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トランプ復活シナリオ : 連邦最高裁_2020大統領選挙不正判断の行方_22/07/10

2022.6.28

[Telegram;たなもと(弁護士)チャンネル転載]

先日、ロー&ウエイド-Case(中絶法)を覆すという、憲法判例変更という重大な判決がなされ、米国、主に民主党州で暴動一歩手前という情報があるのは、皆様ご存じのところかと思います。

またそれと同時に、2020年大統領選挙結果に関する(選挙無効)訴訟判決が行われるかもしれない、という情報がにわかに注目を浴びており、ここにきて大きく情勢が動きつつある、そんな状況の中にあります。

今日は、この2020年大統領選挙結果に関する判決ないし判断にスポットを当て、現在合州国を動かしているといわれるDevolutionに関する傍例として、合州国最高裁判所の最近の動向から考察を行っていきたいと思います。

1.はじめに
2.もう一つの表明手段「Shadow docket」
3.「Shadow docket」の発動条件
4.「Shadow docket」を最も活用した大統領
5.おわりに


1.はじめに

合州国最高裁の構成やその役割については、以前「スティーブン・ブライアーの引退発表の影響ついて (https://t.me/tanatomosan/56)」と題する記事で考察したところです。

この合州国最高裁の究極の役割は、違憲立法審査権を行使することを通じて、連邦政府や各州政府の権限乱用・踰越(ゆえつ)を防止することにありますが、2020年大統領選挙結果に対する審査とその判断を「判決」という形で行うことも当然含まれることは、論を待たないところです。

合州国最高裁では、1年間で約1万件超あまり持ち込まれる申し立てのうち、その係属する訴訟は、およそ100件前後あり、それぞれ

①口頭弁論期日(当事者の申し分を法廷が聴聞すること):10月-4月まで
②判決の言渡し期日(裁判所が判断結果を申し渡すこと ):5月と6月

にそれぞれ行われることになっていて、もし2020年大統領選挙結果に対する判決が行われるとしたら、その期限は、そうです、今月30日までに行われることが予想されることから、ここ数日にわかに動静が注目されている状況となっています。

そこで、合州国最高裁のサイト (https://www.supremecourt.gov/)をみると、判決の公表日(オピニオンデー)として「29日水曜日」が追加されることとなったと発表があり、ここで我々が期待する2020年大統領選挙に対する判決が行われるかどうかが、重要です。
されど、この日に発表されるかどうかは、まだわかりません。

しかしながら、実はもう一つのルートがあるのです。
それが最近、我々法務専門家の世界で注目されている

「Shadow docket シャドウドケット(陰の〔係属中の〕訴訟事件一覧表)」

での意見表明です。

次にこのShadow docketについて簡単に考察してみたいと思います。

2.もう一つの表明手段「Shadow docket」

このシャドウドケットとはどういうものかというと、口頭での議論なしに通常の審理外で決定された合州国最高裁判所の決定を指しています。いわゆるエクイティ(衡平法)の一種で、日本でいう「仮処分決定」に近い性質の司法による救済措置でしょうか。

というのも、一般に合州国最高裁は、判決の詳細な説明を発行する前に当事者が書面によるブリーフと口頭の両方で論点を議論すること、即ち

口頭弁論 ➡️ 裁判官同士の議論 ➡️ 判決言渡し

の順で行われるのが通例となっています(日本も同じです)。

ところが、名誉毀損による出版差し止め事件等のように、通常のこの手続きを踏んでいる間に「訴訟当事者の一方が取り返しのつかない損害」を被る場合があり、裁判所が必要と判断した場合に使用される、緊急措置・命令が必要となります。

それが、このシャドウドケットという手段ということになります。

現時点で、王道の口頭弁論ルートではなく、このシャドウドケットが使われるのではないかと考えられている理由としては、この口頭弁論が行われたかどうかがはっきり確認できておらず、今もって判決がなされるかどうかが確定できない大きな理由となっています。

3.「Shadow docket」の発動条件

このシャドウドケットに係争させるかどうかの条件としては、4人の裁判官が裁量上訴を認める必要がありますが、興味深いことに現在の合州国最高裁の構成は、保守派がC.トーマス、S.アリート、N.ゴーサッチ、B.カバノー、A.C.バレットの5名となっており、ここにも
「プラン」が内在していることがうかがえます。

シャドウドケットは、下級裁判所の命令による緊急救援の申請で決定され、2020年大統領選挙の訴えであれば、テキサス州やアリゾナ州などの州最高裁判所や、連邦巡回裁判所といった下級裁判所に係属した訴訟についての判断についてが対象ということになります。

これらの下級裁判所は、事件がシャドウドケットで決定されるまでに、事件について最終判断(決定)を下さず、裁判所の決定事態について説明されることはめったにないことから係争プロセスが外部からわかりません。(ここが、シャドーたる所以です)

よって、この方法によれば、(情報開示を伴う)口頭弁論を経ることなく、オピニオンデーとは無関係に、いきなり合州国最高裁が決定を公告することも可能ということで、7月になってからいきなり来ることも十分あり得る、ということがお分かりいただけるものと思います。

参考までに2022.1.13付で下された「全米での企業による強制接種禁止という差し止め命令 (https://t.me/tanatomosan/34)」がありましたが、これもこのシャドウドケットに係争する事件でした。

4.「Shadow docket」を最も活用した大統領

このシャドウドケットですが、元々は、日常的な命令を出すために使用されており、今日のような重要な係争事案に用いられては来なかったというのがこれまでの実情です。

しかしながら、重要な判決に対するシャドウドケットの使用は、2017年以降急激に増加するようになりました。つまりドナルド・トランプ政権時代と軌を一にしており、非常に興味深いです。

トランプ政権より前の16年間(オバマ、子ブッシュ)で4件しか認められなかったのが、トランプ政権では、28件と急増しました。

トランプ大統領の旅行禁止問題、国境の壁建設費用に軍事費転用許可する件、米軍によるトランスジェンダー兵士を禁止など重要な政策をトランプ政権は、このシャドウドケットを通じて連邦下院で共和党が少数派であったにもかかわらず、確実に実行していきます。

至上、最も「Shadow docket」を活用した大統領ということが云えそうです。

4.おわりに

ここまでのまとめ

🔹合州国最高裁の究極の役割は、違憲立法審査権を行使することを通じて、連邦政府や各州政府の権限乱用等を防止すること、
🔹2020年大統領選挙結果に対する審査とその判断を「判決」という形で行うことも当然含まれること
🔹その判決は、王道の口頭弁論ルートを使うとは限らないこと
🔹奇策としてのShadow docketルートに注目する
🔹Shadow docketを最も活用したトランプ大統領

といった論点で考察を行ってまいりました。

中でもトランプ大統領がShadow docketを最も活用したという事実は、暗に2017年往事より今日に至るまで、WH側が合州国最高裁判所を支配していることの表れではないか。

わたしは、そのように考えているところですが、さて皆様はいかが思われるでしょうか?

ここ数日の合州国最高裁判所の動向に注目です。


2022.7.9追記


Final Judgment. 2020年大統領選挙に関する合州国最高裁の判断

2020年大統領選挙結果判断について、こちらは、まだ、合州国最高裁(SCOTUS)から公表されていません。しかしながら、(非常に異例なことに)例年、既に夏期休廷期間に入っている6/29と6/30に急遽オピニオンデーが追加されたことや、SCOTUSの裁判官会議が6/29の午後にこれもまた急遽追加されたという事実を踏まえると、実際にはこの間、この問題に関するSCOTUSの(選挙が無効という)最終判断が下されたことは、ほぼ間違いがないもの、とわたし個人はとらえています。

というのも、下級審からの内部照会(2020年選挙が不正であるとの証拠が重なっていることからこのまま審理や判決を下級審で行ってよいかどうかという打診で通例非公開で行われる)に対する返答を非公開で返戻するためには、「Shadow docket」と呼ばれる手法を使って回答せざるを得ないと想定できるからです。

また、司法の世界では、上級審の判断は下級審の判断を拘束するという大原則があることから万一、SCOTUSの判断が「不正はなかったと認定」したとすると、直ちに下級審は、訴訟を却下する必要があるところ、実際のところは、その審理は破棄されるどころか、続行していることを踏まえると、却下理由がない=不正選挙があったという判断が上級審たる、SCOTUSからなされている、と考えるのが妥当だろうと推測が成り立つからです。

つまり、今後、これら不正選挙を取り扱っている下級審(テキサス州、アリゾナ州、ジョージア州など)の審理状況を追っていくことでSCOTUSの判断(不正だったと判断していること)が明確になっていく、ということを意味しています。

ということで、どのような結末を迎えるのか、たとえ結論はわかっていてもそのプロセスからまた学びがあると思っていますので、今後、これら下級審の動静にも引き続き注目したいと思います。


”アメリカでの大捕物”の物語も、いよいよ大詰めとなってきた感がありますが、一日も早く、決着がついて、新世界へのスムーズな移行につながることを願って、考察を終えたいと思います。


2022.7.10追記

「内戦を回避する必要がある」と考える理由

先の一連の説明(その1 (https://t.me/tanatomosan/121)・その2 (https://t.me/tanatomosan/122)・その3 (https://t.me/tanatomosan/123))では端折ったのですが、トランプさんも、WH軍部もこだわっているのがどうも、「戒厳令を布くこと自体を避けている」、のが本音ではないかと考えております。

というのも、戒厳令を布くことで、戦後処理を行う時の権力の源泉=正当性に瑕疵が生じてしまうことになるからで、これを恐れていているが故に、行政権も、立法権も、司法権も、あらゆる手段を持ってしてもダメだから、仕方なく戒厳令を布いた(クーデーター決起)というロジックに持って行こうとしているのかなと。

国民側からの自発的なレジーム打倒=革命なら正当性は最上で問題がないのですが、クーデターの場合は、そうではないため、どうしても二の足を踏んでしまう、そう思えます。

個人的には、そういうのはもういいから、ちゃちゃっとやってくれ!というのはあるのですが、一方で法律の世界に身を置く者としては、どうしても正当性呪縛から逃れられず。。困ったなぁというのが正直なところです。

今、説明できるのはそんなところです。
何かの参考になりましたら幸いです。

おわり

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(FINE)

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