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【種牡馬辞典】Phalaris系

Phalaris

 <プロフィール>
1913年生、英国産、24戦16勝
<主な勝ち鞍>
1917年チャレンジS(T7F)
1918年チャレンジS(T7F)
<代表産駒>
Pharos(1924年英チャンピオンS)
Manna(1925年英2000ギニー、英ダービー)
Colorado(1926年英2000ギニー、1927年エクリプスS)
Fairway(1928年エクリプスS、英セントレジャー、1929年ジョッキークラブC、1928、29年英チャンピオンS)
<特徴>
母BromusはジュライC連覇など19世紀英国最強スプリンターの座に君臨したSpringfieldを2×3でインブリードしており、本馬も距離に限界のある筋肉質なスプリンターとして活躍。種牡馬としては長距離偏重だった当時の欧州競馬にスピード化をもたらした立役者の一頭であり、1925年と1928年には英愛リーディングサイアーにも輝いた。特に、Pharos=Fairway、Sickle=Pharamondなど現代競馬に多大な影響を与える名種牡馬を多数輩出した点は素晴らしく、現在はPharos→Nearco、Sickle→Unbreakable→Polynesian→Native Dancerのラインが現代競馬を牽引している。なお、本馬は第17代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿により生産・所有されたイギリス産馬で、本馬には同じくスタンリー卿の生産・所有馬であるChaucer産駒の肌馬が多くつけられた。先に挙げたPharos=FairwayやSickle=Pharamondもその組み合わせであり、ほかにも数多くの活躍馬が誕生している。

-Pharos

 <プロフィール>
1920年生、英国産、30戦14勝
<主な勝ち鞍>
1924年英チャンピオンS(T10F)
<代表産駒>
Cameronian(1931年英2000ギニー、英ダービー、St.ジェームズパレスS、1932年英チャンピオンS)
Firdaussi(1931年デューハーストS、1932年英セントレジャー)
Phideas(1937年愛2000ギニー、愛ダービー)
Nearco(1938年伊2000ギニー、伊ダービー、パリ大賞)
Pharis(1939年仏ダービー、パリ大賞)
<特徴>
Fairway(1928年エクリプスS、英セントレジャー、1929年ジョッキークラブC、1928、29年英チャンピオンS)やFair Isle(1930年英1000ギニー)の全兄という良血馬。本馬自身も1924年英チャンピオンSを制し、1936年英愛リーディングサイアーにも輝いたが、5つ年下のFairwayには競走馬としても種牡馬としても及ばなかった。ただ、イタリアの名馬産家フェデリコ・テシオ氏が名馬Nearco(1938年伊2000ギニー、伊ダービー、パリ大賞)を生産したことにより、Nasrullah、Royal Charger、Northern Dancerなどの現代競馬を牽引する根幹種牡馬の父祖となった功績は極めて大きい。Phalaris×Chaucerという第17代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿ゆかりの血統であり、St.Simonの4×3が配合のツボ。Fairwayよりも筋肉質で父譲りのスピードを後世に伝えている。

--Nearco

<プロフィール>
1935年生、伊国産、14戦14勝
<主な勝ち鞍>
1938年伊2000ギニー(T1600m)
1938年伊ダービー(T2400m)
1938年パリ大賞(T3000m)
<代表産駒>
Nasrullah(1943年英チャンピオンS)
Dante(1944年ミドルパークS、1945年英ダービー)
Sayajirao(1947年愛ダービー、英セントレジャー)
ニンバス(1949年英2000ギニー、英ダービー)
<特徴>
ドルメロ牧場の血統書に「完璧な大きさの美しいバランスと偉大な資質。本質的にはステイヤーといえないにもかかわらず、3000mまでの求められた14レースのすべてを完勝した。偉大な底力と驚異的なスピードによって長距離レースをも勝った。」とあるフェデリコ・テシオ氏の最高傑作。さらに、種牡馬としては現代競馬を牽引するNasrullah、Royal Charger、Northern Dancerの父祖となり大成功を収めた。大種牡馬St. Simonを父Pharosが4×3、母父Havresacが2×3でインブリードしているのに対して、母母Catnipが同血脈を1本も持たない配合形が素晴らしい。競走馬としても種牡馬としても非の打ち所のない成績を残しており、20世紀における最も偉大なサラブレッドの一頭といえるだろう。

--Pharis

 <プロフィール>
1936年生、仏国産、3戦3勝
<主な勝ち鞍>
1939年仏ダービー(T2400m)
1939年パリ大賞(T3000m)
<代表産駒>
Ardan(1944年仏ダービー、凱旋門賞、1945年サンクルー大賞、1946年コロネーションC)
Asterblute(1949年独1000ギニー、独オークス、独ダービー)
Scratch(1950年仏ダービー、英セントレジャー)
Talma(1951年英セントレジャー)
<特徴>
第二次世界大戦の影響によりわずか3戦のキャリアで競走馬生活を終えたが、そのうちに1939年仏ダービー、パリ大賞を制したフランス競馬史屈指の名馬。種牡馬入り後も大戦のあおりを受けたが、Ardan(1944年仏ダービー、凱旋門賞、1945年サンクルー大賞、1946年コロネーションC)を筆頭に多くの活躍馬を出して、1944年には仏リーディングサイアーにも輝いた。母母がIsonomyの4×3、母がBend Orの3×5、St. Simonの4×4、本馬がCylleneの4×4、St. Simonの5・4×5・5と代々スタミナ血脈を掛け合わせており、筋肉質でスピードに優れた父Pharosとは異なり、豊富なスタミナを持ち味とした名競走馬であり、名種牡馬であった。

-Sickle

 <プロフィール>
1924年生、英国産、10戦3勝
<主な勝ち鞍>
1926年プリンスオブウェールズS(T6F)
<代表産駒>
Stagehand(1938年サンタアニタダービー、サンタアニタH)
Cravat(1939年ブルックリンH、サバーバンH、ジョッキークラブGC)
Star Pilot(1945年米ホープフルS、ベルモントフューチュリティS)
<特徴>
名牝Selene(1921年チェヴァリーパークS、1922年パークヒルS)の初仔であり、きょうだいにHyperion(1933年英ダービー、英セントレジャー)、Pharamond(1927年ミドルパークS)、Hunter's Moon(1929年ニューマーケットS)、Guiscard(1936年クイーンズプライズH)、Night Shift(1939年ヨークシャーオークス)などがいる良血馬。母が小柄な馬であったため本馬も半弟Hyperionも全弟Pharamondも小柄な競走馬であったが、本馬自身は怪我によりビッグタイトルを獲得することなく引退となった。種牡馬入り後は1シーズンをイギリスで過ごし、2年目以降はアメリカに渡り1936、38年に米リーディングサイアーに輝くなど大成功。Gainsborough産駒で豊富なスタミナを誇ったHyperionとは異なり、本馬は父Phalarisから非凡なスピードを受け継ぎ、全弟Pharamondと同様に短距離馬を多く出した。本父系からはNative Dancerが誕生しており、その子孫にはMr. Prospector(父父Native Dancer)やNorthern Dancer(母父Native Dancer)など現代競馬を支える根幹種牡馬が並ぶ。

----Native Dancer

<プロフィール>
1950年生、米国産、22戦21勝
<主な勝ち鞍>
1952年ベルモントフューチュリティS(D6.5F)
1953年プリークネスS(D9.5F)
1953年ベルモントS(D12F)
1953年トラヴァーズS(D10F)
<代表産駒>
Hula Dancer(1963年英1000ギニー、ジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞、英チャンピオンS)
カウアイキング(1966年ケンタッキーダービー、プリークネスS)
Native Street(1966年ケンタッキーオークス)
<特徴>
白黒テレビが普及し始めた時代に「芦毛の亡霊(Gray Ghost)」の愛称で親しまれた22戦21勝の歴史的名馬。怪我に悩まされる面もあったが、アメリカ競馬史上屈指の一頭であることは間違いない。母母Miyakoは1938年米2歳チャンピオンEl Chicoの全姉であり、Ben Brushの4×3やDominoの4・5×4などからLexingtonのスピードを強く受け継いだ馬。そのMiyakoにDiscovery、Polynesianと欧米混血馬を掛け合わせて誕生したのが本馬であり、種牡馬としても世界中で様々なカテゴリーの活躍馬を輩出。名種牡馬として一大父系を築いた。

-Fairway

 <プロフィール>
1925年生、英国産、15戦12勝
<主な勝ち鞍>
1928年エクリプスS(T10F)
1928年英セントレジャー(T14.5F)
1928年英チャンピオンS(T10F)
1929年英チャンピオンS(T10F)
1929年ジョッキークラブC(T18F)
<代表産駒>
Blue Peter(1939年英2000ギニー、英ダービー、エクリプスS)
Watling Street(1942年英ダービー)
Kingsway(1943年英2000ギニー)
<特徴>
全兄にPharos(1924年英チャンピオンS)、全妹にFair Isle(1930年英1000ギニー)がいる良血馬。1928年英セントレジャーを制すなど兄妹以上の活躍を見せ、種牡馬としても1936、39、43、44年英愛リーディングサイアーに輝いた。Phalarisの産駒ながら細身で伸びやかな馬体であり、馬体の輪郭は父父Polymelusに近いか。Phalaris×Chaucerという第17代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿ゆかりの血統であり、St.Simonの4×3が配合のツボ。

--Fair Trial

<プロフィール>
1932年生、英国産、9戦7勝
<主な勝ち鞍>
1935年クイーンアンS(T8F)
<代表産駒>
Lambert Simnel(1941年英2000ギニー)
Court Martial(1945年英2000ギニー、英チャンピオンS)
Palestine(1950年英2000ギニー、St.ジェームズパレスS、サセックスS)
<特徴>
名種牡馬Pharosの全弟であり、本馬自身も競走馬としても種牡馬としても大活躍したFairwayを父に持つ英国産マイラー。ただ、本馬を語るうえでは母Lady Jurorの話が先だろう。Lady Jurorの母は現代競馬にスピード革命をもたらしたLady Josephineであり、同様に現代競馬のスピード面に多大なる影響を与えるThe Tetrarchとの間に生まれたのがMahmoudやNasrullah、Royal Chargerの母祖であるMumtaz Mahalである。それに対して、本馬の母Lady Jurorは英国立競馬博物館で「おそらくは英国において今まで知られている最も優秀かつ著名な長距離馬」と評されたSon-in-Lawを父に持つ。Son-in-LawのスタミナとLady Josephineのスピードを併せ持った名繁殖牝馬が母Lady Jurorであり、本馬もその影響を多分に受けた名マイラーであった。種牡馬としては機動力や粘り強さをよく伝え、Fair Trialの9・7×8・6を持つアンライバルドが2009年皐月賞の3~4角で見せた瞬間移動的なマクリはまさにFair Trialの影響を強く受けた証である。また、ディープインパクトの母ウインドインハーヘアもFair Trialの特性を受け継いでおり、Lyphard(母父父Fair Trial)やDanzig(母母父父Fair Trial)などを母方に持つディープインパクト産駒が機動力型に出やすいのはそのためだ。

---Court Martial

<プロフィール>
1942年生、英国産、8戦6勝
<主な勝ち鞍>
1945年英2000ギニー(T8F)
1945年英チャンピオンS(T10F)
<代表産駒>
キングスベンチ(1951年ミドルパークS、1952年St.ジェームズパレスS)
Major Portion(1957年ミドルパークS、1958年St.ジェームズパレスS、サセックスS)
Timandra(1960年仏1000ギニー、仏オークス)
<特徴>
母Instantaneousは1934年英オークス3着馬。ただ、本馬は父Fair Trial似のマイラーで、産駒の活躍もマイル前後が中心であった。Fair Trialの純後継種牡馬といえ、機動力や粘り強さを子孫に伝えている。サイアーラインは既に途絶えてしまったが、Lyphardの母父として現在でも存在感の示しており、さらにはブラックタイド=ディープインパクトの母ウインドインハーヘアが本馬を4×5でクロスしているため、今後も本馬の影響力は随所で感じられるだろう。

----Petingo

<プロフィール>
1965年生、英国産、9戦6勝
<主な勝ち鞍>
1967年ミドルパークS(T6F)
1968年St.ジェームズパレスS(T8F)
1968年サセックスS(T8F)
<代表産駒>
イングリツシユプリンス(1974年愛ダービー)
Fair Salinia(1978年英オークス、愛オークス、ヨークシャーオークス)
Troy(1979年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、ベンソン&ヘッジズGC)
<特徴>
Troy(1979年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、ベンソン&ヘッジズGC)などを輩出して1979年英愛リーディングサイアーに輝いたPetitionの後継種牡馬。父系はCyllene→Polymelus→Phalaris→Fairway→Fair Trial→Petition→Petingoと代々英愛リーディングサイアーのタイトルを獲得する一族で、後継種牡馬ピツトカーンが1980年に同タイトルを獲得したことで父系8代連続で英愛リーディングサイアーに輝くという偉業を達成した。本馬はFairway=Pharosの3×4、Lady Jurorの3×5で父父Fair Trialを刺激しており、自身は1967年ミドルパークS、1968年St.ジェームズパレスS、1968年サセックスSなどを制覇。ただ、母の父であるステイヤー種牡馬Alycidonの存在感も強く、種牡馬としてはTroyを筆頭に長距離馬も多く輩出している。

-----Troy

 <プロフィール>
1976年生、英国産、11戦8勝
<主な勝ち鞍>
1979年英ダービー(T12F)
1979年愛ダービー(T12F)
1979年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
1979年ベンソン&ヘッジズGC(T10.5F)
<代表産駒>
Helen Street(1985年愛オークス)
Walensee(1985年ヴェルメイユ賞)
<特徴>
6連勝で1979年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、ベンソン&ヘッジズGCなどを制した父Petingoの代表産駒。牝系に活力はなかったが、母La MiloはNasrullah≒Royal Chargerの3×3が起爆剤となり、繫殖牝馬としてAdmetus(1974年ワシントンDCインターナショナル)と本馬の2頭のGⅠ馬を輩出。本馬はDonatelloの4×5、Hyperionの5×3、Nearcoの4×5など母の主要血脈を薄く継続しており、父のスタミナ源を刺激した配合形ともいえるだろう。種牡馬としては僅か4世代を残して早世してしまったが、数少ない産駒からHelen Street(1985年愛オークス)とWalensee(1985年ヴェルメイユ賞)という2頭の牝馬のGⅠ馬を輩出し、繁殖牝馬の父としても1997年ジャパンC優勝馬ピルサドスキーを筆頭に数多くのGⅠ馬の誕生に貢献した。現在でも重宝される血脈を豊富に持つため、配合のスパイスとして血統表の奥で活躍馬を支えている。

---ソロナウエー

 <プロフィール>
1946年生、愛国産、9戦6勝
<主な勝ち鞍>
1949年愛2000ギニー(T8F)
<代表産駒>
Sweet Solera(1961年英1000ギニー、英オークス)
キーストン(1965年日本ダービー)
テイトオー(1966年日本ダービー)
<特徴>
1949年愛2000ギニーを制し、引退後は日本で1966年リーディングサイアーに輝くなどして成功を収めたFairway系種牡馬。本馬自身は、短距離馬であった父Grand Glacierの影響が強かったが、3代母WaterwitchはMrs. Butterwick≒St. Serfの2×2、母母The Widow MurphyがIsonomyの5×4、St. Simonの5×4・4、母AnywayがAngelica=St. Simonの4・4・5×6・5・5、Gallinuleの4×4などスタミナ豊富なイギリス血脈を代々掛け合わせており、潜在的なスタミナは十分に備えていたのだろう。種牡馬としては日本ダービー馬を2頭、オークス馬を2頭出し、イギリスでは牝馬クラシック2冠馬Sweet Sorela(1961年英1000ギニー、英オークス)なども輩出した。バランス型のクラシック血統であり、1950~60年代の日本競馬を支えた競馬先進国出身の一流種牡馬だ。

-Pharamond

 <プロフィール>
1925年生、英国産、11戦2勝
<主な勝ち鞍>
1927年ミドルパークS(T6F)
<代表産駒>
Menow(1937年ベルモントフューチュリティS、1938年ウィザーズS)
Creole Maid(1938年CCAオークス)
By Jimminy(1944年トラヴァーズS、ドワイアーS)
<特徴>
名牝Selene(1921年チェヴァリーパークS、1922年パークヒルS)の2番仔であり、きょうだいにSickle(1926年プリンスオブウェールズS)、Hyperion(1933年英ダービー、英セントレジャー)、Hunter's Moon(1929年ニューマーケットS)、Guiscard(1936年クイーンズプライズH)、Night Shift(1939年ヨークシャーオークス)などがいる良血馬。母が小柄な馬であったため本馬も全兄Sickleも半弟Hyperionも小柄な競走馬であった。Gainsborough産駒で豊富なスタミナを誇ったHyperionとは異なり、本馬は父Phalarisから非凡なスピードを受け継ぎ、全兄Sickleと同様にアメリカでスピード馬を多数輩出。競走馬としても種牡馬としても兄弟ほどの活躍は見せられなかったが、Menow→Tom Fool→Buckpasserのラインが大成功を収めたことでその父祖として血統表に名を残している。

--Menow

 <プロフィール>
1935年生、米国産、17戦7勝
<主な勝ち鞍>
1937年米シャンペンS(D6.5F)
1937年ベルモントフューチュリティS(D6.5F)
1938年ウィザーズS(D8F)
<代表産駒>
Askmenow(1943年アメリカンダービー)
Capot(1949年プリークネスS、ベルモントS)
Tom Fool(1953年メトロポリタンH、サバーバンH、ブルックリンH)
<特徴>
Bull Leaに圧勝した1937年米シャンペンS、世界レコードを樹立した同年ベルモントフューチュリティSなど2歳時から記録にも記憶にも残る走りを見せ、米2歳牡馬チャンピオンにも輝いた快速馬。名種牡馬Pharamondとケンタッキーオークス馬Alcibiadesから非凡なスピードを受け継いだが、ケンタッキーダービーでは逃げて4着に沈んでいる通り距離には壁があったようだ。父系はTom Fool→Buckpasserのラインが大成功を収め、Red GodやNijinskyの誕生にも母系に入って貢献。また、Sir Ivorの母母Atheniaとは3/4同血の関係であり、Athenia≒Menowを3×3でクロスする配合からは1977年愛1000ギニー馬Lady Capuletが出た。さらに、その仔El Prado(1991年愛ナショナルS)はSadler's Wells直仔ながらアメリカで成功を収めており、子孫にはMenow→Tom Fool的俊敏さを伝えている。

---Tom Fool

<プロフィール>
1949年生、米国産、30戦21勝
<主な勝ち鞍>
1951年ベルモントフューチュリティS(D6.5F)
1953年メトロポリタンH(D8F)
1953年サバーバンH(D10F)
1953年ブルックリンH(D10F)
<代表産駒>
Tim Tam(1958年ケンタッキーダービー、プリークネスS)
Silly Season(1964年デューハーストS、1965年St.ジェームズパレスS、英チャンピオンS)
Buckpasser(1966年ブルックリンH、トラヴァーズS、ウッドワードS、ジョッキークラブGC、1967年メトロポリタンH、サバーバンH)
<特徴>
米2歳牡馬チャンピオンに輝きクラシックの最有力候補に挙げられたが、体調不良によりクラシック三冠を断念。その鬱憤を晴らすように4歳時には10戦全勝を挙げ、年度代表馬、チャンピオンハンデキャップホース、チャンピオンスプリンターに選ばれた歴史的名馬。父Menow同様の立ち肩の直飛節で非凡なスピードを誇り、種牡馬としても自身と同様にスピードに優れた産駒を多く出した。MenowやSir Gallahad=Bull Dog、Peter Panなどが共通するRed Godの母Spring RunやStorm Catの4代母First Roseとは相似の血の関係にあり、Sir Ivorの母AtticaやNijinskyの母母Flaring Topなどとも血統面での共通点が多い。現在の日本競馬においても瞬発力や機動力の源泉となっており、マイル前後のスピード勝負はもちろんのこと、小回りコースやスローペースで求められる敏捷性にも繋がる非常に重要な血脈である。

-------Pins

 <プロフィール>
1996年生、豪州産、14戦7勝
<主な勝ち鞍>
2000年オーストラリアンギニー(T2000m)
<代表産駒>
El Segundo(2005年ヤルンバS、2006年アンダーウッドS、2007年CFオーアS、コックスプレート)
Ambitious Dragon(2011年クイーンエリザベスⅡ世C、2012年香港マイル)
Aerovelocity(2014、16年香港スプリント、2015年高松宮記念、クリスフライヤーインターナショナルスプリント)
<特徴>
2000年オーストラリアンギニーを制し、種牡馬としてもニュージーランドで成功を収めたTom Fool系種牡馬。父父Lunchtimeがオーストラリアに輸出されたことでオセアニアで繁栄し、直仔である父Snippetsも種牡馬としてGⅠ馬を多数輩出。父は父祖Tom FoolやNasrullahの5×5・4などから優秀なスピードを子孫に伝えたが、本馬は3代母がSolarioの4×3、母母がNearcoの3×3、Solarioの5×5・4、本馬がHyperionの5×5など牝系からスタミナ面の支えがあり、本馬自身は芝2000mのGⅠにも勝利した。種牡馬としてもスプリンターから中距離馬まで幅広いカテゴリーの活躍馬を輩出し、代表産駒の一頭であるAerovelocity(2014、16年香港スプリント、2015年高松宮記念、クリスフライヤーインターナショナルスプリント)は2015年高松宮記念に勝利して日本でも有名である。

----Buckpasser

<プロフィール>
1963年生、米国産、31戦25勝
<主な勝ち鞍>
1966年ブルックリンH(D10F)
1966年トラヴァーズS(D10F)
1966年ウッドワードS(D10F)
1966年ジョッキークラブGC(D16F)
1967年メトロポリタンH(D8F)
1967年サバーバンH(D10F)
<代表産駒>
Numbered Account(1971年スピナウェイS、米メイトロンS、フリゼットS)
La Prevoyante(1972年スピナウェイS、米メイトロンS、フリゼットS)
L'Enjoleur(1974年ローレルフューチュリティS、1975年クイーンズプレート)
<特徴>
1960年代のアメリカ競馬を代表する名馬であり、父Tom Foolの最良後継種牡馬。クラシック戦線を裂蹄により戦線離脱したが、復帰後は距離を問わず連勝を重ねて年度代表馬など多くのタイトルを獲得した。母Busandaは1950年アラバマSなどを制した活躍馬。母母La Troienne、母父Blue Larkspur、父War Admiralから受け継いだパワーとスタミナを子孫にも継承。さらに、スピードに長けたTom Foolを父に配して誕生したのが本馬で、スピード・スタミナ・パワーの3拍子揃った名馬であり、名種牡馬であったといえるだろう。現在もマルゼンスキーやトライマイベスト=El Gran Senor、Private Account、Miswaki、Woodman、Seeking the Goldなど多くの名種牡馬の母父として血統表に名を残しており、2011、12年欧州年度代表馬Frankelや2014、16年北米年度代表馬カリフォルニアクローム、そして日本のアーモンドアイなど各国の名馬を支える優秀な血脈として今もなお重宝されている。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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