見出し画像

200人くらいの研究集会の作り方

稀によく降ってくる、学会の運営

研究者をやっているとイベント企画が突然舞い込んでくるなんてのはよくあることです。そして大抵は断れない状態で降ってくるものです。

学会の運営は典型的な細かいタスクが積み重なる系の仕事。やること1つ1つはできるけど、何をいつやるのかなど考え始めると結構大変。

どんな学会でもやることはだいたい一緒なので困ったら経験者に聞く、が一番早いのですが、まわりにいないと結構大変。

そんなときに、これをざっくり見ると何をしなくてはいけないかが、ぼんやり見える... あたりを目指して書いてみました。ガチイベンターからするとツッコミどころが多いと思いますが。

このnoteは私がとりまとめ・ディレクターとして国際会議 RSSB をやったときの作り方をメインに据えて書いています。ガチ議論とか他のも結構混ざってるけど。あと、文にするのが大変だったので箇条書きで書いてます。


1. 会場・日程・内容を決めてもらう

・この項目は現場とりまとめ担当者やディレクターが決定できることではない
・大会長やプロデューサーが決める事項
・できるだけ早いうちにこれらを決めてもらう
  ・決まったら文字ベースでまとめて証拠残しておく
  ・ここが覆ると大変

会場
・1部屋だけの学会なら大きさのめやすは入れたい数の2倍キャパ
  ・詰め詰めは参加者にとっては快適じゃない
  ・2倍キャパだと1席おきに座るのでパッと見全部埋まってるように見えてイイ感じ

日程
・大きな学会と日程が被ってないかチェックする(分生、癌学会とか)
・大きなライブと場所が被ってないかチェックする(嵐、ももクロとか)
・少なくとも2-3ヶ月は先にする
  ・2ヶ月以上は告知できるようにしないと人が集まらない

内容
・開催目的は?
・大会長、Conference chairは誰?
・基調講演は誰呼ぶ?
・座長はどう決める?
・形式は?
  ・一般演題はある?口頭?ポスター?
  ・口頭ならシングルトラック?マルチ?
・参加費は集める?
・懇親会やる?懇親会費は集める?
・企業協賛はいくらのを何枠想定?
・企業ブースは設定する?
・その他大事にしたいことは?

この時点で、マルチトラック・複数日・ポスター発表あり・参加者300人以上、の4つが揃うなら業者に丸投げを強く推奨します。例えば2018年の分生はAE企画がやってますね。


2. 実際に準備しはじめる

【最優先】趣意書とWeb
・趣意書は協賛と後援に必要
  ・分生の趣意書(これ)とかを参考にするといい
  ・開催目的、開催概要、収支予算表、協賛メニューが載ってればOK
・WebはPDF 1ページでもOK。
  ・Webから見られることが重要
  ・Web告知から2ヶ月は参加登録期間を取りたい

支出のお金カウント
・会場費
  ・会場費、会場付きのオペレーター人件費、清掃費
・旅費交通費
  ・演者旅費、演者謝金
・広告宣伝費
  ・ポスター製作、Web製作、Webサーバー、印刷代、看板製作
・運営費
  ・コーヒーブレイク、スタッフ用弁当、当日スタッフバイト代
・懇親会費
  ・食べ物、飲み物、懇親会の会場費
・雑費
  ・文具、切手など

収入のお金カウント
・参加費
  ・学生、アカデミア、非アカデミアなどで分けることが多い?
・懇親会費
  ・参加費とは分ける
  ・一括で領収書を用意しておくとラク:領収書は当日渡しでOK
・協賛
  ・松竹梅みたいな3段階で協賛金を設定
  ・協賛してくれたところには何を返すか?を頭にいれておく

メインビジュアル
・キービジュアル・ポスターデザインを発注するなら早めに
・これがないとWebもポスターもできない
・メインビジュアルと同時にテーマカラーとフォントを決めると製作物のデザインが超ラク
  ・RSSB初回は青+Oswald、RSSB2は緑+Oswald

画像1

▲ポスターとWeb 。色とフォントを決めておくとラクしてそれっぽく見える

Webサイト
・費用計上できるならできるところに丸投げする
  ・前任者に聞く
  ・たった1回の学会用にドメイン取るまではしなくていいと思う
・私の場合は絞って外注していた。以下みたいな条件だとデザインと本文をまとめたドキュメントを作って外注が効率良い
  ・HTML/CSSをイチからは作れないけど改変はできるので公開後の修正は自分でやる。頼むのは初回だけ
  ・何をどこに配置するか決まっている
  ・テキストは全部自分で書ける
  ・ドメイン、サーバーはすでに存在している
・外注には今ならLancersを使うと思う
  ・レスポンシブ対応、スマホ対応で1ページ〜2万円くらいが相場っぽい
・Webページには必ず「年」を書く
  ・日付しか書いていなくて2018年の学会なのか2019年の学会なのかわかんない、みたいにならないように

ポスター送付
・Webの時代ではあるが郵送はまだ残ってる
  ・郵送でしかアプローチできないラボ・研究者はいっぱいいる
・送付状は趣意書の作文を使い回すとラク
・印刷送付は外注でもOK
・開催日の1ヶ月前には送付が完了していたいところ

参加登録フォーム(一般演題登録フォーム)
・Google Formで必要十分
  ・きちんと設定すれば確認メールも自動送信可能
  ・きちんと設定すれば参加者が後日変更も可能
  ・運営チーム内での共有がラク
  ・テキスト化されるのでフォーマット修正が不要
  ・登録時に決済するのができないのがネックではある
・Peatixとかの参加者管理ツールでも可
  ・QRコードのチェックインとかが可能
  ・ただ、現状では学会・研究者にはあんまり馴染まないと思ってる

事前決済
・Paypalアカウントなどを用意できると最高
・参加費が事前決済できると心理負担はだいぶ減る
・もちろん全て当日決済でもOK

招待講演演者対応
・お願いメールをする
  ・日程と相手の名前だけは送信前にもう一度チェックする
・旅費と謝金をどうするのかを依頼時点で話しておく
  ・大学教員相手の場合、旅費謝金は兼業扱いなので手続きをどうするかも聞く
・メールが埋もれるのを防ぐためにアシスタントの連絡先を手に入れておく
  ・「Ccに入れておくべきアシスタントの方などがおりましたらご教示お願いします」
・私の場合は演題だけ聞く。要旨は求めない。
  ・どうせ中身変わる
  ・どうせ参加者は読まない
  ・書くのも面倒


3. 当日使うものを準備する

メイン以外の会場準備
・外部スタッフ控え室
  ・外部のスタッフを手配した場合には用意してあげたほうが親切
  ・会場付きの機材スタッフは機材部屋に籠ることが多いけど
・演者控え室
  ・なくてもOKだがあると便利
・スタッフ控え室
  ・最終的には荷物置き場になる
・鍵のかかる貴重品管理部屋
  ・用意せずに各人管理でももちろんOK

WiFiと電源
・電源が取れる机を作っておく
  ・会場前方に電源タップ席を作ると前の席が埋まる
・会場備え付けのWiFiがあればアクセス方法を聞いておく
  ・本気でネット使いたい人はテザリングなりするので最悪の最悪はなくてもOK

会場機材
・指定の機材係がいれば従った方がいい
  ・具体的な指示ができないのであれば全部任せる
  ・前の日にテクリハができると双方良い
  ・音響照明に1人、プロジェクターまわりに1人いると安心
・プロジェクター
  ・入力についてひととおりチェックしておく
    ・HDMIなのかVGAなのか
    ・それぞれ何チャンネルあるのか
    ・切替器はあるか
  ・音ありムービーがあるときは音声入力もチェックする
    ・HDMIで一括出力なのか、3.5mmピンで出すのかなど
・マイク
  ・有線と無線がそれぞれどれくらいあるかを把握しておく
  ・無線がふんだんにあるなら無線

受付
・受付30分、参加者200人で3人体制がめやす
  ・開演後は1人いればOK
・ネームカードは印刷が面倒だったらその場で書いて貰えばいい
  ・面倒ってか限りなく当日に近い日でしか印刷できないからね...
・参加費を集める場合はお金を扱う人は1人に絞る

クローク
・面倒であれば作らなくていい
・会場にロッカーなどがあればそこを使ってもらう

写真係
・当日のスナップ写真をとる係を1人配置する
・資料用なので引き(全体像)の写真を多めに撮る
  ・特に一眼を持っているアマチュアにはきちんと指示するのを忘れない
  ・引きで撮るように言わないと寄りの写真しかなくて資料としての意味をもたなくなる、ことが多い

印刷系製作物
・A1/A2ポスター、A4チラシ、当日参加登録用の紙、会場周辺ランチマップ、参加証、看板(ロールバナーがラク)、会場に貼る「受付」「立入禁止」のような案内標識
・枚数の多い印刷はラクスルなどのネット印刷が安いし便利
  ・相場をみておくといい


4. 終わったあとにすること

お礼状を書く
・協賛、後援をもらったところに送る
・趣意書に当日の参加人数と盛会で終わった旨を書けば最低限はOK
  ・きちんと書くと来年以降にきちんと続く
  ・できるだけ早く送るのが大事だと思ってる

Webサイトに終わった旨を書く
・書き忘れると過去の学会への参加登録お伺いメールが続々と届く


5. 超細かいマニアックなTips

招待演者チェック
・招待演者の候補リストができたら、声をかける前にとりあえずググって変なことが出ないかを確認する
・PubPeerあたりも眺めておく。一応ね

開演前音楽
・フリー音源のCD買うか会場にあるのを使うかでいい
・何かかかっていることが大事なので選曲はどうでもいい
・が、何かにちなんだ選曲だと分かる人にはわかって楽しい
・フリー以外の素材を使うときはJASRACの登録をお忘れなく

開演前スライド
・1枚絵だけでもいいから常時出しておくと会場の雰囲気が作れる
・協賛をしてくれたところへのお礼のひとつであることも
  ・協賛関係者がこれを写真撮って社内に報告したりしているらしい
・WiFiのパスワードなんかもここで告知

画像2

▲下の部分がぐるぐる入れ替わる。東大先端研は共催でした

幕間スライド
・セッションの間やトークの間の画面
  ・開演前スライドを使いまわしてもOK
・座長が演者紹介しやすくするため
・PCの繋ぎ変えを見せないため
・演者が質問に答えるスライドを探す時に、不必要な画面をスクリーン上に出さないようにするためでもある
  ・変な画像出たりメール見えたりすると嫌だし

画像3

▲演者紹介中。裏ではPCの繋ぎ変え中。出力を確認してから映す

開演時間
・5分押して始まる前提でプログラム作る
・受付は開演前が一番混むので捌ききれないことが多い
・ただし、5分押し前提であることは当日まで誰にも喋ってはいけない。バレると意味がなくなる

開演時演出
・音楽が消えると人間は黙る
  ・静かにしてくださいとか言うよりこれが一番効く
・音楽フェードアウト→会場照明落とす→演台にピンスポット落とす→Chairがそこに向かって移動してそのままOpening Remarks始める、の流れでやることが多い
  ・テクリハで機材担当にお願いしておく

テクリハ
・会場機材担当との打ち合わせ、初顔合わせになることが多い
・少なくとも前日にはできるといい
  ・テクリハで機材が足りないのがわかって買いに走ったことがある
    ・直前に買った経験があるもの(以降イベント時は常時携帯)
      ・VGA メス-メス コネクタ
      ・HDMI メス-メス コネクタ
      ・3.5mm メス-メス ステレオコネクタ
      ・分配/分岐 両用マルチイヤホンスプリッター
・照明の状態としてありうるものをデモしておく
  ・講演中は会場 30%、舞台上 50%、演台上スポットライト 90%
  ・質疑応答は会場 100%、舞台上 100%、演台上スポットライト 0%
   みたいなメモをするはずなので一通り状況をデモしておく
・音声が必要なところを伝えておく
  ・「XXさんのプレゼンのOOの部分でPCから音ありのムービー流れるので音量良きようにしてください」
・マイクがかち合ったときにどっちを優先するか、を伝えておく
  ・「何よりも座長席優先、かち合ったらフロアのマイクは切って良い」と言うことが多い

PC3台体制
・Ch1: 演台のPC
・Ch2: 裏方PC1 - ロゴやプログラムを提示
・Ch3: 裏方PC2 - 裏方PC1のバックアップ
  ・裏方PC1/2は壁紙を黒一色しておく
  ・Windows update, Macの自動更新は切っておく
  ・WiFiを切るくらいでもいい
・オペレーション例1
  ・Ch2でスクリーンに開演前スライド流す。その間Ch3のPCで開演前音楽を流す。
・オペレーション例2
  ・講演中はCh1がスクリーンに流れる。その間はCh2で当たり障りのないロゴがすぐに出るようにしておく。万一の際にすぐ切り替えできるように。
・オペレーション例3
  ・講演中はCh1がスクリーンに流れる。その間にCh2のPCのスライドを必要があれば書き換える。講演後に会場内に伝えたいことなど。その間はCh3で当たり障りのないロゴがすぐに出るようにしておく。

PC切り替えはHDMI推奨
・キレイに切り替わる
  ・VGAの切り替えみたいな青い画面が出ない
・HDMI切替機がある会場は最高

演台上の時計
・演台の上には必ず時計を置く
・できればデジタルとアナログの両方があるといい
  ・アナログは面積が減っていく感覚がわかりやすいという人がいる
・私はホテルの目覚まし時計を借りて置いたことがあります
・ついでにペットボトルの水を置くと親切

効果音(SE)
・あんまりやりすぎるとマジメ感が薄れるので学会本編で使うのはオススメしない
・懇親会でクイズとかするならぜひに。あるのとないのとで全然違う

【超重要】スタッフ用お弁当
・必ず用意する
  ・特に機材スタッフ向け
  ・用意した旨を前日には伝える
・2000円くらいのを用意すると注文の2-3歩先まで良きようにやってもらえることが多い
  ・逆の立場でもそうだよね
  ・大人は食べ物で動くよ!!想像以上に!!

司会台本・構成台本
・司会に喋らせる場合は必須
・基本一字一句書く
  ・その上でどう読むかを司会に任せる、とイイ感じでアドリブが入ってうまく回ることが多い
・時刻・セリフ・画面の状態・音響・照明が1つにまとまってるといい
  ・これをもちながらテクリハやランスルーをすることが多い

キービジュアル発注
・サイエンスイラストを良きように描いてくれる人はほとんどいない
  ・サイエンスの現場を知らない=コミュニケーションコスト高い=工数増える=高くなる
・私は困ったらウチダヒロコさんに頼むことが多い
  ・他にもこの人に頼みたい、を日々ストックしておく
  ・私はSNSで自分好みのイラストを描く人をチェックしてる
・発注時にはレンポジ加工かイラストレーションかを確認しよう

次の年の労力を減らす工夫
・ラクをするための仕様をあらかじめしておくと次の年のスタッフ or 自分が助かる
・RSSBの場合はこんな感じ
  ・キービジュアルの色相を変えれば次の年も使えるようにした
  ・ポスターの配置を使いまわせるようにした
  ・Webのソースを使いまわせるようにした

画像4

▲デザインを一切考えずに文字を打ちかえるだけ。ラクチン。

コーヒーブレイクの準備
・コーヒーはケータリング会社に発注しておく
  ・会場の人に聞くと発注先を教えてくれる
・お菓子は山盛りだと楽しい

画像5

▲ただお菓子がたくさんあるだけでワクワクできる

イベント会社に丸投げすると
・以下の条件でイベント会社に丸投げすると280万程度の見積もりになる
  ・1日開催東京
  ・シングルトラック
  ・WebはTOP+下層8ページ
  ・招待講演10件弱のみ、一般演題なし
  ・事前参加登録あり、参加費・懇親会費は当日徴収
  ・印刷物
    ・ポスター A1 4c/0c x200枚
    ・チラシ  A4 4c/1c x1000枚
    ・参加証  3c/0c x300枚
    ・抄録集  なし
  ・プロジェクター、マイクなどのレンタルなし(会場にあり)
  ・企業展示なし
・見積もりに入っていないもの
  ・会場費
  ・演者旅費、謝金
  ・ポスターなどの送付料
  ・懇親会の食べ物代

イベント会社にお願いする予算はないけど謝金くらいは出せるよ、という方はご連絡いただければ相談、コンサルなどのりますのでどうぞ。

という告知記事なのでした。おしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?