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私の推しの一冊『人事屋が書いた経理の本』― 管理会計の視点から経理を学ぶ


会社の経理や財務―一般の社会人や経営者にとって、これは多くの場合、専門家の領域であり、なかなか理解が難しいものです。しかし、今回紹介する『人事屋が書いた経理の本』は、その難しさを斬新な視点で解き明かす、貴重な一冊です。

この本は、協和発酵工業(現在のキリンホールディングス)の社員が、社内で展開された「マネジメント・ゲーム(MG)」の運営マニュアルとして編纂されました。そのテーマは「会社の損益計算書、貸借対照表を読み解く」ことであり、一般的な経理書としてではなく、ゲームの形をとりながら経理の基礎を楽しく学べる構成となっています。

管理会計の視点

この本の鍵となるのが「管理会計の手法」です。これは、会社の費用を変動費と固定費に分類し、売上高から変動費を引いたものを「限界利益」として、この限界利益と固定費を対比して分析していく考え方です。限界利益とは、商品やサービスを一つ増やしたときに生じる利益のことであり、これを分析することで、どの商品やサービスが企業にとって最も利益をもたらすかを理解することができます。

また、この考え方をまとめた指標が「損益分岐点比率」です。これは固定費を限界利益で割ったもので、企業が赤字から黒字に転換するために必要な売上高の目安を示します。この概念は、経営者や経理担当者が会社の財務状況を把握し、適切な意思決定を行うための重要な指標となります。

マネジメント・ゲーム(MG)を通じた実践的な学び

『人事屋が書いた経理の本』では、この管理会計の視点を理解するためのツールとして、マネジメント・ゲーム(MG)が用いられています。MGは、企業の経営状況を模擬的に体験できるゲームであり、参加者は実際の経営状況を想定しながら意思決定を行います。

この本を通じて、読者は実際の事例を通じて経理の基本を学び、損益計算書や貸借対照表の読み方、資金繰りの考え方などを身に付けることができます。そして、この本の特筆すべき点は、その普遍性です。1978年に出版されたとはいえ、その考え方は時代を超えて有効であり、経営者や経理担当者にとって、未だに価値のある知識となっています。


『人事屋が書いた経理の本』は、経理や財務といった専門的な分野に興味を持つ一般の読者や、経営者にとって、貴重な一冊と言えるでしょう。専門知識がなくても、ゲーム感覚で学べるこの本は、経営の視点を身に付けたい人々にとって、大いに役立つでしょう。経理や財務に関する専門知識がない方も、この本を通じて、楽しく学ぶことができます。是非一度手に取ってみてください。

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