マリンバ奏者にとって


安倍圭子氏から祭りマレットの製作を依頼されている期間中、
よく言われていた事がありました。
「平野くんこのマレット必要ないよ」
「そのマレット、本当に必要?」
などという方がごく一部だけいらっしゃいまして、
自分の中でも一瞬、
「このマレットは必要とされるのだろうか」
という事を真剣に考えた事がありました。
そんな中、2018年にアメリカのLHSセミナーの参加のため渡米した際、
こんな出来事がありました。
LHSセミナーの会場はフランシスという老人ホーム内にある教会でセミナー会場として使用されてました。
最終日はその施設内にいらっしゃる
おじいちゃんおばあちゃんに
演奏を聞かせる機会があり、平野も演奏することに。
日本人が一人しか参加しなかった事もあり、
邦人曲が良いだろうと唯一セミナーに持って行った
村松崇継氏作曲のランドという曲があったのでその曲を演奏しました。
演奏終了後、衣装を普段着で着ていた甚平で演奏したおかげもあり、
おばあちゃんに
「わたし、日本に住んでいた事があるのよ」
とか
「日本はどういう国なの?行ったことがないの」
などと色々と話しかけていただき
日本に興味を持っていただけたことをとても光栄に思った事を覚えています。
翌年、再びLHSセミナーに参加し、
演奏したいと思った曲は祭りの太鼓でした。
https://youtu.be/I9D59XCZSJw
もちろん邦人曲はこれ以外に素晴らしい曲はありますが、
音楽を聴いたことがない人でも
祭を経験した人や和太鼓を知っている人には親しみやすい曲だと思いました。
和太鼓の雄大さや迫力、
中間部、祭りから家に帰るときの寂しさを感じられる部分、などなどなど、
色々な祭りのイメージが曲中に出てきます。
マリンバを聞いたことがない人でも
祭りというイメージは万国共通にあって国によって様々。
でも「日本の祭りはこんな感じですよ」と
普段、マリンバ奏者から一方通行に近い形で、マリンバのオリジナル曲をお客様に提供していることが、
「お祭り」
という日本人では誰でも知っているイメージのこの曲を演奏することで
マリンバ奏者とお客様が同じ価値観で共感できるマリンバのオリジナル曲だと思いました。
フランシスのおじいちゃんおばあちゃんにも聞かせたいと思いました。
結果的にこの曲は海外のお客様でも日本のお客様でも
日本人マリンバ奏者が曲はお客様と曲をシェア(共感)できる曲になる。
僕にとっても祭りマレットは必要なマレットだと
ハッキリと確認が出来ました。
それでも祭りマレットがいらない。
「どうせ平野はマレットを売りたいだけなんでしょう?」
という方もいると思います。
でもこう考えて欲しい。
お客様にもマリンバを通じてマリンバを楽しめる曲がまた一つ作曲された。
祭りマレットは自分の演奏の可能性を広げ、お客様をより楽しませるためのマレットなのです。
いろんな考えがあるわけで曲とマレットについて賛否両論あると思いますが、
今思うことは、弾きたい曲の為のマレットがないことはとても悲しいことで、
それが今、ようやく購入できるということです。
どちらにしてもマリンバ奏者にとって新しい可能性が生まれた事にとても喜ばしく、
マレット作る許可を安倍圭子氏より
平野が選ばれたという事の責任と同時に
たいへん光栄であることに変わりありません。
普段毛糸しか巻いてない平野が
天才技術者、鈴木しげお氏が安倍圭子のためだけに作ったマレットを読み解き、毛糸以外の材料を用い、
職人様、業者様の協力をいただき作ったマレットを
これから製作し世に出します。
 

実は制作中のお話とかもありまして、その話はまた後日。

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