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【種牡馬辞典】Red God系・Never Bend系

Red God

<プロフィール>
1954年生、米国産、14戦5勝
<主な勝ち鞍>
1956リッチモンドS(T6F)
<代表産駒>
Jacinth(1972年チェヴァリーパークS、1973年コロネーションS)
Red Lord(1976年仏2000ギニー)
Blushing Groom(1976年ロベールパパン賞、モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム、1977年仏2000ギニー)
<特徴>
Bold Rulerなどと同じNasrullahの渡米後3年目の産駒だが、2歳時にイギリスに送られて1956年リッチモンドSを制す。3歳時にはアメリカに帰郷して4勝を挙げたが、競走馬としては大成することができなかった。引退後はアイルランドで種牡馬生活を送り、早熟気味の短距離馬を多数輩出。本馬が伝えるスピードは当然父Nasrullahの影響もあるが、Menow産駒である母の影響も強く、Bull DogとPeter Panを併せ持つ点も大種牡馬Tom Foolと共通する。そのため、非常に俊敏でスピードがあり、代表産駒Blushing Groomが1977年仏2000ギニーで見せたラチ沿いから一瞬で抜け出す末脚はまさにRed God産駒の美点であった。相似な血としてはHaloやSir Ivor、Droneなどが挙げられるが、Sir IvorやDroneにおいては母との親和性が非常に高いためTom Fool的な俊敏さや機動力が強調されやすく、Haloにおいては主張の強さやインブリードする血脈などからMahmoud、Nasrullah、Royal Charger的な瞬発力が強調されやすいと考えられる。

-Blushing Groom

<プロフィール>
1974年生、仏国産、10戦7勝
<主な勝ち鞍>
1976年ロベールパパン賞(T1100m)
1976年モルニ賞(T1200m)
1976年サラマンドル賞(T1400m)
1976年仏グランクリテリウム(T1600m)
1977年仏2000ギニー(T1600m)
<代表産駒>
Rainbow Quest(1985年コロネーションC、凱旋門賞)
Nashwan(1989年英2000ギニー、英ダービー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS)
アラジ(1991年モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム、BCジュベナイル)
<特徴>
2~3歳時に芝1600m以下のGⅠを5勝した父Red Godの代表産駒。1977年仏2000ギニーでのラチ沿いからスパッと抜け出した末脚はまさにRed God的な俊敏さであった。ただ、1977年英ダービーではラスト1Fで止まってしまった通り、本馬自身は距離に壁のあるマイラー。ところが、種牡馬としてはRainbow Quest(1985年コロネーションC、凱旋門賞)やNashwan(1989年英2000ギニー、英ダービー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS)といった中長距離チャンピオンを出しており、母父Wild Riskのスタミナは産駒によく伝わっていたようだ。さらに、母母父Tudor MinstrelもHyperionとLady Jurorの粘り強さと機動力を伝えるなかなかに強烈な血脈。ピッチが速く俊敏で、かつ粘り強く、豊富なスタミナも兼備するのがBlushing Groomという種牡馬だ。母父Blushing Groomのマヤノトップガンやテイエムオペラオーが宝塚記念や有馬記念で見せた完璧な競馬はまさにBlushing Groom的であったといえるだろう。

--Rainbow Quest

<プロフィール>
1981年生、米国産、14戦6勝
<主な勝ち鞍>
1985年コロネーションC(T12F)
1985年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Quest For Fame(1990年英ダービー、1992年ハリウッドターフH)
Saumarez(1990年パリ大賞、凱旋門賞)
サクラローレル(1996年天皇賞春、有馬記念)
<特徴>
3代母Noblesse(1963年英オークス)から繋がるイギリスの名牝系で、本馬は父Blushing Groomのスタミナ面を補強した配合形。El Gran Senor、Darshaan、Sadler's Wellsらがいるハイレベルな世代に生まれて勝ち切れないレースが続いたが、4歳時にはコロネーションCと凱旋門賞(2位入線)を制して、一流馬の仲間入りを果たした。種牡馬としてはQuest For Fame(1990年英ダービー、1992年ハリウッドターフH)やSaumarez(1990年パリ大賞、凱旋門賞)の他、英セントレジャー馬2頭や愛オークス馬など中長距離馬を多数輩出し、日本でもサクラローレル(1996年天皇賞春、有馬記念)が活躍。近年ではビートブラック(2012年天皇賞春)やケイティブレイブ(2017年帝王賞、18年川崎記念、JBCクラシック)などがRainbow Questの血を引き、豊富なスタミナを武器に一線級で活躍した。

--Candy Stripes

<プロフィール>
1982年生、米国産、6戦2勝
<主な勝ち鞍>
 -
<代表産駒>
Different(1995年CEジュベナイルフィリーズ、コパデプラタ大賞、1996年ビヴァリーヒルズH、スピンスターS)
Leroidesanimaux(2004年サイテーションH、フランクEキルローマイルH、アットマイルS)
Invasor(2006年ピムリコスペシャルH、サバーバンH、ホイットニーH、BCクラシック、2007年ドンH、ドバイワールドC)
<特徴>
2006年北米年度代表馬Invasor(2006年ピムリコスペシャルH、サバーバンH、ホイットニーH、BCクラシック、2007年ドンH、ドバイワールドC)を筆頭にアルゼンチンから数々のGⅠホースを送り出した名種牡馬。兄弟にはIntimiste(1989年クリテリウムドサンクルー)やバブルガムフェロー(1996年天皇賞秋)などがいる。競走馬としては1985年仏2000ギニー2着の実績を残した程度で、引退後はアルゼンチンで種牡馬入り。数多くのGⅠ馬を輩出し、その中にはInvasorやDifferent(1995年CEジュベナイルフィリーズ、コパデプラタ大賞、1996年ビヴァリーヒルズH、スピンスターS)、Leroidesanimaux(2004年サイテーションH、フランクEキルローマイルH、アットマイルS)など北米で活躍した馬も少なくない。Blushing Groom直仔らしく芝とダートを問わずGⅠ馬を出したが、母がHyperionやLady Jurorの血を豊富に持つため、父よりも機動力や粘り強さに長けたタイプといえるだろう。

--Rahy

<プロフィール>
1985年生、米国産、13戦6勝
<主な勝ち鞍>
1989年ベルエアH(D8F)
<代表産駒>
Serena's Song(1994年オークリーフS、ハリウッドスターレットS、1995年ラスヴァージネスS、サンタアニタオークス、マザーグースS、ハスケル招待H、ガゼルH、ベルデイムS、1996年サンタモニカH、サンタマリアH、ヘムステッドH)
ファンタスティックライト(2000年マンノウォーS、香港C、2001年タタソールズGC、プリンスオブウェールズS、愛チャンピオンS、BCターフ)
Dreaming of Anna(2006年BCジュベナイルフィリーズ)
<特徴>
4代母Soaringに遡る世界的名牝系。母Glorious Song(1980年ラカナダS、サンタマルガリータH、トップフライトH、1981年スピンスターS)は名繁殖牝馬Balladeの初仔であり、全弟妹には種牡馬Devil's Bag(1983年米シャンペンS、ローレルフューチュリティS)、Saint Balladoや繁殖牝馬Angelic Songがいる。繁殖牝馬としても本馬とSingspiel(1996年カナディアンインターナショナルS、ジャパンC、1997年コロネーションS、英インターナショナルS)を輩出しており、世界的に重要な繁殖牝馬の一頭といえるだろう。3番仔の本馬は父母から受け継いだスピードを武器に芝・ダートを問わずマイル以下で活躍。競走馬としては大成できなかったが、種牡馬としては2年目産駒からGⅠ11勝の名牝Serena's Song(1994年オークリーフS、ハリウッドスターレットS、1995年ラスヴァージネスS、サンタアニタオークス、マザーグースS、ハスケル招待H、ガゼルH、ベルデイムS、1996年サンタモニカH、サンタマリアH、ヘムステッドH)を輩出し一躍人気種牡馬となった。Red God≒Haloのスピードを最大の武器としながらも、父Blushing Groom同様に万能種牡馬として活躍。日本では本馬の全妹Morn of Songから繋がるハルーワソング→ハルーワスウィートの系統が繁栄しており、今後両血脈を併せ持つ活躍馬が誕生しても不思議ではない。

----Le Havre

<プロフィール>
2006年生、愛国産、6戦4勝
<主な勝ち鞍>
2009年仏ダービー(T2100m)
<代表産駒>
アヴニールセルタン(2014年仏1000ギニー、仏オークス)
ラクレソニエール(2016年仏1000ギニー、仏オークス)
Wonderful Tonight(2020年ロワイヤリュー賞、英チャンピオンズフィリーズ&メアズS)
<特徴>
2009年仏ダービー馬。種牡馬としてもアヴニールセルタン(2014年仏1000ギニー、仏オークス)とラクレソニエール(2016年仏1000ギニー、仏オークス)という2頭の仏2冠牝馬を輩出している。母Marie Rheinbergは名種牡馬Pivotalの父であるPolar Falcon(1991年スプリントC)の半妹で、主流血脈や濃いクロスを持たないため、本馬は父Noverre(2001年サセックスS)にスタミナを強化した瞬発力型中距離馬に出た。フランスの中距離血統らしくスローペースの瞬発力勝負には滅法強く、母父Le Havreのデゼルやセリフォスが見せた上がり3F32秒台の末脚は本馬から受け継いだモノといえるだろう。ちなみに、産駒のGⅠ馬のほとんどが牝馬であり、今後は繁殖牝馬の父としての活躍にも期待がかかる。また、父Noverreは1991年欧州年度代表馬アラジの3/4同血の弟であり、本馬自身も非常に血統価値の高い種牡馬だ。

--Nashwan

<プロフィール>
1986年生、米国産、7戦6勝
<主な勝ち鞍>
1989年英2000ギニー(T8F)
1989年英ダービー(T12F)
1989年エクリプスS(T10F)
1989年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
<代表産駒>
Swain(1996年コロネーションC、1997、98年キングジョージⅥ&QEDS、1998年愛チャンピオンS)
バゴ(2003年クリテリウムインターナショナル、2004年ジャンプラ賞、パリ大賞、凱旋門賞、2005年ガネー賞)
One So Wonderful(1998年英インターナショナルS)
<特徴>
無敗でイギリス主要4大競走を総なめにした歴史的名馬。Aloe→Feola→Hypericum→Highlight→Highclereと繋がるイギリス競馬固有の名牝系であり、母Height of Fashionはディープインパクトの母母Burghclereの3/4同血の妹。母はFeolaの5×4、Rose Redの5×5という2頭の優秀な繁殖牝馬のインブリードを持ち、名牝系にさらなる活力を与えている。本馬はRed God産駒の早熟芝マイラーBlushing Groomを父に配したが、Wild Riskの3×6やHyperionの6×6・5、Lady Jurorの6×8・7・7など父の母方と母が呼応する形となり、スピードとスタミナを兼備したオールラウンダーとして芝8~12FのGⅠ戦線を駆け抜けた。種牡馬としてはSwain(1996年コロネーションC、1997、98年キングジョージⅥ&QEDS、1998年愛チャンピオンS)とバゴ(2003年クリテリウムインターナショナル、2004年ジャンプラ賞、パリ大賞、凱旋門賞、2005年ガネー賞)という2頭の代表産駒を輩出したが、前者は種牡馬としては期待ほどの成功は収められず、後者も今のところ後継種牡馬といえる産駒を出せていない。本父系の存続は2021年皐月賞、日本ダービー3着馬ステラヴェローチェに懸かっているか。ちなみに、同馬はディープインパクト肌との組み合わせで、Height of Fashion≒Burghclereの3×4を持っている。

Never Bend

<プロフィール>
1960年生、米国産、23戦13勝
<主な勝ち鞍>
1962年ベルモントフューチュリティS(D6.5F)
1962年米シャンペンS(D8F)
1963年フラミンゴS(D9F)
<代表産駒>
Mill Reef(1971年英ダービー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞、1972年ガネー賞、コロネーションC)
Riverman(1972年仏2000ギニー、イスパーン賞)
J.O. Tobin(1977年スワップスS、1978年カリフォルニアンS)
<特徴>
Nasrullah産駒の最終世代の一頭。母Lalunは1955年ケンタッキーオークス馬であり、半弟にはBold Reason(1971年ハリウッドダービー、アメリカンダービー、トラヴァーズS)がいる良血馬。Sadler's Wells(母父Bold Reason)との相性の良さはNever Bend≒Bold Reasonの兄弟クロスが根拠といえるだろう。母系由来の立ち肩と父のスピードを伝え、子孫には非凡なパワースピードを持ち味とする馬が多い。Never Bendの6×4を持つエスポワールシチーの圧倒的なスピードとパワーは本馬の影響を多分に受けた証であり、カーネギー(Bold Reason≒Never Bendの3×3)を母父に持つモーリスもその一頭といえるだろう。

-Mill Reef

<プロフィール>
1968年生、米国産、14戦12勝
<主な勝ち鞍>
1971年英ダービー(T12F)
1971年エクリプスS(T10F)
1971年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
1971年凱旋門賞(T2400m)
1972年ガネー賞(T2100m)
1972年コロネーションC(T12F)
<代表産駒>
Shirley Heights(1978年英ダービー、愛ダービー)
アカマス(1978年リュパン賞、仏ダービー)
Glint of Gold(1980年伊グランクリテリウム、1981年伊ダービー、パリ大賞、オイロパ賞、1982年サンクルー大賞、バーデン大賞)
Reference Point(1986年ウィリアムヒルフューチュリティ、1987年英ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、英セントレジャー)
Doyoun(1988年英2000ギニー)
<特徴>
欧州三冠(英ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞)を史上初めて制覇した歴史的名馬。父Never Bendの産駒らしい立ち肩でありながらも、母父Princequillo由来のスマートな体つき、母母母父Hyperion由来の心肺機能の高さ、The Tetrarchの5×7・6由来の柔らかさも兼備。小柄な馬ではあったが、均整の取れた好馬体で、欠点の少ない、まさに最強馬といえるサラブレッドであった。種牡馬としても1978、87年英愛リーディングサイアーに輝くなど成功。サンデーサイレンス輸入後の日本においてはThe Tetrarch(Nasrullah)的スピードが強調されることが多く、その代表例がMill Reefを5×4でインブリードしたローズキングダム(2009年朝日杯FS、2010年ジャパンC)であり、母がMill Reefの3×3を持つサンテミリオン(2010年オークス)であった。2頭が東京や外回りの芝中長距離戦で見せたしなやかな末脚はまさにMill Reef的だったといえるだろう。

--ミルジヨージ

<プロフィール>
1975年生、米国産、4戦2勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
イナリワン(1989年天皇賞春、宝塚記念、有馬記念)
オサイチジョージ(1990年宝塚記念)
エイシンサニー(1990年オークス)
リンデンリリー(1991年エリザベス女王杯)
<特徴>
1989年リーディングサイアー。Nasrullahの3×4から丸みのある筋肉と美しい背中のラインを受け継いだ反面、立った肩は父父Never Bendや母父父Ribot似。JRAでのGⅠ馬はイナリワン(1989年天皇賞春、宝塚記念、有馬記念)を筆頭に芝馬に限られるが、ロッキータイガー(1985年帝王賞、東京記念)やロジータ(1989年東京大賞典、1990年川崎記念)など地方でのダート活躍馬も多数輩出しており、芝の道悪巧者も多い。距離適性も幅広く、万能型種牡馬として長く活躍した。弱点は気性の悪さ。

--Shirley Heights

<プロフィール>
1975年生、英国産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1978年英ダービー(T12F)
1978年愛ダービー(T12F)
<代表産駒>
Darshaan(1984年仏ダービー)
Slip Anchor(1985年英ダービー)
シエイデイハイツ(1988年英インターナショナルS)
<特徴>
1978年英愛ダービーを制した父Mill Reefの代表産駒。3歳春にようやく頭角を現した晩成型で、英セントレジャー前の故障により引退に追い込まれなければさらに強い走りが見られたのではないだろうか。父Mill Reefの良さを引き継ぎながらも、3代母がThe Tetrarchの4×4を持つため父よりも肩のつき方に角度があり、父以上にしなやかなフットワークで走った。種牡馬としてもDarshaan(1984年仏ダービー)を筆頭にGⅠ馬を複数頭輩出したが、繁殖牝馬の父としての貢献度も非常に大きく、特にSadler's Wells系との間に数多くのGⅠ馬を出している。これは、Bold Reason≒Never Bendの兄弟クロスが根拠といえるだろう。日本では持ち込み馬ロゼカラー(1995年デイリー杯3歳S)が鋭い末脚を武器に秋華賞3着などの実績を挙げ、繁殖牝馬としては「薔薇一族」を形成。その孫ローズキングダムはMill Reefを5×4でインブリードし、2010年ジャパンCを制している。

---Darshaan

<プロフィール>
1981年生、英国産、8戦5勝
<主な勝ち鞍>
1984年仏ダービー(T2400m)
<代表産駒>
コタシャーン(1993年サンルイレイS、サンフアンカピストラーノH、エディリードH、オークツリー招待S、BCターフ)
Mark of Esteem(1996年英2000ギニー、クイーンエリザベスⅡ世S)
Dalakhani(2002年クリテリウムインターナショナル、2003年リュパン賞、仏ダービー、凱旋門賞)
<特徴>
父Shirley Heightsの代表産駒であり、種牡馬としても2003年仏リーディングサイアーに輝いたMill Reef系種牡馬。5代母TourzimaがDurban=Heldifannの2×2、3代母マリアがAsterusの3×4、母DelsyがAstronomieの3×4とマルセル・ブサック氏の生産馬らしいインブリードにこだわった牝系であり、半妹Dararaも1986年ヴェルメイユ賞を制している。本馬はアガ・カーン4世殿下により生産・所有されたイギリス産馬であるが、競走馬としてはフランスを拠点に活躍し、1984年仏ダービーではSadler's WellsやRainbow Questを下してビッグタイトルを手にしている。母方にフランス血脈が注入されたことでMill Reef→Shirley Heights系の中でも特に瞬発力に優れており、種牡馬としても芝中長距離を中心に数多くのGⅠ馬を輩出。さらに、父同様に繁殖牝馬の父としての活躍も目立ち、High Chaparral(2002年英ダービー、愛ダービー、2002、03年BCターフ)を筆頭に世界中で大成功を収めた。日本でもサニングデール(2004年高松宮記念)やファインニードル(2018年高松宮記念、スプリンターズS)、タワーオブロンドン(2019年高松宮記念)などDarshaan系の繁殖牝馬から多くのGⅠ馬が誕生している。

----Dalakhani

<プロフィール>
2000年生、愛国産、9戦8勝
<主な勝ち鞍>
2002年クリテリウムインターナショナル(T1600m)
2003年リュパン賞(T2100m)
2003年仏ダービー(T2400m)
2003年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Moonstone(2008年愛オークス)
コンデュイット(2008年英セントレジャー、2008、09年BCターフ、2009年キングジョージⅥ&QEDS)
Reliable Man(2011年仏ダービー、2013年クイーンエリザベスS)
<特徴>
半兄Daylami(1997年仏2000ギニー、1998年エクリプスS、マンノウォーS、1999年コロネーションC、キングジョージⅥ&QEDS、愛チャンピオンS、BCターフ)に続き、2003年欧州年度代表馬に輝いた父Darshaanの代表産駒。母Daltawaは2頭以外にも5頭のステークスウィナーを輩出している。本馬はPrincequilloを5×5でインブリードしたDarshaan産駒で、しなやかにストライドを伸ばす走りには父祖Mill Reefに似たモノを感じる。種牡馬としては兄同様に大成功とは言えない実績に終わったが、Mill ReefやMiswaki、Crepelloなど現在も重宝される血脈を豊富に持つため、今後も軽視はできない種牡馬といえるだろう。

----Dashing Blade

<プロフィール>
1987年生、英国産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1989年愛ナショナルS(T7F)
1989年デューハーストS(T7F)
1990年イタリア大賞(T2400m)
<代表産駒>
Faberger(2000年ヴィットーリオディカープア賞)
Lord of England(2006年ダルマイヤー大賞)
Sirius(2014年ベルリン大賞)
<特徴>
父はGⅡ勝ち馬Elegant Air(1985年ロジャーズゴールドC)で、母Sharp Castanも名牝系といえるような血筋ではないが、本馬自身は母父Sharpen Up譲りの早熟性とスピードを武器に2歳時から欧州GⅠ戦線で活躍。Native Dancerの5×4程度しかインブリードを持たないため自身を主張するタイプではなかったが、Sirius(2014年ベルリン大賞)を出すなど種牡馬としても息の長い活躍を見せた。注目は日本で繁栄を見せる名牝スタセリタの母の父に名を残すこと。一族からはソウルスターリングとスターズオンアースという2頭のオークス馬が誕生しており、今後も母方の血統表にその名を見ることは少なくないだろう。

-Riverman

<プロフィール>
1969年生、米国産、8戦5勝
<主な勝ち鞍>
1972年仏2000ギニー(T1600m)
1972年イスパーン賞(T1850m)
<代表産駒>
Irish River(1978年モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム、1979年仏2000ギニー、イスパーン賞、ジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞)
Detroit(1980年凱旋門賞)
Gold River(1980年ロワイヤルオーク賞、1981年カドラン賞、凱旋門賞)
Triptych(1984年マルセルブサック賞、1985年愛2000ギニー、1986、87年英チャンピオンS、1987年ガネー賞、英インターナショナルS、フェニックスチャンピオンS、1987、88年コロネーションC)
<特徴>
1972年仏2000ギニーを最後方から直線一気で差し切った瞬発力が最大の持ち味。Never Bend、Princequillo、Count Fleetが共通するMill Reefとは血統構成がよく似ているが、本馬は牝系が生粋の北米血脈の分、瞬発力自慢のマイラーとして出世した。ウオッカやナリタタイシン、エリモエクセルなどが見せたしなやかな末脚はまさにRivermanらしさといえ、近年では母がRivermanの4×3を持つクイーンズリングなどに本馬の特徴を強く感じる。また、Triptych(1984年マルセルブサック賞、1985年愛2000ギニー、1986、87年英チャンピオンS、1987年ガネー賞、英インターナショナルS、フェニックスチャンピオンS、1987、88年コロネーションC)やDetroit(1980年凱旋門賞)、Gold River(1980年ロワイヤルオーク賞、1981年カドラン賞、凱旋門賞)など牝馬のGⅠ馬を多く出したことも大きな特徴。日本でもウオッカを筆頭に牝馬の活躍馬の血統表にその名を見ることが多く、本馬が伝えるしなやかな末脚は牝馬でこそ活きる傾向にあるようだ。

--Irish River

<プロフィール>
1976年生、仏国産、12戦10勝
<主な勝ち鞍>
1978年モルニ賞(T1200m)
1978年サラマンドル賞(T1400m)
1978年仏グランクリテリウム(T1600m)
1979年仏2000ギニー(T1600m)
1979年イスパーン賞(T1850m)
1979年ジャックルマロワ賞(T1600m)
1979年ムーランドロンシャン賞(T1600m)
<代表産駒>
Hatoof(1992年英1000ギニー、1993年英チャンピオンS、1994年ビヴァリーDS)
Brief Truce(1992年St.ジェームズパレスS)
パラダイスクリーク(1992年ハリウッドダービー、1994年ETマンハッタンH、アーリントンミリオンS、ワシントンDCインターナショナル)
<特徴>
父Riverman(1972年仏2000ギニー、イスパーン賞)、母父Klairon(1955年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)はともに芝のマイラーで、本馬も2~3歳時に芝1200~1850mGⅠを7勝したフランス競馬屈指の名マイラー。引退後はアメリカで種牡馬生活を送り、マイルを中心に多くのGⅠ馬を輩出した。日本では1994年ジャパンCでもハナ差2着と好走したパラダイスクリーク(1992年ハリウッドダービー、1994年ETマンハッタンH、アーリントンミリオンS、ワシントンDCインターナショナル)が種牡馬として活躍し、テイエムプリキュア(2005年阪神JF)やカネツフルーヴ(2002年帝王賞、2003年川崎記念)などを出している。

-ブレイヴエストローマン

<プロフィール>
1972年生、米国産、25戦9勝
<主な勝ち鞍>
1975年サラナクS(D8F)
<代表産駒>
トウカイローマン(1984年オークス)
マツクスビユーテイ(1987年桜花賞、オークス)
オグリローマン(1994年桜花賞)
<特徴>
競走馬としては1975年サラナクSを制した程度だったが、種牡馬としては日本で多くの活躍馬を輩出。Never Bend系はMill ReefやRivermanなど欧州で成功した系統が主に繁栄したが、本馬は母父Roman譲りのアメリカンなパワースピードを後世に伝えた。トウカイローマン(1984年オークス)とマツクスビユーテイ(1987年桜花賞、オークス)という2頭のオークス馬を出したが、全体としてはダート>芝、短距離>長距離の傾向にあり、フジノマッケンオー(1994年根岸S、1996年ダービー卿CT、セントウルS、1997年さきたま杯)のようなタイプが標準型といえ、近年ではドリームバレンチノ(2014年JBCスプリント)=ウインムート(2018年兵庫GT、2019年さきたま杯)兄弟にブレイヴエストローマンの特徴を強く感じる。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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