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創作物と応募ネタ

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基本「」がタイトルに付いているのは創作物。小説とか自由詩とか。付いていない応募ネタも。
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2020年5月の記事一覧

あの日見た夢の名前を私はまだ知らない

いつか縁のある地で働く時があれば、何かしらの意味を持たせるべきだと入社前から思っていた。しかし予想より早く命じられた異動に、東京生活を手放す勿体無さと、逃げ出してきた街で再び暮らすことへの不安を覚えた。まだ何も成し遂げていないのにと猛省しながら、とにかく何か結果を残したいと動き続けた。成功も失敗も思い出しながら、過去の自分が出来なかったことや他の人がやっていたことも交えて。 初夏の頃、やってみたかった企画で予算以上の実績を上げることができた。他の街でも叶えられたことではある

エンターテイメントの世界で

エンターテイメントの素晴らしさに何度も救われて生きてきた。息苦しい学生生活に夢を与えてくれたのはアイドル、音楽の素晴らしさとものづくりの尊さを教えてくれたのはロックバンド、つまらない日々に彩りを添えてくれたのは数々の展覧会やイベント。 自ら進路を選べなかった時代に明確な居場所を持てず悩んだことが「人を沢山集める場をつくりたい」という気持ちに繋がり、「好きなものを好きになってもらいたい」という気持ちと合わさって、エンタメをお届けする世界(とても広義ではあるけれど)に片足を突っ

「エコーロケーション」

*オンライン文芸サロン「青い傘」内で作成予定のペーパーマガジン『青い瓦版』掲載用作品(詩) *メインテーマ「一瞬に泳ぐクジラ」 *関連テーマ「一瞬、瞬間、時(間)、永遠、有限、無限、海、深海、などメインテーマから連想される物」 ------------------------------------------------- お揃いのスカートと肩揺らしてる18歳の花まっ盛り 私達だけの共通言語なのクジラ同士のエコーロケーション 家族より一緒に居たね授業でも放課後アイス買

「由布院で猫と蛍と」

小説家の一哉は年に数回、温泉街の宿に篭って作品を書き上げる。今冬の目的地は大分の由布院だ。3泊4日、猫を連れて。 3日目の夜、執筆は佳境を迎えていた。 「先生、」 「……未来、私のことばかり見ていないで、何かしていなさい」 「猫は、先生を静かに見つめているものなんですよ。さあ、そろそろご飯を食べましょう」 お宿の人が待ちくたびれて何度も私に配膳時間を聞くのです、と未来は首をすくめた。 鍋の蒸気で眼鏡が曇り、顔を顰める一哉に声を立てて笑う未来。 「……笑わなくても、」