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「Smile」と、あのラストシーン

ベタなんだけど、チャップリンの映画で一番好きなのは「ModernTimes」。娘・6歳は黄金狂時代と悩んで「サーカス」が一番好きだと。ん、わからんでもない。

でも、やっぱ俺は「ModernTimes」だなぁ。近代社会の〜人間機械化の〜というメッセージ性は特に関係なくて、むしろメッセージ性とかストーリー性だと街の灯でも独裁者でもいいんだけど、「ModernTimes」ってワンシーンワンシーンが愛おしいっていうか。工場ラインの歯車もそうだし、デパートもそう。でも一番はやっぱカフェのシーンなんだよね。楽屋から出ていく瞬間から、もう笑いが止まらん。チャップリン、大好きや。

あと、あの「Smile」がこの「ModernTimes」の挿入歌ってこと、それがチャップリンの作曲だってことを知った時は衝撃だった。改めてすげーなチャップリン!って。

で、この「ModernTimes」なんだけどさ。有名な話なんだけどラストシーンにトリックがある。

ラストシーン。希望をもって歩き出す二人を正面から捉えたショットは影が前に落ちているのに、後ろ姿に切り替わった途端、影は後ろに落ちている。それは長い長い道を朝から夕暮れまで歩き続けても約束の地へたどり着けないことを意味していて、そしてなおも目の前に広がるのは荒野と猛々しい山のみ。果てのない旅。これが我々が生きる現代「ModernTimes」なのだ。

って言う。

当初、編集ミスとも言われたし、偶然だという人もいたけど、資料調べたらワザワザ前面のショットと背面のショット、ロケの時間も場所も変えているんだよ、チャップリン。前面ショットと背面ショット、同じ場所じゃないんだよね、あのたかだか30秒のシーンの為に。チャップリン自身がラストシーンの意味に言及したかは知らないけど、きっとそうだよね。

映像だけならそこまでなんだけど。

そこにチャップリンはあの「Smile」を被せてきた。

あのシーンだからこそ、あのメロディーがあれ程美しく哀しく響くんだろうなぁ。

「果てのない旅」で締めくくるのではなく、「果てのない旅、だからこそ微笑むんだ」って。

社会を批判するよりも、自分の境遇を嘆くよりも、まず笑顔だよ、って。

チャールズ・チャップリンが言いたかったことはそう言うことだったんだと、妙に心にしみる、奥さん・35歳と喧嘩した夜。

#映画にまつわる思い出

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