進撃の巨人で読み解く「ルトワックのクーデター入門」入門編
これは壁 Advent Calendar 2021の24日目の記事です
(免責:この記事は自分が面白いと思ったものを紹介してだけであり、いかなる政治的意図もありません。また、いかなる学術的、教育的な価値はありません。内容には誤りを多く含まれると思います)
壁カレンダーと進撃の巨人
2021年、ついに偉大な作品が完結しましたね。進撃の巨人は2009年に連載を開始して12年の連載期間を経て2021年に完結しました。作品が面白いことはもちろん、作者がほぼ同年代ということもあり、ずっと追いかけてきました。諌山先生、お疲れ様です。
そういえばこのAdvent Calenderは「壁」をテーマにしていにもかかわらず進撃の巨人ネタがないなと気が付いたので書いてみたいと思う。ちなみにアニメ版だけを追っていて、まだ完結を見ていない人は多いと思う。この記事で扱うのは原作の大体18巻、アニメだとシーズン3の前半くらいの内容なのでネタバレ注意です。
さて進撃の巨人を知らない方はこの記事を読まないと思うが念のため、導入を書いておくと
ということで壁の中に囚われた人類が、強大な巨人に蹂躙されたり食べられたりするお話です(ざっくり)。そんな進撃の巨人の中盤で、主人公が所属する調査兵団が、壁の中の中央政府に見切りをつけてクーデターを起こす話があるのですが、このクーデターがまさに教科書に書いてある通りのようなクーデターでした!
いやクーデターの教科書ってなんなのという話ですが、実際にクーデターの教科書は存在するのです!。そして、それを読みながらクーデターの題材として進撃の巨人を読むと理解が進むんじゃないかという仮説をもったので紹介するのが本記事です。
ルトワックの"クーデター入門"と進撃の巨人
ルトワックの"クーデター入門"(原題: Coup d'État: A Practical Handbook)を知っていますか。これはルーマニア生まれの戦略学者であるエドワード・ルトワックが1968年に初版出版したものであり、多くのクーデターの事例研究からその実行方法を解説したものです。実際に初版のまえがきは以下の文章から始まっています。
ハンドブックという通り、1968年の出版以来、その後多くの国のクーデター防衛・実行の参考に使われたといわれています。出版以来50年近く世界的な影響を与えた本書であるが、2016年に改訂版が出版され、奥山真司先生による翻訳版が2018年に出版されています。
ではなぜ、この本に興味をもったのかといえば、研究者の末席にいる人間として、戦略学の研究者であるルトワックが20代後半で書いた本がここまで大きな影響を世界に与えたという事実にすげーなと思ったからです(専門と関係ない本読むの楽しいですよね)。
そんなことがあり手に取った本書ですが、読み進めているうちに、ここに書かれているクーデターの実践方法って、進撃の巨人のクーデター編(13-17巻)でも描かれてね?と思いました。実際に諌山先生もしくは設定協力の方がクーデター入門を読んでいるかはわからないのですが、進撃の巨人で行われたクーデターの成立条件や過程はまさにお手本のようなクーデターでした(たぶん)。
特にルトワックが解説する、クーデターを実行するうえで軍事的組織を中立化しさらに実行側に引き込んでいく過程や(進撃の巨人だと憲兵兵団と駐屯兵団)、主要なメディアを支配下にいれること(新聞記者たちを味方につける)、襲撃対象の設定(中央憲兵団)など、合わせて読むと理解が深まると思います。今回は、あまり長く書けないので、第一章第二章の内容を解説しつつ、進撃の巨人だとどのように当てはまるかを見ていきます。
第一章 クーデターとは何か
ルトワックはクーデターを下記のように定義している。
クーデターとは何かと考えるとき、他の民主的でない政権移譲のプロセスとの比較が役に立つ。例えば革命とは民衆によって行われるものであり、その際には多くの場合、社会や政治そのものが大きく変わる。一方で、クーデターは既存の勢力への浸透により、国家権力をそのまま活用するものであるとしている。また、よく報道で軍事クーデターと言われる、軍全体で政権を乗っ取るものはプロヌンシアミエント(宣言)と定義されている。クーデターとの違いは一部が浸透によって支配権を奪うのではなく、軍全体による乗っ取りであることだという。
進撃の巨人を考えると、クーデターは調査兵団団長のエルヴィンスミスにより計画されたものであり、実質的な支配者であるレイス家おさえて首をすげかえたうえで、本物の王に政権をお返しするという名目のもと、駐屯兵団、王政権や憲兵団の一部への浸透・中立化を行い、政権を奪取している。また、その後も一時的にという名目で兵政権による国家運営を既存の体制に則りながら運用(することで調査兵団の都合のよい政権運営を)している。
第二章 クーデターはいつ可能か
クーデターはあらゆる場所・国で可能ではなく、ある程度の条件がそろってなければいけないとされる(例えばイギリスでクーデター政権を維持することは難しい理由を説明している)。ルトワックは以下の三つを前提条件としてあげている。
経済の後進性
政治的独立
有機的な独立
進撃の巨人の舞台がこれらの前提条件を満たしているかというと、条件1,2は満たしていると容易に考えられる。経済の後進性に関しては、ウォールマリアが破壊されたことにより、大幅な人口減となり人類の困窮は日々高まっているといえる。また、壁内人類はまさに壁内で完結しているため政治的に独立(他国からの干渉が見えないが実際には…)といえる。
前提条件3をもう少し説明すると
つまり政治的な中心がなければその妥当もしくは浸透によって、集中的な権力を得ることはできないということだろう(たぶん)。実際に進撃の巨人の王政権では、表向きの支配者のフリッツ王とその重臣(非ユミルの民)、実際的な支配者のレイス家があり、その2つを同時に押さえることでクーデターを成立させている。
おわりに
いかがでしたでしょうか。かなり大雑把な説明だったし自分の理解もまだ足りていないので中途半端な感じなったが進撃の巨人とルトワックの”クーデター入門”どちらも面白いのでぜひ読んでない人は読んでみてほしいです。最後に、諌山先生本当にお疲れ様でした。
(なんかよくわからないこと書いてすみません)
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