マガジンのカバー画像

創作物と応募ネタ

23
基本「」がタイトルに付いているのは創作物。小説とか自由詩とか。付いていない応募ネタも。
運営しているクリエイター

#ショートショート

「煙たい夜に」※改題

初めて煙草を吸ったのはハタチの終盤、成人式前に帰郷した際の飲み会で。キャンペーンガールがくれたサンプルの銘柄なんて勿論憶えていない。経験値として消化され、肺は恐らく綺麗なままだ。 オフィスビルには複数の会社が入っていて、時々交流会と称した飲み会が催される。先月知り合った彼とは音楽の話で盛り上がり、今度はゆっくり、と個別に誘われたのだ。 「え、じゃあ1回しか吸ったことないんだ」 「はい、しかも一口だけ。その後、派遣の仕事で自分でも配ったんですよ。制服のスカートが結構短くて嫌

「ふくみみ」

久々に顔を合わせた友人の耳には、重たそうなピアスが煌めいていた。 「実優ちゃんのピアス可愛いね」 「ほんと? 有難う! 智也に買ってもらったんだよ」 アイスコーヒーにミルクを滴らし、ストローをくるくる回せば氷がからころと響く。長い睫毛の彼女は結婚間近の幸せ真っ只中。 「そんな重たそうなピアスでさぁ、よく耳がちぎれないよね……」 「ちぎれた人なんか聞いたことないでしょ」 大きな笑い声を立てた彼女は、悪戯っぽい顔で私に囁く。 「舐めてくるの」 「えっ?」 「智也、私の耳

「鳴いて泣いて凪いで、」 #青い傘 企画小説

"あっ、いま大丈夫? 明日からの旅行なんだけど、熱が38℃から下がんなくて。自分の分のキャンセル料は払うから、ごめんねー!" やけにテンションが高い友人からの電話を受けたのは、金曜日の夕方だった。 「えっ?……いや、部屋とか二人で取ってたじゃん、どうすれば良いの?」 会社なのに大きな声が出てしまい、私は慌てて立ち上がると、こそこそと隠れる様に廊下へ出る。 "んー、ホテルにメールしとくよ。それで一人部屋代金とか取られたら、私に請求してよ。全然払うし!" 「いや、全然払うし、