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田中琴葉ソロ曲考察:アイドル田中琴葉の物語

5thライブでシルエットを聞いて改めていい曲だなと思ったので、琴葉のソロ曲の歌詞を振り返ってみました。

諸事情により「ホントウノワタシ」から行きます。

ホントウノワタシ

(作詞:藤本記子、作曲・編曲:野井洋児)

LIVE THE@TER HARMONY 06に収録されている、2曲目のソロ曲です。

「大丈夫 君は強い人だから」と
いつもの笑顔の隣で
「そうね」って笑った
交差点 シグナルが変わる 黄昏
無邪気に手を振る姿に
「じゃあね」って笑った

この笑顔は演じている「田中琴葉」の仮面の笑顔です。周りの人の笑顔に合わせているだけ。琴葉の笑顔はどこ?

言えない言葉たちが溢れて
町も風も空も にじませてく

「言葉」というワードは3曲に共通するキーワードです。それは、琴葉自身のことでもあります。溢れる言葉は、押し込めきれなくなった琴葉自身の想い。

本当は泣きたくて 誰よりも臆病で
心はこんなにも脆くて
同じ涙いくつ流してもまだ
変われない 変わりたいのになぜ?

琴葉はアイドルとして歌もダンスも芝居も高スペックです。周りの人達の期待が高まるのも、ある意味当然のこと。しかし琴葉自身は自分自身を認められず、周囲の期待に見合わない自分の心の弱さ、そのギャップに苦しみます。そんな中気付くのは、「変わりたい、自分を変えたい=自分を認めたい」という思い。

ああ やっと気づいても そんな自分の気持ち
見失いそうになるけど
繰り返して ほら少しずつ強くなると
きっと信じてゆける 私なのに

きっと信じてゆける私「なのに」、認めきれない。

小さく「ただいま」明かりもつけずに
瞳の中 知らない私が
こっち見つめてる
着信 留守電に変わる 真夜中
上手に話せそうもなくて
ただ見つめてた

真っ暗な部屋、真夜中の暗闇が、琴葉の暗く沈んでしまった心を映し出しているよう。「田中琴葉」を演じる気力も湧かず、電話に出られない。

駄目ね 自分が嫌で悔しくて
冷たい床の上 膝を抱いたままで

そんな自分に更に自己嫌悪を抱くスパイラルに嵌ってしまい、冷え切っていく心。

待ちわびてる 窓に訪れる光を

そんな琴葉の心を照らしてくれる「光」とは?
シルエットでより分かりやすく示されますが、「光」も3曲に共通するキーワードです。

本当は泣きたくて 誰よりも臆病で
心はこんなにも脆くて
この胸に何度も 問いかけてみる
変わりたい 変われないのはなぜ?

自己嫌悪のスパイラルに嵌ってしまった心を、何とか持ち上げようとしても、一人ではどうにもならなくて。止まらない「なぜ(自分を認められないの)?」という自分自身への問いかけ。

ああ 思い願うほど 一途に追いかけるほど
また逸れそうになるけど
繰り返して 今日より明日は強くなると
ずっと 信じてゆける 私だから

ずっと信じてゆける私「だから」、認められるはず「なのに」。

まとめ

私はこの曲をアイドルになる前の琴葉を表現した歌だと思いました。

周囲の期待に答えようと、真面目に、努力を欠かさず、高いパフォーマンスを維持する琴葉。
一層高まる周囲の期待。
しかし自分自身を琴葉は認められない。
周囲の期待する「田中琴葉」を演じることに疲れ、暗く冷える琴葉の心。
照らし温めてくれる「光」はどこ?

琴葉のネガティブな側面が、危うく脆い心が、前面に出すぎてしまったとも言える、アイドル田中琴葉のプロローグです。

シルエット

(作詞:坂井季乃、作曲・編曲:山口朗彦)

M@STER SPARKLE 08及びシリーズ全体のトリを飾った、琴葉3曲目のソロ曲です。

wear light shed light…

wear lightは"光を纏う"、shed lightは迷うところですが"光を放つ"でしょうか?
(余談ですが、shed light on 〜は"〜を明らかにする"といった意味ですね)

The light that you gave to…
wear light shed light…
The light that you gave to me that day.

後述します。

誰かの影を重ねるだけ ちょっと言葉を借りるだけ
私が私を認める術 だって強くもなれる

ホントウノワタシにも出てきた、「田中琴葉」を演じる琴葉。演劇部という設定は、この1点を分かりやすくするための装置と考えています。

ずっとそんなことを繰り返し そしていつの間にか
自分らしく在ること 伝えること 歌うこと 怖くなった

ホントウノワタシで琴葉がなぜ最後まで自分を認められなかったのか。ここでその理由が明かされます。「役」を、「田中琴葉」を演じることに慣れてしまった琴葉は、自分自身を表現することを恐れていたから。

誰になろうとも 部屋に帰れば 服を脱げば 今も私は私のまま
何も変われない 空っぽになるまで涙が止まらなくて
あの日飲み込んだ言葉が顔を出す

一人になれば、また自己嫌悪のスパイラルに嵌ってしまう。友達と手を降って別れた「あの日」飲み込んだ「言葉」が、琴葉自身が、顔を出す。

彼女は誰のせいにもせず ずっと自分と向き合って
私が私から逃げてる時 きっと闘ってたんだろう
それは今までに演じてきたどんな私よりも
カッコ良くて キレイで 纏う光はとても眩しくて

そんな琴葉が見つけたのは、光を纏い、光を放つ、「彼女=アイドル」の姿。ステージの上の彼女が眩しいのは、物理的にライティングされているだけじゃない、彼女自身の「光」を放っているから。与えられた光と自ら放つ光。2つの光によってアイドルは輝くのです。
(ちなみに、この「彼女」が誰なのかはだいぶ議論の余地があると思いますが、私の解釈としては、シアターの他のアイドルたち、特にその中の特定の誰かを指していると考えています。)

誰にならずとも 私は私の光を纏えば
この身体も この心も もっと信じられるの?

琴葉の目指す道が見えてきました。それは、誰かの与えてくれた「光」の力を借りて、自分の「光」を放つ=琴葉自身を表現すること。

ほかの誰でもなくあなたに見つけて欲しい 今の私が纏う光
ちゃんと変わりたい 踏み出すこの一歩 どうか見届けていて

一人では踏み出す勇気の出なかった一歩を踏み出す勇気が出たのは、あなたの「光」が道を照らしてくれたから。だから、他の誰でもなくあなたに、見届けてほしい。変わろうとしている私を。

あの日飲み込んだ言葉を伝えに行く 私のまま光るよ

あの日飲み込んだ言葉=琴葉を伝えに、ステージに立つ。田中琴葉の「光」を放つために。

見つけて 光を ねえ
あなたがくれたヒカリ

ここでイントロ及びアウトロのコーラスを振り返ってみましょう。

wear light shed light…
The light that you gave to…
wear light shed light…
The light that you gave to me that day.

"あの日、あなたが私にくれた光(ヒカリ)。"
あなたがくれた「光」を纏い、私自身の「光」を放つ。
きっとあなたが目にするのは、光に包まれた彼女のシルエット。

まとめ

この曲「シルエット」は、田中琴葉がアイドル田中琴葉になる過程を表現した歌だと考えています。

そして、「ホントウノワタシ」と「朝焼けのクレッシェンド」の2曲を繋ぎ、アイドル田中琴葉の物語を完成させる役割を持っています。まさに田中琴葉3部作と言うべきか。

朝焼けのクレッシェンド

(作詞:こだまさおり、作曲・編曲:松田彬人)

LIVE THE@TER PERFORMANCE 04に収録されている、琴葉最初のソロ曲。
「ホントウノワタシ」、「シルエット」を経た今、実はこの曲はアイドル田中琴葉のプロローグ、その終着点にあることが分かりました。
アイドルとして歩き始めた田中琴葉の姿を見届けてください。

微睡みは夜明けを感じて 瞼を熱が撫でる
満ちてゆく今日のはじまりに
そっと誓う そんな夢を見てた

開く 扉の前 怖くて 泣いた昨日
過去形に変わる わたしで目覚めよう

叶えたい思いに純粋なまま
朝焼けは高鳴りへのクレッシェンド
抱きしめた自分を信じているよ
わたしが わたしでいれるように

言葉が紡ぎ出す世界で 心は自由な風
降り注ぐ光を纏って もっと強い線を描きながら

いつか 次の扉 探して 開く時も
自分らしい朝に きっと旅立てる

信じたい明日に踏み出すために
今できるすべて追いかけて
毎日をかけがえない今日にしよう
わたしは わたしの情熱で

迷いながら 手放せなかった 夢なら本物
不器用でも 前を向いていこう
どんな時も どんな時も

叶えたい思いに純粋なまま
朝焼けは高鳴りへのクレッシェンド
抱きしめた自分を信じているよ
わたしが わたしでいれるように

後に出た2曲(琴葉の時系列的には前になりますが)を踏まえると、グッとくるフレーズがたくさんありますね。
「開く 扉の前 怖くて 泣いた昨日 過去形に変わる わたしで目覚めよう」
「迷いながら 手放せなかった 夢なら本物」
「抱きしめた自分を信じているよ わたしが わたしでいれるように」

その中でも特にピックアップしたいのがこのフレーズ。

言葉が紡ぎ出す世界で 心は自由な風
降り注ぐ光を纏って もっと強い線を描きながら

「田中琴葉」の仮面から解き放たれて、光を纏い、光を放つ琴葉が作り出すステージの輝きと、強い決意を感じます。

総まとめ

シルエットの時あえて触れなかったのですが、琴葉に光を与えた「あなた」はもちろんプロデューサーである私達です。

私達との出会いをきっかけに、田中琴葉はアイドルとしての道を、一歩ずつ歩み始めました。

私も1プロデューサーとして、道を照らし、共に歩み、その姿を見届けたいと思います。


追記

迎えに来たよ、琴葉。

改めてよろしくお願いします。

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