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創作物と応募ネタ

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基本「」がタイトルに付いているのは創作物。小説とか自由詩とか。付いていない応募ネタも。
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#エッセイ

「金木犀に秋を感じる程の情緒で生きていきたい」

 待ち合わせる店までは電車だと却って遠回りなようで、見慣れぬ道をGoogle MAPで確かめながら歩いていく。すれ違いざま、犬は英語で躾けられ、ベビーカーの少年は坊っちゃんカットで笑っている。数年経てば整えられた襟のシャツと膝小僧の出るパンツを履いて近くの私立学校に通うのであろう。一様に塀が高く年季を感じる家々を横目に、高級住宅街と名高いのも頷けるなとひとりごちてみる。金木犀の匂いと銀杏の臭いが混ざり合う道。台風一過の夏日でも秋は逃げたりしないのだ。  知らない街では目に映

「午前4時、開かない踏切」

カーテンの隙間から零れる灯りに、死んでしまいたくなる午前4時。明るくなってんじゃねえよ、と理不尽に毒づきながら布団に身を沈める。 「……3件」 先ほどまで確かに『明日』だった今日の、来客予定を思い返す。3件も飛ばすのは面倒だな。観念し、消灯。目を瞑る。 死ぬのは簡単だと思った。 日本で暮らす限りは諸々のしがらみによりハードルが高いと感じているが、単身ふらり所謂「秘境」にでも訪れれば、言葉もろくに通じないまま佇んでいるだけで受動的にも能動的にも死ねると何故だか突然確信し

あの日見た夢の名前を私はまだ知らない

いつか縁のある地で働く時があれば、何かしらの意味を持たせるべきだと入社前から思っていた。しかし予想より早く命じられた異動に、東京生活を手放す勿体無さと、逃げ出してきた街で再び暮らすことへの不安を覚えた。まだ何も成し遂げていないのにと猛省しながら、とにかく何か結果を残したいと動き続けた。成功も失敗も思い出しながら、過去の自分が出来なかったことや他の人がやっていたことも交えて。 初夏の頃、やってみたかった企画で予算以上の実績を上げることができた。他の街でも叶えられたことではある

エンターテイメントの世界で

エンターテイメントの素晴らしさに何度も救われて生きてきた。息苦しい学生生活に夢を与えてくれたのはアイドル、音楽の素晴らしさとものづくりの尊さを教えてくれたのはロックバンド、つまらない日々に彩りを添えてくれたのは数々の展覧会やイベント。 自ら進路を選べなかった時代に明確な居場所を持てず悩んだことが「人を沢山集める場をつくりたい」という気持ちに繋がり、「好きなものを好きになってもらいたい」という気持ちと合わさって、エンタメをお届けする世界(とても広義ではあるけれど)に片足を突っ

小説 「鳴いて泣いて凪いで、」 あとがき〜 「鳴いて泣いて凪いだ先にあるもの」 感想 #青い傘

文芸サロン「青い傘」内で「東南アジアを基にした小説の連作」という企画に参加しました。 私が書いたあと、アセアンそよかぜさんに素敵な続きを紡いでいただきました。 自分の作品のあとがきを書きたいなと思っていたので、アセアンさんの小説の感想も交えながら綴ります。誰かのnoteについて感想を書く #note感想文 なんて素敵なお題があったのも本記事を書くきっかけになりました。 アセアンさんの読み応え抜群!な総括はこちら↓ 【あとがき】舞台はプーケット、人のイメージモデルはバリ