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新種牡馬ビーチパトロールの特徴、Mill ReefとRivermanの違い

本記事では、YouTubeメンバーシップやnoteで推奨したクラブ馬のデビュー後の活躍を振り返りながら、種牡馬傾向などをまとめております。

≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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ブラストウェーブ(2歳新馬 函館芝1800m)

<推奨理由>
母ツルマルワンピースはトライマイベスト≒El Gran Senorの4×3やGraustarkの6×4などパワーに秀でた繁殖牝馬で、本馬の全兄ブラストワンピースは重戦車のような馬力を武器に18年有馬記念を制した。その後はホウオウピースフルなど牝馬が続いたが、母の特徴を活かすなら牡馬がベター。兄にも引けを取らぬ巨漢馬だが、良血馬らしく重苦しさを感じさせない品の良さがある。高額馬ではあるが、兄同様に爆発力を秘めた一頭だ。

<レース評価>
逃げ馬をピッタリマークし、直線では2着馬イッツオンリーユーとの叩き合いに勝利。勝ち時計は水準程度だが、素質馬2頭での叩き合いにはなかなか見どころがあった。兄よりもピッチの上がりが良く、スピードや機動力は本馬の方が上だろう。

【デビュー時に馬体重520キロ以上を有した芝GⅠ馬(2010年以降)】
ピクシーナイト(528キロ、2021年スプリンターズS)
サリオス(534キロ、2019年朝日杯FS)
ブラストワンピース(520キロ、2018年有馬記念)
アルフレード(530キロ、2011年朝日杯FS)

母ツルマルワンピースは牝馬ながら馬体重500キロ前後の大柄な馬体を有し、芝とダートの1400m戦で3勝を挙げた。繁殖牝馬としても産駒のサイズは非常に大きく、デビュー時の馬体重はブラストワンピース(牡)が520キロ、ヴィクトリアピース(牝)が492キロ、ホウオウピースフル(牝)が464キロ、サンドレス(牝)が496キロ、ブラストウェーブ(牡)が538キロ、と標準サイズに出たのはホウオウピースフルぐらいだろう。

馬格に恵まれることはプラス要素として捉えられることが多いが、サイズが大きくなればなるほど俊敏な動きが取りにくくなることも事実。2010年以降のJRAGⅠの勝ち馬(牡)のデビュー時の馬体重は480~499キロのゾーンが最も多く、芝GⅠの勝ち馬に絞るとデビュー時520キロ以上のゾーンからはアルフレード(530キロ)、ブラストワンピース(520キロ)、サリオス(534キロ)、ピクシーナイト(528キロ)の4頭しか出ていない。さらに、ブラストワンピース以外の3頭はマイル以下でのGⅠ勝ちであり、短距離質の筋肉を持たない巨漢馬の大成功というのはなかなか珍しいようだ。

さらに、ブラストワンピース=ブラストウェーブの父は典型的な芝中距離種牡馬ハービンジャー。ダート適性も見込み薄のなか、しっかりと芝GⅠ馬に輝いたブラストワンピースは絶妙なバランスのもとに生まれた天才だったのかもしれない。ブラストウェーブも全兄のような成功を収めることができるのだろうか。

個人的には、ツルマルワンピースには、ホウオウピースフルのように小柄な種牡馬をつけるか、ダート種牡馬をつけて足元もダート仕様にするか、が合うと考える。

キングズレイン(2歳未勝利 札幌芝1800m)

<推奨理由>
4代母Luv Luvin'に遡る欧州の名牝系であり、母母リッスンは07年フィリーズマイル、母タッチングスピーチは15年ローズSを制した。Nureyev≒Sadler's Wellsという急所は押さえつつ、Mill Reef≒Rivermanの6×5で父の鈍重さを軽減。ダンビュライトなど多くの活躍馬がその効果を証明しており、父の産駒全体の勝ち上がり率よりも10%以上の上昇が見込める。現状は薄手の馬体だが、晩成気味の血統から今後の成長は容易に想像でき、身のこなしの品の良さは現時点でも高く評価できる。骨格に筋肉が追いつけばさらに迫力のある姿が見られそうだ。

<レース評価>
前半1000m65.3のスローペースを好位の外から。直線では2頭での叩き合いにハナ差制して初勝利を挙げた。瞬発力勝負では分が悪く、加速ラップでもあっただけに、数字以上の評価が必要だろう。まだまだ緩さが目立つ馬体。本格化は3歳秋以降。

ルーラーシップ産駒のJRA勝ち馬率(~2022/12/4)

ルーラーシップの勝ち上がり率を上げる代表的な手法として、父キングカメハメハが持つMill Reefを刺激する方法が挙げられる。これは、同馬が持つ血の中で特に切れ味に繋がりやすいからだが、実はMill Reefを直接クロスしても勝ち上がり率は上がらず、同馬と同じNever Bend×Princequillo系のRivermanで相似クロスする形がベストなのだ。

Mill ReefとRivermanはNever Bend×Princequillo系+Count Fleetが共通する点から相似血統として扱うことが多いが、Hyperionを母方に持つMill Reefが史上初欧州三冠(英ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞)を達成したのに対して、北米血脈を詰め込んだRivermanは1972年仏2000ギニーを制している。Never Bend譲りの立ち肩は共通しているが、瞬発力ではRivermanの方が数段上であり、スピードを強化するためであればRivermanを経由する方が有効なのだ。同じく瞬発力を強化したいモーリスもRiverman持ちの繁殖牝馬と相性が良く、反対にロードカナロアの場合はMill Reefの方が勝ち上がり率が高い。種牡馬、繁殖牝馬が何を求めているか、ということが重要なわけだ。

ウインエタンセル(2歳未勝利 中山芝2000m)

<推奨理由>
5代母マツクスビユーテイ(87年桜花賞、オークス)に遡る牝系であり、近親にはココロノアイ(14年アルテミスS、15年チューリップ賞)など。母コスモエルデスは芝ダ1400m以下3勝の短距離馬で、兄弟にはツーエムアロンソ、ビアイと活躍馬が複数。本馬は新種牡馬ビーチパトロールを父に配した母の初仔だが、馬格に恵まれ歩き姿には力感が溢れている。配合面に特筆するほどの特徴はないが、Nureyevの5×3をベースに及第点の形にはある。オールマイティなマイラーとして期待。

<レース評価>
好位馬群で脚をタメ、直線は内から先行勢を捉える形。接戦ではあったが、スパート開始が遅かっただけに仕方なし。父譲りの先行力とタフさが持ち味だ。募集時にはマイラーとして期待したが、父譲りの豊富なスタミナを活かす形の方が合うだろう。

【ビーチパトロール産駒の勝ち馬】
シーウィザード(芝1800~2000m)
デイドリームビーチ(芝1200m)
ビキニボーイ(芝1800m)
ウインエタンセル(芝2000m)

新種牡馬ビーチパトロールは現役時代に2016年セクレタリアトS(芝10F)、2017年アーリントンミリオンS(芝10F)、ターフクラシックS(芝12F)などで優勝。先行力とタフさを武器に小回りコースの多い北米芝中長距離路線で活躍し、着外は4回しかないという安定感も魅力の一流馬であった。

初年度産駒のここまでの成績を見ると、父と同じく芝の長めの距離に適性を示しており、中距離での勝利はいずれも逃げ・先行策からの粘り勝ち。勝利時の上がり3Fは34.6~36.3と遅めで、父の特徴が強く表現された結果となっている。Kingmambo→Lemon Drop Kid系だけに配合次第ではダート馬も出そうだが、どちらにせよ長めの距離でタフさを活かす競馬が合うだろう。

配合面では、Mr. Prospectorの3×4以外にインブリードを持たないため、Northern DancerやHail to Reason→Halo→サンデーサイレンスなどの主流血脈を取り込みやすいのが強みだ。


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