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父のいた世界、いない世界。

父の七回忌の法要が終わった。

6年前の11月。父は胆管癌でこの世を去った。
享年55。
女優の川島なお美さん、柔道の斉藤仁さん、ラグビーの平尾誠二さん(元・FC今治アドバイザリーボード)らが父と同じ病で命を落としている。

40代で既に一度肺癌を患って大手術と闘病生活を耐え抜いてから何年も経ち、もう完治と言っていいかな?なんて主治医と話してた矢先だったから、本人はショックだったかもしれないけどよく55歳まで生き延びたなと、私は思う。
でも、一般的には、いわゆる"早すぎる死"だったと言える。

父が亡くなってちょうど一年後、岡田武史氏がFC今治のオーナーに就任することが発表される。
世間一般には大変な驚きをもって受け入れられたこのニュース。私たち鴨川家の人間は皆、岡田さんと井本さん(株式会社ありがとうサービス代表・FC今治前オーナー)の繋がりも知ってたし、岡田さんが今治に度々来られてたのも知ってたけど、「まさか岡田さんが今越のオーナーになるとは!しかもJリーグで優勝争いするとか!!」と心踊らせた、当時の私。
もしも父が生きていれば、どんなリアクションを見せただろうか。

自身は陸上競技の長距離選手だった父。スポーツ全般が好きで、サッカーに関しては息子2人が始めたせいか、Jリーグ誕生の影響か、あるいは元から好きだったのかどうかは知らないけど、代表戦などはよく一緒に観た。それこそジョホールバルの歓喜も、フランスW杯も、たしか一緒に観たと思う。
そして互いの意見がぶつかり合ってちょっとした熱い口論になることも、よくあったと記憶している。

父の死から一年後にリスタートし、新たな産声をあげた新生・FC今治。
岡田オーナーが当初思い描いた青写真そのままに、とはいかないかもしれない。紆余曲折もあったと思う。舞台裏では色々あっただろう。それでも、ほぼほぼ順風満帆に、ここまで歩んできたと言っていい。
あの「何もなかった」今治に、元日本代表監督がやってきて、プロサッカークラブができ、サッカー専用スタジアムができ、潰れた大丸がPV会場になり、何千もの人が集まり。
そして今、この今治に、Jリーグクラブが誕生するかもしれない。その目の前まできている。

私は父がいなくなって、寂しいとか悲しいとか、思った事は一度もない。
ただ、もし父が生きていれば、この5年の間に今治に起きた奇跡をどんなふうに感じただろうかと、本当に勿体ない事をしたなと、常々そう思うのである。

人生、生きていれば何が起こるかわからない。もちろん、いい事もあれば悪い事もある。山があれば谷もあるし、谷があるからこそ、山の頂に登った時の景色は格別なのであり。
でもそれも全て、生きていればこそ、である。
死んだら何もない。死んだら全て終わり。素晴らしい景色を見せてもらえばもらうほど、そう感じるのである。

父の死からちょうど6年後の11月。
山の頂上からの絶景を眺めることは、できるだろうか。
もしできたなら、その墓前で、なんぼでも自慢してやる。羨ましいだろ?と。

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