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43回目の誕生日は「夜の風」

「夜の風」開催

2023年7月9日、
渋谷ホールで「emotional atmosphere 夜の風」というイベントを開催しました。
この日は僕の誕生日でもあり、それに関連した内容の脚本を作り臨んだイベントでした。

まず、ご来場くださったみなさん、ありがとうございました。
本当は「もっとみんなに楽しんでもらいたかったのに、望んでいたクオリティを達成出来なかった事がとても申し訳ない。」と謝りたい気持ちがとても強いのだけれど、それについてはいずれ場を改めて纏める事にして、ここでは純粋なお礼の気持ちと共にこのイベントを振り返ってみようと思います。

結構頑張って作ったフライヤー

企画の走り出し

この企画は、去年の9月ごろから約10ヶ月の準備期間を経て開催しました。
2022年9月に開催した 雰囲気シリーズ第2弾「心の花は夜ひらく」の直後に着想して、早速、会場の予約を取った事を思い出します。
誕生日当日が日曜日で、更に、運良く渋谷ホールがその日空いていた事もあり、いつか挑戦してみたいと思っていた憧れの曲「夜の風」の題辞として掲げられた詩と、「誕生日を機にこれからの生き方を考え直す」というテーマを絡めてプログラム・脚本を作ろうと試みました。

今回の「夜の風」を含めて3回の開催をしてきた雰囲気シリーズですが、毎回、脚本は勢いで書き上げてしまうので、あまり苦労した覚えがありません。
(第一、二回のものは引用部分も多いのですが…。)
いつも苦労するのは演奏部分。毎回、本番を終える度に「なんで僕はこんなにも上達しないのだろう。」と打ちのめされます。
もしも自分の演奏を少しでも自分で認められるものに出来たなら、新しい企画への意欲もイベント当日の会場の雰囲気も溌溂としたものになるだろうし、アイディアもより豊かに湧いて来るのだろうと感じます。
そうする事が出来れば「会場に足を運んでくれた皆に、より多くの感情の呼び水やワクワクした興奮をお届けする事が出来るのに。」といつも悔しい思いでいます。

脚本の表紙。
今回は1からマルっと脚本を書きました。


さて、毎回学習能力もなく身の程を見誤った企画を自身に課してしまう僕なのですが、(自己評価は毎回修正しているつもりなのだけれど、まだまだ過大評価が過ぎる様で反省してます。)今回も演奏パートの準備には大変難儀しました。

一番苦戦したのは、やはり、イベントタイトルにもなっているメトネルのピアノソナタ「夜の風」でした。1楽章構成の作品で、通して演奏すると40分弱の時間を要する長く複雑な曲です。45ページもの楽譜に書かれた内容は演奏難度のとても高いものばかりで、弾き始めてから半年くらいの間は「どれだけ頑張っても最後まで辿り着けないんじゃないか。」と暗澹たる思いでいました。
色々と工夫して練習しても中々弾ける様にならない箇所を、ひたすらの反復練習で漸くなんとか形にして先に進むと、直ぐにまた違う難所にぶち当たる。
この繰り返しには本当に心が折れそうでした。
課題や反省が山積みとは言え、この曲をなんとか演奏する事が出来た事はとても感慨深いです。

当日リハーサル

開催日が近づくに連れ不安と緊張がどんどん増していって、直前の2週間は全く生きた心地がしませんでした。
鍵盤に触れていない時間は不安で仕方がなく、頭が必死にあれこれ考えようとしても身体の感覚がフワフワとしていてどこか現実感に欠ける感じでした。

きっと2人とも緊張していたのだろうけれど、
それでも楽しんでる様に見えて僕も少し落ち着きました。


そんな中で迎えた開催当日。
大荷物を抱えて会場に到着、早速準備に取り掛かります。

会場の設備が想定していたものと違っていたり、思いの外設営に手間取ったりとバタバタしてしまい、リハーサルの時間が予定よりかなり少なくなってしまいました。準備が後ろ倒しになり雪崩れ込む様に開演時間を迎えてしまった為、気持ちを落ち着かせて本番モードに切り替える余裕を持てなかったのは大きな反省です。
少し大きめのイベントを次回やる時は、ちゃんとスタッフを用意して準備をスムーズに、又、僕を含めた演者が落ち着いて本番に臨める様にしようと思います。

開場〜開演

当日お会いした皆さん、
とってもありがとうございました!


今回は入場料を高く設定していたのに多くの方々にご来場頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。
今回の料金設定は僕の主催するイベントでは初めての金額です。
「自分にはそんな価値がない。」と卑屈にならず、「この金額に見合ったイベントを作りたい。逃げ道を塞いで自分をそこに到達させよう。」と、自身を鼓舞する目的で設定しました。(自己評価としてはそれを達成する事が出来なかったのですが…。)

僕の催事に貴重な時間を割いてくれただけでなく、皆さんには入場料まで頂戴して、大きな感謝と「申し訳ない」という強い後ろめたさが僕の中で渦巻いています。
開演前や終演後に皆さんから頂いた、あまりにも優しい言葉の数々を胸に強く刻み、次回には必ず、必ずもっと成長した姿を披露し、素敵な音楽空間をお届け出来るように励みます。

本当に本当にありがとうございました。

本番前の1週間、練習しすぎて痛めた腕を
マッサージのプロでもある麗さんがほぐしてくれました。


いよいよ開演。

僕はとても本番に弱く、舞台の上ではあまりの緊張にパニックの様な状態になってしまいます。
今回はその症状が特に酷く、暗譜している筈の音楽がさっぱり分からなくなったり、何処の鍵盤がどの音を出すのかもよく分からなくなる始末でした。
鍵盤の前に座った僕は、背後に立つ悪意に溢れたもう1人の自分から絶えず暴力的な言葉を浴びせられて狼狽し、萎縮しきっていました。
ほとんどの演目は、前後も分からなくなるほどに混乱した中、反復練習で身体が覚えた指の動きに任せて辛うじてこなした、という感じでした。
最後の「夜の風」だけは少し楽な状態で演奏出来た様な気がします。

平田さんのクラリネット、
麗さんの朗読、演技はとても素敵でした。


全ての演奏を終えて終幕した時には、全身が痺れ始めて意識が朦朧としてきて、立っているのがやっとでした。
おそらく貧血の症状だろうとは思ったのですが、くも膜下出血で救急搬送された時の初期症状に似たところがあり少し不安でした。この時一緒にいた皆さんにはご心配をおかけしましたね。すみません。
糖分や水分を補給し、休憩して回復しましたが、この日は一日中ぼーっとしてました。

本当はもっとみなさんにご挨拶出来る様、長めに会場を抑えていたのですが、ほとんどお話出来なかったのが残念です。

終演挨拶でひょっこり出てきちゃった
スタッフの小竹さん


打ち上げはお誕生日会?

終演後は語り手役の麗さん、スタッフとして手伝ってくれた小竹さん、神戸から応援に駆けつけてくれた友人、退院後初の舞台「星めぐり」でお世話になった振り付け師さんと軽い打ち上げ兼お食事会でした。

振り付け師さんの知り合いのアメリカブロードウェイミュージカルの舞台に立つ日本人ダンサーの話や、音楽の話、人間関係の話など、内容の濃い時間でした。

神戸の友人がケーキを焼いてきてくれたり、麗さんが内緒でケーキを用意してくれたりで「みんなに気を使わせちゃったな」と恐縮してますが、でも素直に嬉しいです。ありがとうございました。
この日はたくさんケーキ食べました。笑

こんな風にお祝いして貰ったのがあまりにも久しぶりで、
どんな顔をしていいのか分からなかった私です。


ホッとした気持ちと悔しい気持ち、感謝の念と後ろめたさ、自信喪失と負けん気、本番から1週間くらいは胸の中がぐちゃぐちゃで、精神的にもフワフワしてました。でも漸くそれも落ち着いてきて、改めて自分を見直し、次に向かって歩みを進めようと思います。

とにかく今必要なのは演奏力。
これさえ有れば僕はもっと前のめりに進む事が出来る。

「いつか、安らかな眠りに抱かれるその時までは、どうか甘く苛烈な夢の中で!」
劇中での宣言通り、残りの生命を燃やし尽くして生きたい。

最後に改めて、そして重ねて、ありがとうございました。

当時の雰囲気を動画で少しだけ

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