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近所の行きつけの店

スーパーくらい気軽に立ち寄れる近所の行きつけの個人店がある生活が、憧れだった。

それこそ店主や常連さんたちと仲良くなれるような…。そのタイプの店に2軒挑戦して、2軒とも撃沈した。

1軒目。美味しかったし上手いこと関係を築けそうだったが…入店時にちょうど入れ替わりに退店していった一見さんの悪口大会が始まった。奴は、これっぽっちしかお金を使わずに帰りやがったみたいなことだった。最低料金で長居していたなら分からなくもないが、同じく一見である私の耳の届くところでする話か?

同じ轍を踏むなという遠回しの警告である。

しかも隣の酔っ払いサラリーマン…たぶんボラれている。常連のおじいさんは、明らかに安すぎる会計をしていたのにだ。

私も会計時に、表に申し訳程度にあったメニューの代金よりも若干高い支払いになったものの明細をくれないタイプの店だった。
しかも店内にメニューなしの中、野暮なことは聞かないでおこうと追加で料金不明品をあれこれ頼んだので否応なく支払って帰った。金額は、野暮じゃない大切なことだ…隣のサラリーマンの如くボラれていたら無銭飲食をする所だったかもしれない。

長く通う人には、そりゃあ多少良くしたいものだが…こちとら全部聴こえている。看過できない金額差だった。

2軒目。それこそ普段の通り道沿いにある店で、ずっと気になっていた。何だか家に帰りたくなくて、のんびり歩いていると常連らしきおば様が店前で中の様子を伺う最中だった。気がつくと目が合っていた。

あなたこの店が気になるの?一緒に飲もうよと半ば強引に一緒に入店。自称酒クズの男女の常連たちに囲まれた。

明らかな常連さんたちに囲まれ着席。店主から下系の話無理ですか?大丈夫と確認を取られ……あぁまぁと…。
15年以上前に行った海外での下系のハプニングな話が始まる。先程のおば様とは別の女性常連客の話が上手く、年上との会話にわりかし溶け込むのが上手いらしい私も店主たちと一緒にリアクションを取っていた。翌日が早いこともあり、店を気にいろうがどうしようが…今日のところはサクッと退店しよう。その強い決心が伝わったのか、飲まされすぎず1時間ちょっとでお会計。料理もお酒もそこそこ好きだった。
上手いことグラスや食事に気遣ってくれていた店主。
こちらも不明朗会計だったもののまさかの¥1,000でいいよと。有難く支払う…

ちょっと待って!

と店主。店の名刺に何やら書き込んでいる。嫌な予感しかしない。

個人的な電話番号が添えられた名刺の登場である。あーーーーこの店主、どう?(恋愛的に)みたいな話を確かにほんのりされた。上手くかわせたと思っていた私が馬鹿だった。

田舎のじじばばのノリ的なやつだと思っていた。海外話から察するに年齢差多分えぐいぞ…私が老けて見られがちなのもあるとは思う。年齢を確か伝えていなかった。
しかも身なりにそこまで気遣っているタイプではないオジ店主である。

こんなのとお似合いかもしれないと一瞬でも常連たちに思われたなら、とても心外である。下世話な男性客だけならまだしも、男女比率半々の店でだ。

名刺に添えられた手書きの電話番号で私の目は死に。店主の親切心が全部、下心に思えた。あながち間違いではないだろう。

あーーー…普段の交友関係が良い人ばかりで忘れていた。世間…いや酒クズを自称しているような常連たちが男女を若いオンナを意識しないはずがなかった。

常連たちは、みんな店主の味方である。助けてはくれない。ただ連絡先を渡されただけだ。そうそれだけ。

店を出ると入店時よりも遥かに帰りたくない気持ちで溢れていた。

悔しい。楽しく飲みたかっただけなのに。あわよくば常連客になりたかったのに。お前の彼女や都合のいい女になりたくて入店したんじゃないのに、舐められた。いや、あの親切心的に舐められていない結果、比較的上品な連絡先の渡し方をされた可能性もある😇何はともあれ、恋愛に潔癖になっていた私は全てが汚らわしく感じた。

そして後悔した。通り道にそう…あるのだ。あのグロいお店が。しかも店主の住処が繋がっているらしい……たまに昼間でも店主が店前でタバコをふかしているのだ。そんなのあの店に入店するまで見た覚えがなかった。

人間の記憶力とは恐ろしいものである。認知が歪んでいたのだ。

私は入っても良い店を見誤った。

その後…店前を通りがかった時にたまたま店主が出てきた。1度しか入店していないし、何なら入店時から1年経ったかもしれない…私は目を逸らして早足で駆け抜けた。

その道の利用頻度的に様々な時間帯に通っているのだが…たまたま店主が出てきたということが多すぎて、もはやわざとなのではという被害妄想が始まるほどだった。

つらい

ちなみに年齢は隠した気がするが…家が近くなのかという問いにはやんわり答えてしまったし、通りがかることも話の流れでつい話してしまった。迂闊でしかない。

近所にお気に入りの場所ができたら、素敵だ憧れると思っていた無垢な私の気持ちを返して欲しい。

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