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中古資産の耐用年数について

中古の資産を購入したときに困るのは耐用年数。

中古資産耐用年数体系図



法定耐用年数は税法で決まっているが、普通の場合はそこから使用済みの期間を差し引いた年数で決める場合が多いと思う。このような決め方を見積使用可能期間と呼ぶ。

原則は見積もりで


つまり、使用可能期間を見積もってそれを耐用年数とする方法だ。
しかしこのような方法は必ずしも正しい訳ではない。その資産の使用状況などにより、使用可能期間は変動する可能性があるからだ。

また、税務調査で中古資産の耐用年数が問題になったときは、その見積もりが正しいかどうかの証明をする必要も出てくるだろう。

わからないときは概算で


このように、証明ができないとき、又は、見積もりができないときには、簡便法といって、概算の計算方法が通達で規定されている。

法定耐用年数 - 使用期間 + 法定耐用年数×20% 
の式で求めることができる。
例えば耐用年数が30年の建物で、20年使用した中古物件を購入したときは、
30 - 20 + 30×20% =16年  というわけだ。

耐用年数をオーバーしているときは

なお、年数に1年未満の端数が生じたら切り捨てる。また、法定耐用年数を超えて使用されていた中古の物件は、法定耐用年数×20% を耐用年数とする。 この物件の場合は 30年×20% =6年 になる。

修繕費が多額になった場合は

中古資産を使用するために修繕費等の資本的な支出が多額になった場合の耐用年数だが、その中古資産の再取得価額の50%を超える支出が合った場合には、上の規定は適用できない。この場合は 法定耐用年数になる。
ここで、資本的支出という言葉がでてきたが、これに関してはまた別な記事で説明することにする。

リース資産を買い戻す場合
資金繰りを良くするため、自社の資産をリース会社に売却して、それを借りて使用するリース取引がある。これをファイナンス・リースと呼ぶが、要するに月賦で物を買っているのと同じ状態で、実質は物件を担保にしたリース会社からの借入金。このような場合で、その物件をリース会社から買い戻した場合の耐用年数はどうなるか。

そのリース物件は買い戻すまでは、自社で使用していたのであるから、中古資産の購入と同じになる。したがって耐用年数は、上記の規定が適用されることになる。

また、言うまでも無いことだが、この場合には中小企業等の機械等の特別償却は適用することはできない。特別償却は新規の機械装置等が適用される物件なので、リース会社から買い戻した中古の機械装置には、この規定は適用できないからだ。

後出しジャンケン禁止
中古で資産を購入したが、経営者が上の規定を知らなかった場合で、中古資産に法定耐用年数を適用してしまったケースも考えられる。
その経営者は、後でそのことに気がついて、使い始めた 数年後に耐用年数を、上の規定の概算の耐用年数に変更した場合はどうなるか。
誤ったのだから、その誤りを正したので OK と思いがちだが、これはアウトとだ。

上の規定はあくまでその資産を事業の用に供した年度に適用されるもので、後で変更することはできない。

このことに関しては、実際に事件があり国税不服審判所の裁決が出ているので、最後にご紹介しておこう。

まあ、簡単に一言でいうと、「そんなこと認めると、利益調整に使われる。後出しジャンケンは ダメだよ。」ということが 書かれています。 

平成25年12月17日裁決

 上記1の(3)のハ及びニのとおり、建物等の減価償却資産の耐用年数については、法定耐用年数によることを原則とし、その特則として、中古資産については、耐用年数省令第3条第1項において、中古資産を取得してこれを事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、法定耐用年数によらずに見積法等による耐用年数によることができる旨規定している。
 そして、上記1の(3)のホのとおり、耐用年数取扱通達1-5-1は、中古資産についての見積法等による耐用年数の算定は、当該中古資産を取得してこれを事業の用に供した最初の事業年度に限りすることができ、当該事業年度において算定をしなかったときは、その後の事業年度において算定することはできない旨定めているところ、見積法等は飽くまでも法定耐用年数の特則であること、そして、いつでも変更が可能であるとすると利益調整等のために納税者によって恣意的に変更される可能性があることを併せ考えると、特則である見積法等の適用を望む法人は、当該中古資産を事業の用に供した最初の事業年度において、自らその意思を表示してその適用を受けることを要し、その意思を表示しなかった場合には、原則どおり法定耐用年数が適用され、これを事後的に変更することは許されないとするのが相当であり、上記取扱いは、当審判所においても相当と認められる




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