお付き合いください。

【目次】

第一章「ツイてる!」には気をつけろ!

▼斎藤一人さんの「ツイてる! 思考法」
▼夫婦生活を円満にする魔法の言葉とは?
▼プラス思考には限界がある
▼プラス思考を盲信してストレスで十二指腸潰瘍になる

第二章 プラス思考とマイナス思考

▼プラス思考・マイナス思考に良いも悪いもない
▼マイナス思考だから人類は生き延びてきた
▼コップの水は「まだ半分ある」「もう半分しかない」の罠
▼プラス思考とマイナス思考は対立する概念ではない

第三章 自己啓発・成功法則のウソを暴く
 
▼目標を紙に書いても、達成できるわけではない
▼プラスのイメージは、あなたをダメにする
▼成功のイメージ法は「ダイエット」や「恋愛」でも悪影響
▼プラス思考とマイナス思考の相乗効果

第四章 そもそも正しい目標設定ができているのか?

▼自己啓発・成功法則セミナーで演出される謎の高揚感
▼その「目標」は適切なものなのか?
▼その目標・願望は本当にあなたが求めているものなのか?
▼自分とリンクした目標設定の方法とは?
▼パッションテストとは何か?
▼本当の自分の理想を掘り起こす

第五章 洗脳されていませんか?

▼他人や環境に縛られる
▼カネカネ教の狂信者になっていませんか?
▼カルト宗教の洗脳手口と酷似
▼責任や世間体など、投げ捨てて逃げろ
▼コンビニオーナーは本部の奴隷
▼「それ、辞めや!」という言葉に救われた
▼無職になるために750万円必要でしたが……

おわりに

▼世の中、正しそうな教えやルールで溢れている
▼自分の心がどう感じているのか?で判断する
▼自己啓発・成功法則の罠
▼「ツライ……でも、がんばれそうだ」というときは成長できるチャンス
▼しかし、心がすり潰されそうに苦しいときは逃げてもいい

あなたを殺す成功法則「プラス思考の罠」: 心が苦しければ逃げてもいい 自己啓発・成功法則の罠


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