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借入限度額は月商の6ヶ月分は間違い

マガジンの分類 中小企業社長のための羅針盤!成功への経営術



はじめに

「借入限度額は月商の6ヶ月分まで?」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、実際にはこのような単純なルールで借入限度額を決めるのは適切ではありません。本記事では、中小企業の経営者が陥りがちな「借入限度額は月商の6ヶ月分」という誤解について解説し、キャッシュフローに基づいて借入を判断する重要性を説明します。

借入金を決めるのに月商はまるで当てにならない!

まず、借入金の決定に月商を用いるのは誤りです。月商は損益計算書(PL)の概念であり、借入金はバランスシート(BS)の概念です。この違いを理解するために、以下の具体例を考えてみましょう。

具体例

ある会計事務所は、月商が1,000万円で、粗利益率は100%です。一方で、卸売業を営む会社は、月商1億円で、粗利益率は10%です。どちらの会社も粗利益は同じ1,000万円ですが、月商の差は大きいです。この月商に基づいて借入限度額を考えると、会計事務所は6,000万円、卸売業者は6億円の借入が可能ということになります。しかし、これでは卸売業者が不必要に大きな借入をすることになります。これは明らかにおかしいのです。

借入限度額の妥当性はキャッシュフローで判断を

借入金の額はバランスシート(BS)によって決まりますが、借入限度額が妥当かどうかを判断するには、キャッシュフローが重要です。キャッシュフローとは、会社が実際にどれだけの現金を生成し、支出しているかを示すものです。

キャッシュフローの重要性

たとえ借入金が多くても、キャッシュフローが健全であれば問題なくお金は回ります。重要なのは借金の多寡ではなく、返済額が多いか少ないかです。返済額が少なければ、フリーキャッシュフローで返済をまかなえるため、健全な経営が行えます。

借入金はBS+フリーキャッシュフローで考える

借入限度額を決定する際には、バランスシートの内容とキャッシュフローの状況を総合的に考慮する必要があります。具体的には、以下の点をチェックしましょう。

  1. バランスシートの確認:

    • 資産、負債、純資産のバランスを確認し、自己資本比率や借入金依存度を評価します。

  2. キャッシュフローの確認:

    • フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたもの)がプラスであることを確認します。

  3. 長期借入の検討:

    • 返済期間を長期に設定することで、月々の返済額を低く抑え、キャッシュフローを安定させます。

キャッシュフローが不足するなら借入を増やす

キャッシュフローが不足している場合には、追加の借入が必要となることがあります。例えば、事業拡大のための投資や、一時的な資金繰りの悪化に対応するためです。この際には、次のようなポイントに注意して借入を検討しましょう。

追加借入のポイント

  1. 資金用途の明確化:

    • 追加借入の目的を明確にし、その資金がどのように使われるかを具体的に計画します。

  2. 返済計画の策定:

    • 借入金の返済スケジュールを策定し、キャッシュフローとの整合性を確認します。

  3. 金融機関との交渉:

    • 適切な金利条件や返済条件を交渉し、企業にとって最適な借入条件を引き出します。

借入金管理の実務的なアプローチ

借入金の管理は、単に借入金額を決定するだけでなく、日常の資金管理や経営計画の一部として継続的に行うべきです。ここでは、借入金管理のための実務的なアプローチを紹介します。

定期的な見直し

借入金の状況やキャッシュフローの状態を定期的に見直し、必要に応じて計画を修正します。

資金繰り表の活用

資金繰り表を作成し、短期・中期の資金流動性を把握します。これにより、キャッシュフローの不足を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。

専門家の活用

税理士や会計士などの専門家と連携し、借入金管理や資金計画のアドバイスを受けることも重要です。

借入金の適正額はキャッシュフローから判断することの重要性

結論として、借入金の適正額は月商ではなく、キャッシュフローから判断することが重要です。月商を基準にするのは誤りであり、キャッシュフローの健全性と返済能力を考慮することが必要です。キャッシュフローが健全であれば、借入金が多くても返済は可能ですし、逆にキャッシュフローが不健全であれば、少額の借入金でも返済に苦労することになります。


借入金の適正額を決定する際には、月商の6ヶ月分という単純な基準に頼るのではなく、キャッシュフローを重視することが重要です。バランスシートの内容とキャッシュフローの状況を総合的に判断し、適切な借入金額を決定しましょう。また、キャッシュフローが不足する場合には、追加借入を検討し、資金繰りを安定させることが必要です。

本記事を通じて、借入金管理の基本を理解し、健全な資金管理を実現するためのヒントを得ていただければ幸いです。会社の財務状況をしっかりと把握し、適切な借入金管理を行うことで、事業の成長と安定を図りましょう。


この記事が、あなたの事業運営に役立つ情報となることを願っています。今後も引き続き、資金管理や経営に関する有益な情報を提供してまいりますので、お楽しみに!

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