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【種牡馬辞典】Sir Gaylord系

Sir Gaylord

<プロフィール>
1959年生、米国産、18戦10勝
<主な勝ち鞍>
1961年サプリングS(D6F)
1962年エヴァーグレイズS(D9F)
<代表産駒>
Sir Ivor(1967年仏グランクリテリウム、1968年英2000ギニー、英ダービー、英チャンピオンS、ワシントンDCインターナショナル)
Habitat(1969年ロッキンジS、ムーランドロンシャン賞)
<特徴>
名繁殖牝馬Somethingroyalの3番仔であり、米三冠馬Secretariatの半兄という良血。ワンペースなBold Rulerを父に持つSecretariatに対して、本馬はRoyal Charger的なスピードを伝えるTurn-toから軽いスピードを継承。怪我によりケンタッキーダービー前に引退となったが、種牡馬としては欧州での活躍が目立ち、Sir Ivor(1968年英2000ギニー、英ダービー)やHabitat(1969年ムーランドロンシャン賞)といった芝の活躍馬を多く輩出した。瞬発力と柔軟性には定評があり、Sir Ivorの1968英ダービーやダンシングブレーヴの1986年凱旋門賞での鋭い末脚はまさに本馬の美点を表現した走り。また、名牝ビワハイジは母父父にSir Gaylordを持ち、父はPrincequilloとTurn-toを持つCaerleon。同馬の仔ブエナビスタやジョワドヴィーヴルが見せた瞬発力もまたSir Gaylord的な切れ脚だったといえるだろう。

-Sir Ivor

<プロフィール>
1965年生、米国産、13戦8勝
<主な勝ち鞍>
1967年仏グランクリテリウム(T1600m)
1968年英2000ギニー(T8F)
1968年英ダービー(T12F)
1968年英チャンピオンS(T10F)
1968年ワシントンDCインターナショナル(T12F)
<代表産駒>
Ivanjica(1975年仏1000ギニー、ヴェルメイユ賞、1976年凱旋門賞)
Lady Capulet(1977年愛1000ギニー)
Godetia(1979年愛1000ギニー、愛オークス)
<特徴>
母母AtheniaはMenowと3/4同血の関係にあり、母AtticaはRed Godと相似な血の関係。本馬はMenow→Tom Fool的な俊敏さを母から受け継ぎつつ、父Sir Gaylordからは瞬発力と柔軟性を継承。その結晶が1968年英ダービーで見せた爆発的な末脚であった。種牡馬Droneとは血統構成が酷似しており、HaloやRed Godとも共通点が多い。Haloとの組み合わせではRoyal Charger系の瞬発力、Red Godとの組み合わせではMenow→Tom Fool的な俊敏さを増幅する効果が見込める。また、Ivanjica(1975年仏1000ギニー、ヴェルメイユ賞、1976年凱旋門賞)を筆頭に活躍馬が牝馬に偏っている点も特徴的。父系は縮小傾向にあり、今後は母系に入って競走馬や種牡馬を支える形になるだろう。ちなみに、全弟ロードリージは日本に輸入され、1977年最優秀3歳牡馬バンブトンコード(1977年阪神3歳S)などを出した。

--Sir Tristram

<プロフィール>
1971年生、愛国産、19戦2勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Sovereign Red(1980年ヴィクトリアダービー)
Grosvenor(1982年ヴィクトリアダービー)
Marauding(1987年ゴールデンスリッパ―S)
<特徴>
4代母Seleneに遡る名牝系。競走馬として大成することはできなかったが、種牡馬としてはオーストラリアで6度のリーディングサイアーに輝くなどオセアニアで大成功を収めた。Sir Gaylord系特有の柔らかさとスピードが魅力だが、Princequilloの4×3を持つことからスタミナも兼備。ゴールデンスリッパーSからメルボルンCの優勝馬まで、多様な産駒を出したことは種牡馬としての資質の高さを証明するものである。Sir Tristramの5×4を持つモシーンの仔プリモシーンは本馬の影響を強く受け継いだ日本での代表例といえるだろう。

---Zabeel

<プロフィール>
1986年生、新国産、19戦7勝
<主な勝ち鞍>
1990年オーストラリアンギニー(T1600m)
<代表産駒>
Octagonal(1995年コックスプレート)
Might and Power(1997年コーフィールドC、メルボルンC、1998年クイーンエリザベスS、コックスプレート)
Vengeance of Rain(2005年クイーンエリザベスⅡ世C、香港C、2007年ドバイシーマクラシック)
<特徴>
名種牡馬Sir Tristramの最良後継種牡馬であり、1997/98、98/99年の豪リーディングサイアー。初年度産駒からシドニー三冠馬Octagonal(1995年コックスプレート)などを出し、その後も数多くのGⅠ馬を輩出した。母母ValdernaはSunny Boyの3×2などを持つフランス産馬で、競走馬としては芝中長距離で活躍。さらに、Nureyev、Sir Tristramと掛け合わせたのが本馬であり、競走馬としてはマイル前後で活躍したものの、種牡馬としてはメルボルンC優勝馬を3頭出すなど豊富なスタミナを産駒に継承した。また、Sir Gaylord系らしい柔軟性も兼備しており、2021年オークス馬ユーバーレーベンには少なからず本馬の影響を感じることができる。

-----Lonhro

<プロフィール>
1998年生、豪州産、30戦22勝
<主な勝ち鞍>
2001年コーフィールドギニー(T1600m)
2003年クイーンエリザベスS(T2000m)
<代表産駒>
Pierro(2012年ゴールデンスリッパーS)
Bounding(2014年レイルウェイS)
<特徴>
2003年クイーンエリザベスSなどGⅠ11勝を挙げ、2003/04年には豪年度代表馬に輝いた21世紀初頭の豪州最強牡馬。さらに、種牡馬としてもPierro(2012年ゴールデンスリッパーS)などを出して、2010/11年には豪リーディングサイアーの栄冠も獲得。同馬は種牡馬としても成功しており、Sir Tristram系は本馬を経由して現在でもオーストラリアで一大勢力を築いている。3代母My TriciaはGrosvenor(1982年コーフィールドギニー、ヴィクトリアダービー)やNational Gallery(1984年WATCダービー)など数多くの活躍馬を輩出した名繁殖牝馬。母ShadeaもGⅠで2着2回の活躍馬で、繁殖牝馬としては本馬と全弟Niello(2003年スプリングチャンピオンS)という2頭のGⅠ馬を出している。

-Drone

<プロフィール>
1966年生、米国産、4戦4勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Flip Sal(1974年ウッドメモリアルS)
Muttering(1982年サンタアニタダービー)
<特徴>
体質の弱さから3歳時に一般戦で4戦全勝を挙げたのみで引退となったが、種牡馬としてはアメリカを中心に活躍。そして、最大の功績は凱旋門賞馬ダンシングブレーヴの母父として同馬の瞬発力源となったことだろう。父Sir Gaylordの瞬発力と柔軟性、母父Tom Foolの俊敏さを子孫に伝えている。Sir Ivorとは血統構成が酷似しており、HaloやRed Godとも共通点が多い。Haloとの組み合わせではRoyal Charger系の瞬発力、Red Godとの組み合わせではMenow→Tom Fool的な俊敏さを増幅する配合といえるだろう。

-Habitat

<プロフィール>
1966年生、米国産、8戦5勝
<主な勝ち鞍>
1969年ロッキンジS(T8F)
1969年ムーランドロンシャン賞(T1600m)
<代表産駒>
Rose Bowl(1975年英チャンピオンS)
Flying Water(1976年英1000ギニー、1977年英チャンピオンS、ジャックルマロワ賞)
Steinlen(1989年バーナードバルークH、アーリントンミリオンS、BCマイル、1990年ハリウッドターフH)
<特徴>
種牡馬Northfieldsの半兄。本馬自身が名マイラーとして活躍し、種牡馬としてもスプリンターからマイラーの一流馬を多数輩出した。父Sir Gaylord譲りの瞬発力はもちろんだが、同父系の中でも特にスピードに優れたことは母父Occupyの影響が強く、さらにそれは同馬の母が快速馬Dominoやその姉妹をインブリードすることでLexington系のスピードを強く受け継いだことに起因するといえるだろう。Turn-to、Princequillo、Occupyなどが共通するKris S.とは相似な血の関係にあり、両馬のニアリークロスはHabitat的スピードを表面化させる効果が見込める。エピファネイアの爆発力はKris S.≒Habitatの2×4に起因するとみていいだろう。

--ステイールハート

<プロフィール>
1972年生、愛国産、12戦5勝
<主な勝ち鞍>
1974年ミドルパークS(T6F)
<代表産駒>
ニホンピロウイナー(1984、85年マイルCS、1985年安田記念)
タカラスチール(1986年マイルCS)
<特徴>
1974年ミドルパークSなど芝6F以下で5勝を挙げたHabitat直仔のスプリンター。母A. 1が快速馬The Tetrarchの血を4×5でインブリードしており、本馬は仔Mumtaz Mahalの7×4で継続。父母譲りのスピードは産駒にもよく伝わっており、日本輸入後にはニホンピロウイナー(1984、85年マイルCS、1985年安田記念)とタカラスチール(1986年マイルCS)という2頭のマイルチャンピオンを輩出した。母A. 1は牝系も発展させており、テイエムアンコールやテイエムスパーダの牝祖Harrapan Sealは本馬の全妹、レッドジェネシスの3代母Zummeruddは本馬の3/4同血の姪という間柄だ。

---ニホンピロウイナー

<プロフィール>
1980年生、佐々木節哉産、26戦16勝
<主な勝ち鞍>
1984年マイルCS(T1600m)
1985年安田記念(T1600m)
1985年マイルCS(T1600m)
<代表産駒>
ヤマニンゼファー(1992、93年安田記念、1993年天皇賞秋)
フラワーパーク(1996年高松宮杯、スプリンターズS)
<特徴>
1983~85年の3年連続で最優秀スプリンターに輝いた名マイラー。欧州でスプリントからマイルの活躍馬を多数輩出したHabitatを父父に持ち、父ステイールハートはMumtaz Mahal系の名スプリンターAbernantを母父に掛け合わせた短距離馬。本馬はAbernantと同じ父父Hyperion、母父Rustom Pashaという組み合わせのチヤイナロツクを母父に配し、HyperionとSon-in-Lawのスタミナを増幅した配合形となった。GⅠタイトルは芝1600mに限られるが、1985年天皇賞秋ではギャロップダイナの3着に好走するなど中距離でも高いパフォーマンスを見せており、同父系の中ではスタミナを兼備した種牡馬だったといえるだろう。ヤマニンゼファー(1992、93年安田記念、1993年天皇賞秋)はAbernant≒Tudor Minstrelの4×5を中心に本馬の良さを継承した代表産駒だ。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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