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“パンパンガール”を語る「金ちゃんの紙芝居」3~【盗まれた風呂桶】その1  

『今から78年前、戦争に負けた日本。全国各地に置かれた米軍基地。
その周辺には兵隊相手に体を売る街娼(=パンパン)が大勢、集まった。
埼玉・朝霞もその一つ。人口12000の街に3000人もが押し寄せたという。

大半は住む家もなく、寺や神社の縁の下、農家の物置などに、無断で居座った。そして、追い出されると他へ行く。
そういった宿無しのパンパンは、「乞食パン助」とか「乞食パンパン」と呼ばれた。

“乞食パン助” 風呂はどうしていた?

━━ そういう「乞食パン助」と呼ばれた女性たちは、風呂はどうしていたんですか?


金ちゃん) 夏場は、川や近くの「広沢の池」で、水を浴びるんです。

これは「広沢池」で、水浴びをしているところ。
黄色く光っているのはホタル。そして犬が2匹。

画面左上に注目されたい。兵隊とパンパンが抱き合っている。

金ちゃん)池の裏は雑木林ですから、ここで、お客を取った、夜ね。
ホタルは、いっぱいいました。

━━ 犬もいますね。

金ちゃん)犬はね、本当にどこにもいたんですよ。野良犬です。うん、犬は本当にいました、いっぱい…。

夜、ホタルの明かりに照らされながらのMAKE LOVE、と言えばロマンチックに聞こえるが、当時、男も女も、そんなことは感じていなかったと思う。
何て言うんだろう、剥き出しの欲望をぶつけあうだけだったというか…。

犬については衝撃的なエピソードを、金ちゃんから伺っている。それもまたいずれ…。

インタビュー中、金ちゃんの言葉で、なるほどと思ったことがある。

匂いは絵では描けない

金ちゃん) 絵では、なかなかうまく描けないんだけどね、本当は、もっと汚いんですよ。

━━ ああ~。

金ちゃん) みんな…。

━━ 匂いとかも?

金ちゃん) もちろん、そうですよ。

━━ それじゃ、客はつかないですよね、臭かったら。

金ちゃん) つかない。だから、余計、悪循環ですよね。

━━ なるほどね。

金ちゃん) でも、兵隊たちは良い匂いしてるんだ。オーデコロンか何かにしても。とにかく、いい匂いでね(笑)。

戦後、メディアの、特に視覚や聴覚をめぐる技術は、驚くほど進化した。
しかし臭覚、つまり「匂い」はどうだろう? 
テレビは、未だに匂いを伝えることは出来ない。

でも、匂いほど、強烈な感覚はない。
何かの匂いを嗅いだだけで、大昔であっても当時の記憶が、瞬間、ぱっと蘇ってきたというのは、誰もが経験あるのではないか?

終戦直後を語るのに、匂いは欠かせない。が、それを言葉にするのは難しい。そのもどかしさを、この後も、金ちゃんは度々、口にした。

【次号予告】
夏場は池の水で我慢できても、冬はそれでは凍えてしまう。
パンパンと呼ばれた女性たちは、驚きの行動に出た…。

※ お断り
このシリーズには、人権やジェンダーの観点から言って、今日においては使うべきでない言葉などが、時に登場します。
しかし、当時、人々がどんな生活を送っていて、日々、何を思っていたかを知るためには、そうした言葉などは、ある意味、貴重な資料であり、記録しておく必要があると考えています。
ご理解・ご賢察を賜れれば幸いです。


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