We did it our way
『スワロウテイル』1996年日本
沖縄本島のど真ん中に位置する沖縄市、通称コザに生まれ育ち19歳で上京。吉祥寺の映画館でこのシーンを見た時、映画はもちろん初見なんだけど、すごく懐かしくなったんだよね。
沖縄市はアジア最大の米軍基地、嘉手納基地と隣接する「基地の街」。俺が少年時代〜10代を過ごした1980年〜90年代はまだ本土復帰前の米軍統治下時代の街並みが色濃く残っていた。当然、遊び友達にも若い米兵や、将校クラスの軍人の子供たち(米軍属)の奴らがたくさんいた。
映画に描かれているような無国籍で無秩序な世界が局地的に存在していた時代なんだよね。
日本人の俺もカッコつけて英語を使うんだけど無茶苦茶な発音のせいか(そうだよ!)、日本語ペラペラのウチナァ外人に逆に日本語で聞き返され、それでもこっちは英語でごり押しして、結果なぜかちゃんと会話が成立する。それが沖縄コザの高校生の俺たちの溜まり場だったロックカフェでの日常。
きったない倉庫、タバコと埃の入り混じった匂い。こぼれたビールでべたつくフロア、楽譜なんて全く読めない奴らのノリだけでの演奏。
もしかしたら岩井俊二、当時、あのロックカフェにいて全部見てたんじゃねー?のって思うくらいだった。それほどこの映画は80年代〜90年代の混沌としたコザの街そのままだった。まあ基地のある町で育った人間は多かれ少なかれそう感じるとおもうけどさ。
だってさ、この映画、偽札作って自販機で換金して、って話でしょ。
90年代のコザではハンマーで潰された米5¢硬貨が自動販売機で大量に見つかる時代。100円玉とほぼ同じ重さの米5¢をハンマーで叩き潰す。薄さや直径を100円玉とほぼ同じ大きさにしてジュースの自販機に入れて返却レバー押すと100円玉が出てきて約95円のあがり。10回やるとその日の飲み代が出来るんだよ。
白人、黒人、フィリピン人、中国人とそして沖縄のクソガキ。みんなでガツンガツンやるんだよ。
もう、みんないなくなっちゃったけどね。
映画の話ね。
塚本晋也や大友克洋が切り開いた日本独特の世界観の完成形にして90年代邦画の最高傑作。「リリーシュシュ」も良いけど岩井俊二はやっぱりこれだと思う。
刹那的で退廃的で破滅的で。
終盤、夜明けの空に釣り上げられるパネル。あのシーン。それを見上げる三上博史の表情。
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