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刑法で得点するために気をつけたいこと

1刑法の得点ポイント

(1)体系に沿った論述

刑法は、構成要件ごとに定義を示して、それに対応する事実をあてはめて、要件充足性を認定します。

·例えば、窃盗であれば、「他人の財物」「窃取」という客観的構成要件と、故意·不法領得の意思という主観的構成要件です。

そして、体系に沿った論述をします。

客観的構成要件→主観的構成要件→違法性阻却事由(ある場合のみで良い)→責任阻却事由という順序で論じます。

この体系に沿わない論述をすると、点数が伸び悩みます。

(2)三段論法について

各要件を認定するにあたって、三段論法するか、簡易型三段論法とするかは、当該要件が論点化するか否かなどによります。あまり問題にならない要件であれば、しっかり三段論法にする実益は乏しいです。

この判断基準は、問題文の事実の分量によります。

事実が乏しいものであれば、出題者は、その要件はおよそ認められるので詳細な検討を求めていません。代わりに、事実の多い要件について詳細な検討を要求しています。

Oしっかり三段論法の例

「窃取」とは、他人の占有する財物を占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転させることをいう。本件では、··(財物)は、Vの占有する財物であり、Vは、施錠をした金庫にこれを保管していたのに、甲が金庫をこじ開けて持ち去った。

Vは金庫に保管することで金庫内の物を厳重に管理していたのだから、これを持ち去ることは、Vの意思に反するといえる。

よって、他人の占有する財物を占有者の意思に反して自己の占有に移転するといえ、「窃取」に当たる。

簡易型三段論法

本件では、··(財物)はVの占有する財物であり、Vは、施錠をした金庫にこれを保管していたのに、甲がこれをこじ開けて持ち去ることはVの意思に反して自己の占有に移転させたといえ「窃取」に当たる。

*このように、事実と定義を混ぜて一気に認定してしまうものです。

採点実感を見る限り、一応、ここまでは許容されるようです。

(3)得点となる事項

得点となるのは、定義と、問題文の事実の引用、その評価、要件充足しているか、要件を網羅できているか、主観的構成要件まで認定しているか、体系に沿っているか、各要件認定するにあたって論点化する部分に触れて、その論点にいついて反対事実にも触れつつ自説を説得的に論じているか、結論は正しいか等にあります。

また、論点(いわゆる論証部分)については、問題文の事実との関係で、出てくるものなのですが、結論が分岐する要素なので、簡単で良いのですが覚える必要があります。

何度も言いますが、得点の大小については、問題文の事実量によって左右されます。

肯定·否定いずれの結論にもなりうる論点である場合には、反対事実も肯定事実もたくさん挙がっています。ですので反対事実を必ず批判し、その上で自分の結論の正しさを論証する必要があります。
ここに非常に大きな得点があります。

なお、論証の理由付け等は基木的には削ぎ落してしまって構いません。

理由付けで結論が左右される事例はあまり考えられないからです。

2気を付けること

(1)犯罪の検討をひとつも落とさないこと。

このためには、犯罪となりうる行為を必ず抽出することです。行為を抽出できないと、犯罪の検討を一つを丸っと落とすことになり、その犯罪の検討が一切できないので、その犯罪検討にかかる得点を全て落とします。

ですので、犯罪の検討をひとつも落とさないことに細心の注意を払いましょう。

(2)検討除外されている犯罪のチェック

設問において、住居侵入や、その他犯罪について検討除外されている場合があります。

必ずチェックしましょう。そうしないと時間不足·紙幅不足に陥ります。

(3)論点落とし

大きい論点は、問題文の事実が大量に挙がっています。

小さい論点は、事実がほとんどないか、無いです。このような論点は、一行書くか、最悪落としても構いません。

(4)事実の少ない犯罪

事実の少ない犯罪については、要件の文言に事実だけあてはめ認定すれば足ります。

例:甲はVの「死体」を切り刻んで「損壊」した上、故意もあるから死体損壊罪に当たる。

3学習の進め方·実戦においてどうするか

とにかく、予備試験の過去問や司法試験の過去問(こっちは可能ならでよい)で学習しましよう。

過去問では、設問から読み、事実を読みます。

事実の中で、まず、どの行為が犯罪になるのかチェックします。

そして、その犯罪の構成要件をリストアップします。

その中で、問題を読み進めて、論点化しそうな部分があれば、論点名等を記載しておきます。

また、問題文の事実は、どの構成要件や、論点との関係で引用するのかわかるようチェックしておきます。

このようなかたちで進めていき、答案化の準備をします。

基本的には、ここまでできたら、あとは脳内答案構成でよいと思いますが、実際に答案起案したい方はしてみても良いと思います。

なお脳内答案構成の場合には、実際に答案を作成するのと同等の文章表現ができるかチェックしましょう。

4A答案をとるにはどうすればよいのか

·犯罪となる行為を全て指摘する。

·構成要件の定義を正しく示し、最低限簡易型三段論法で論じるようにする。

·問題文の事実量が多い要件については、反対事実にも触れながら自説を説得的に論じる。

·論点については、理由付けは端的にしてもよいが、反対事実にも触れながら自説を説得的に論じる。

·体系に沿った論述をする。

·絶対に犯罪落としをしない。

·故意や不法領得の意思がおよそ問題にならないような窃盗事例や1項詐欺事例等であっても、必ず認定する(1点あるようです。)

·故意犯が成立しない(責任故意阻却も含めて)場合には過失犯が成立しうることがあります。違法性阻却事由の錯誤では、故意犯が否定されても、別途、その錯誤について過失があると

過失犯が成立します。こういう点は問題に事実が挙がっているので必ず認定する。(R2予備)

·罪数を正しく検討する。

·既遂と未遂の区別がある犯罪は、既遂·未遂まで認定した上、未遂であればその条文も指摘する。

論理矛盾に気をつける。

…他にもいろいろありますが、それはケースごとに説明しないと分からないことなので、割愛します。

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