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【血統考察】メジロマックイーンから見たゴールドシップ配合【前編】


1,メジロマックイーンから見たゴールドシップ配合


*こちらはブログに記載している記事の大幅加筆・再編集版です


まず、前段としてゴールドシップ産駒の一般的な特徴がこちら

・スタート遅い
・二の脚遅い
・ズブい
・直線ちょっと頑張る
・伸びないけどバテない
・タフな馬場どんと来い
・2600mなら任せろ
・母親がそうでも、短距離とダートは特殊な子じゃないとキツイ

一言でまとめると「ジリ脚で芝のスタミナ勝負に強い」ということです。


これらの特徴から、ゴールドシップはステイゴールド系ではあるものの、どちらかといえばメジロマックイーン(母系)の影響が強く出ているのは間違いないと思います。
体型的にも母ポイントフラッグ産駒らしく大型に出ましたし、体の柔らかさはステイ系のバネ的な柔らかさというよりパーソロン的な柔軟性からきているようです。


性格面も、普通の馬は歳を取るごとに性格が穏やかになっていくのですが、ゴールドシップはいつになっても騎手を振り落とそうとし、6歳にもなってゲートで立ち上がる気性難を見せました。

それと同じく、マックイーンも年齢と経験を積むごとにチャカついていきました。
武豊ジョッキーによると「(歳を取るにつれイレコミが激しくなり)天皇賞は長すぎる」との発言(実際ライスシャワーの2着に敗れる)もありましたし、「マイルでも行ける」という発言は気性的なところからのコメントでもあったようです。


これらのことから性格的にも体格的にも、ゴルシはステイよりマックに近いと思いますので、配合的にもマックイーンを参考にしたいところです。


2,メジロマックイーンの代表産駒

*賞金獲得順

・ヤマニンメルベイユ 牝 2002 中山牝馬S・クイーンS 1着
・ホクトスルタン    牡 2004 目黒記念 1着
・メジロサンドラ    牝 1996 カブトヤマ記念(GⅢ) 3着
・エイダイクイン    牝 1995 エリザベス女王杯 3着
・メジロアトラス    セ 1995 ダイオライト記念 3着

20年くらい前の馬たちなので、そのまま血統理論を持ってこれるわけではありませんが…


中でも目につくのはヤマニンベルメイユとホクトスルタン。

両馬の母父はサンデーサイレンスなので、ステマ配合を逆転したような配合ですね。

ヤマニンベルメイユの血統がこちら

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ゴールドシップとの好相性の相手を見つけるために、ゴルシ成分である父マックイーンと母父サンデーを取り除きます。


…分かりづらい言い方をしましたが、ヤマニンベルメイユの母母の血統がこちらです

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ここで注目すべき血統はネアルコ(Nearco)です。

ネアルコはノーザンダンサー(以下ND)の父父として有名ですが、ゴールドシップ(メジロマックイーン)には、NDを経ないネアルコが重要になってきます。

ヤマニンベルメイユにはナスルーラ(Nasrullah)・ロイヤルチャージャー(Royal Charger)が含まれています。

また、ブルドッグ(Bull Dog)も影響を与えています。(後述)


ではここでホクトスルタンの血統を見てみましょう。

上記と同様に、父メジロマックイーン・母父サンデーサイレンスを除いた、母母ダイイチリカーの血統です。

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ノーザンテーストが目を引きますが、それよりも見ていただきたいのがロベルト(Roberto)

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なかなか近代ではここまでの多重クロスはお目にかかれません。

注目すべきはやはり”非NDネアルコ”である血統です。

直系がロイヤルチャージャー・母父にはナスルーラとヤマニンベルメイユと共通しています。

更に、ブルドッグとその全兄サーギャラハッド(Sir Gallahad)がいます。こちらも共通。

3,ネアルコ・ナスルーラ・ロイヤルチャージャー(&テディ)

少し脱線しますが、古い馬ですので上記馬のそれぞれの紹介を(Wikipediaを参照しながら)簡単にしていきます。

ネアルコ・・・
1935年生まれ 14戦14勝
イタリアの世界的生産者フェデリコ・テシオの最高傑作にあげられる。
その血統的影響力は凄まじく、全世界のサラブレッドの父系の約半分はネアルコに至ると言われている。
日本競馬でいうと、ミスタープロスペクター系(キングカメハメハ系等)でない場合、ほぼネアルコ直系子孫です。
2021年の皐月賞出走馬では、14/16頭がネアルコ系、2/16頭がミスプロ系でした。
代表的な子孫…ノーザンダンサー、ナスルーラ、サンデーサイレンス他多数


ナスルーラ・・・
ネアルコの直子で1940年生まれ。
オールドダビスタファンには「ナスルーラのクロスが気になります…」でおなじみ。一昔前の気性難の代名詞とも言える馬でした。
実際に本馬も気性がかなり激しかったそうで、オルフェ1回目の凱旋門のような負け方(絶対能力で抜け出すけどヨレ+ソラで差される)を繰り返していたようです。
日本ではテスコボーイを経たサクラバクシンオーの末裔が半世紀以上たった今でも日本土着血統として残っています。
最近ではクロノジェネシスの父バゴもナスルーラ系統ですね。
代表的な子孫…ミルリーフ、セクレタリアト、サクラバクシンオーなど他多数

ロイヤルチャージャー・・・
ネアルコの直子 1942年生まれ。
ナスルーラとは父が同じで伯父甥の関係(親子丼って言うな)

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1990年代以降、日本で一番マッチした血統で、以下に示すとおり日本の名馬の殆どがロイヤルチャージャー(ヘイルトゥリーズン)系に属します。
ロイヤルチャージャー
 ▶ターントゥ
  ▶ヘイルトゥリーズン
   ▶ヘイロー
    ▶サンデーサイレンス…ディープインパクトなど
   ▶ロベルト
    ▶ブライアンズタイム…ナリタブライアンなど
    ▶シルヴァーホーク
     ▶グラスワンダー…モーリスなど


サーギャラハッド・ブルドッグ…
サーギャラハッド 1920年生まれ。アメリカリーディングサイアー4回。
ブルドッグ 1927年生まれ。アメリカリーディングサイアー1回。
共にアメリカで大成功した種牡馬で、父テディの全兄弟。
それぞれがアメリカ3冠馬の父や祖父になっており、アメリカ競馬の1940~50年代は間違いなくこの兄弟を中心に回っていた。
直系子孫はあまり発展しなかったものの、牝系に入って爆発する血統であり、数多くの名馬にパワーとスタミナを継承した。
両馬の父テディも名牝ラトワンヌ(スクリーンヒーロー・コントレイルの牝祖)を排出するなど、牝系から与える影響は現代でも影響力は大きい。

ちなみに、この兄弟の弟にはボワルセルがおり、こちらもイギリスリーディングサイアー。さらにボワルセルの子がヒンドスタン(シンザンの父・日本の種牡馬記録の上位はノーザンテーストかサンデーサイレンスかヒンドスタンで独占している)であり、日本競馬にも大きな影響を与えています。

上記の通り、非NDネアルコの血統が重要としてきましたが、その理由としてはいくつか考えられます。

4,なぜ非NDネアルコなのか


スピード不足
少し悲しい話ですが、ゴールドシップ(メジロマックイーン)は現代競馬を基準にするとスピード不足が否めません。
しかし、足りない部分を補い合い、長けている部分を相乗効果で伸ばすのが配合です。

ネアルコ誕生から80年以上経っているのですべてを同一視は出来ませんが、ここで取り上げた非NDネアルコは、いずれの国でも快速馬の代名詞的な扱われ方をしています。

特にその傾向はナスルーラ系で顕著に出ており、アメリカンナスルーラの代表格セクレタリアトは、ベルモントステークス(ダート2400m)で40年経っても肉薄するものすらいない永久不滅の世界レコード2:24.0を叩き出しており

ヨーロピアンナスルーラの代表格ミルリーフは凱旋門賞をコースレコードで圧勝しています。

日本でも、芝2000m前後でレコードを連発したトウショウボーイサクラユタカオーなどを見るとわかるように、世界的にも中距離帯でのレコード決着に強い高速向きの血統です。


他の非NDネアルコ系にも同じことが言え、サンデーサイレンスは言わずもがなですし、ロベルト系は日本の芝にマッチして活躍馬を現代でも排出していますし、ターントゥから派生したサートリストラムは速い芝で競馬をしているオーストラリア中長距離で「オセアニアのノーザンダンサー」と言われるほどの活躍を残しました。

~余談~
個人的な感想ですが、これらの非NDネアルコと比べ、ノーザンダンサーを経由した血統は少しパワーに寄りすぎていると感じています。

欧州最強種牡馬であるND直系のサドラーズウェルズ・ガリレオ親子は日本では「重い」と言われますし、米国ND代表格ストームキャットも(牝系に入ると良い働きをするものの)産駒は日本ではパワーで押す競馬・逆から言えば一本調子が仇となり、活躍できませんでした。
~余談終わり~

スピード不足ならスプリンター!となりがちなのですが、中長距離に強烈な指向性を持つゴールドシップ産駒の場合、単純な短距離志向の高いスピード血統を足してもあまり有利には働かないようです。

日本競馬への親和性を高め、ゴールドシップの主戦場である中長距離でのスピードを出すためにはナスルーラのような中長距離でのスピード血統がマッチすると考えられます。

5,結局、サーギャラハッド・ブルドッグって?

すいません、正直何がどう作用しているかわかりません。
しかしながら、活躍馬を見ているともれなくついてくる血統であることは間違いありません。

ゴルシ産駒成績を見ていると、アメリカンナスルーラのボールドルーラーが特に相性良好なようです。
ボールドルーラーが活躍した時期のアメリカは、サーギャラハッド・ブルドッグがリーディングを兄弟で分け合っていた時期直後なので、血統表に共に載っているのは当然とも言えます。

また、この兄弟が色濃く血統表にいる産駒はスタートがよく、先行できる子が多いです。
アメリカ競馬といえばスタートから追い通しの究極スピードバトルですが、ゴルシ産駒に入ることでスタートトレースへの真面目さを引き出してくれているのかもしれません。


前半はゴールドシップに必要で好相性な馬を探してきました。
後半では実際に活躍しているゴールドシップ産駒の血統から見えるものを抽出していきたいと思います。

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