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電車が遅れて、雨が止む

家路に着こうと駅のホームに上がると、電車の遅延を知らせる案内が流れた。恐らく、この遅延のせいで乗り換えを予定していた電車に乗る事は出来なくなり、帰宅時間は大幅に遅れる事となるのだろう。少し憂鬱な思いがした。

列車内でうとうとしていると、いきなり「バラバラバラッ」と大きな音がしたので驚いて窓の外見見てみる。すると、もの凄い勢いで大粒の雨が電車にぶつかっていた。早速スマートフォンを取り出して天気予報を見る。
どうやらこの雨は当分のあいだ止みそうにない。

「今日は雨が降るのか。困ったな……。」
手荷物は雨に濡らしたくない物なのでどうしたものかと考えあぐねる。

長めの乗車時間を終え、漸く自宅の最寄り駅に着いた。改札を抜けて駅を出ると強く湿った重たい空気に雨土の匂いが立ち込める。

でも雨は降っていない。

あの遅延がなかったらきっとこの出口で立ち尽くしていたのだろう。こんなに湿った所で雨が止むのを待つのは中々に不快な時間となったに違いない。この巡り合わせに少しの感謝を覚えた後、こう思った。

「自分は小さな人間だなあ」と。

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