純粋の残酷
ほかに命亡きその地でも、白は夜を裂いて咲く。
今日も、予言の星は咲く。
かのベツレヘムの地では、聖人の誕生を知った王が自らの権威の失墜を恐れ、その地の男児を皆殺しにしたという。
とはいえ、目当ての児は聖女とともに逃げ遂せてしまったのだが。
無関係の児を巻き込み、仇の彼は生き残ってしまう。
その夜にも、ベツレヘムの星は輝いていた。
時代が変わっても、無垢な白さで、星と例えられるその花は静かに咲く。
今も、昔も。
戦乱の時代も、平和な世も。
子供が駈ける裸の大地でも、人無き緑の地平でも。
日差しが暖かい光のなかでも、鬱蒼とした冷たい闇のなかでも。
花びらが軋む。
月を受けて白く輝く。
血を吸った地で、純潔を咲かせる。
オーニソガラム。
聖人の誕生を告げた此の星の花は、代わりに多くの死もそれは見つめていた。
一人を救うために多くが消えるのを、黙って見つめていた。
無垢の子ただひとりを生かすため、今日も彼の花は咲く。
告げる。
いまも、この場所で聞こえる声は無かった。
表紙画像の写真はこーじ様の「GW初日のベランダより」から文字入れして使わせて頂きました。
ありがとうございました。
表紙にすると文字が小さかった‥‥‥
ひとが撮ったものは自分では撮れないものであるので、感動やら憧れやら色んな感情が生まれるし、なんだか気合が入りますね。神秘的な元写真がまったく生かせていないような気がしますが、素敵な写真をお借りできて幸福です。
また機会があればこういうことをやりたいと思いました。
突然の問い合わせに返事をくださったこーじ様、本当に有難うございました。
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