蒼き鋼のアルペジオ-ARS NOVA-Cadenza 見てきました(雑感)


最初に断っておきますが、私はアルペジオの原作を読んでいません。TVアニメは放送を毎週追っかけ、劇場版DCも見に行きましたが、漫画の方まではいまいち手が出ず今に至ります。というわけでこの後に続く感想も原作の知識がない人が書いておりますので、そっちをご存知の方は「あ〜コイツアレ知らんのか(笑」とニヤニヤしながら眺めていただければと思います。(以下、クリティカルなネタバレは避けてます)

上映開始と姉妹喧嘩

私が劇場に着いたのは上映開始の5分前でした。急いでチケットを買い席につき息を整えているうちに恒例行事のNO MORE!映画泥棒と他の映画の予告編(ガルパンとか。秋山殿〜)が始まり、否応にも期待感が高まっていきます。

サービス精神旺盛なことで知られるアルペジオスタッフ。劇場公開前(9月末)になんと冒頭20分を地上波で放送していたんですね。当然チェックしていたので、ナチさんの美しいお姿やバカわいいアシガラの活躍を既に見ていました。

予告編が終わりシアターの照明が落ちていく中で、さあ初っ端は復習からだと意気込むわけです。しかしそれは裏切られる。(おそらく)ムサシに並ぶ、あるいはそれ以上の存在であるにも関わらず、前劇場版にも(ほぼ)姿を表さなかった霧の超戦艦、ヤマト。黒髪白ゴスボインというムサシとは全く正反対のデザインの彼女がいきなり姿を表し、そして神話にも似た姉妹喧嘩の末沈んでいくところから物語は始まりました。この展開は正直驚きで、一気にスクリーンに引き込まれてしまいます。相変わらずアルペジオスタッフはいい意味で期待を裏切る(笑

個性豊かなキャラクターが奏でる物語(ハルモニー)

衝撃のプロローグの後、物語は前作のラストシーン、ムサシと千早翔像から人類への降伏勧告に合流します。ショックを受ける群像ですが、彼の決意は変わりません。アルペジオの主人公はイオナと群像だと思うのですが、群像が柔和な性格でありながらも絶対に曲げない芯を持っていることはアルペジオ全体の安定感に大きく貢献していると思います。そんな男らしい群像とは対照的に、Cadenzaでのイオナはたゆたう波のようにゆらゆらと心が揺れ動きます。TVシリーズの特に前半ではあんなにクールだったイオナが、今回の劇場版では最も戸惑い、思い悩むキャラクターへと「成長」しています。

そんなイオナと群像を支えるイ401クルーの面々。TVシリーズでは目立つ場面の少なかった僧のキャラクターが掘り下げられていたり、アルペジオはメンタルモデルだけのものじゃないぞ!というスタッフの意思が伝わってきます。あのマスクの下の素顔は絶対イケメンだと思う。私が大ファンである東山さんも、演じる静がサービスシーンを貰えて大喜びのようでした(パンフ参照)。あと今劇場版を通しての功労賞というか苦労性がいおりなのは間違いない。異論は認めない。

今回の敵役である霧の生徒会も個性的な面々が揃っています。姉の離反に心乱され拠り所を失い、頑なになることで何とか自分を保とうとするヒエイ。(こっちのヒエイもお姉ちゃん大好きか!)彼女の苦悩は姉コンゴウのかつての姿に重なります。そしてミョウコウ型四姉妹。キャラクタライズを性格や見た目だけでなく兵装でも行っているというのが良かったのではないでしょうか。これは多くの皆さんに同意いただけるものと思いますが、中でもアシガラの可愛さはずば抜けていましたね。TVシリーズにおけるマヤに近いポジショニングだったと思いますが、あっちはくら〜い事情がありましたから…(笑。ミョウコウ姉さんの兵装もめちゃカッコ良かった…。あとは私は艦これもとても好きなので、妙高型との絡みを妄想してしまいますね。多分一番気が合うのはナチ那智コンビ。

王道を征く「蒼」

ストーリーの話に戻りましょう。霧のトップであるムサシと翔像と接触するため北極海を目指す千早群像とゆかいな仲間たち。(なんで北極海と知ってるのかすっかり忘れてました…)ピンチと起死回生が次々に押し寄せてきて、全く飽きさせません。アルペジオは群像劇(群像くんの劇じゃない方)ですが、それぞれがどのような思惑で構想し、それがどう化学反応を起こすのか。限られた時間の中で各キャラクターの動きを見せるのがとても上手いと感じました。

終盤に訪れる最大のピンチには、かつての仲間たち(あの人含む)が次々に駆け付けます。まさに王道の展開。だがそれがいい。最近の作品(アニメに限らず)には奇しかてらっていないものが多く辟易したりするのですが、私は作話において基本を守ることはとても大事であると思っています。これがまさに「王道」な訳ですが、色付けをするのはそれからでも遅くない、と。アルペジオはこの王道をしっかりと征ってくれるため、余計な苦慮なく物語に集中することができます。

さて、ではアルペジオの「色」ってなんでしょうか?(蒼だろみたいなマジレスは受け付けていません。)私は「大迫力の艦隊戦」がアルペジオの色、個性だと考えます。TVシリーズでもそうでしたが、アルペジオの艦隊戦は現実の艦隊戦ではありえない(どころではない)ことが次々に起こります。そもそも現代戦で砲撃戦なんてまず無いですからね。加えて、有り得そうで有り得ないレベルの兵器とトンデモ兵器の混ぜ方も自然で、よく考証されてると感じます。今回は劇場版ということで特に艦隊戦の3DCGへの力の入れ具合が半端じゃなく、ストーリーだけでなく視覚情報でもどんどんスクリーンの虜になっていきます。ラストバトルの本当に最後の画面は、アルペジオにしかできないものです。(是非劇場で確かめてください)

Cadenza

最後に、副題にもなっているCadenzaとはどのような言葉なのでしょうか?

カデンツァ(伊: cadenza, 独: Kadenz)とは、一般に、独奏協奏曲にあって、独奏楽器がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏をする部分のことである。(引用:Wikipedia「カデンツァ」)

映画を見た後でこの説明を見て、私たちは気付くのです。今回の劇場版は登場人物皆がそれぞれ独奏者(ソリスト)として奏でたCadenzaの結晶だったのだと。そしてこのCadenzaという言葉は物語の結語としてもふさわしい。いいサブタイトルですね。

私のこの文章を読んで少しでも「アルペジオ」という作品に興味を持ってくれたら、いちファンとして非常に嬉しく思います。投稿時点ではまだ上映している映画館もあるので、気が向いたら映画館に彼らの物語を目に焼き付けに行ってみてください。私も初回では貰いそびれた来場者特典を狙って、まず映画館に在庫の確認電話をするところから始めようと思います。

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