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#2詩月ともののけ魔ダコ

江戸湾。
ここでは新鮮な
魚介類が毎日水揚げされる。

特にタコはほぼ一年中水揚げされるため
江戸では一般的な魚介であった。

また高タンパクで味もよく
屋台の多い江戸では古くから重宝されてきた。

「わっとっと。このタコは活きが良いねぇ……!」

水揚げされたタコ壺から元気の良いタコが出てくる。
これらは生きているうちに競りに出される。

そうして競り落とされたタコの多くはゆがかれて
おなじみの赤い茹でダコになるのだが……。

一部のタコは生きたまま市場に並ぶこともある。
そんな活きダコは少し高価であった。

江戸は武士と一般町民が入り交じり
活気あふれる高人口密度の大都市だ。

木造の長屋がずらりと並び、
屋台は食の道を極めるための絶好な修行場である。
また、武士たちは武家屋敷で過ごすのが一般的だ。

冷蔵庫のないこの時代、
採れたての魚介を楽しむには昼間が良い。

ここでやや没落した大王子家の長男、
詩月がとある道場に向かう前に
生タコが食べたいと思い、
市場に出向いていた。

「へいらっしゃい! うちのは新鮮だよ。
負けるから買ってくかい?」

「活きダコをニ杯ほど頼む」
やけに筋肉質な美少年はぶっきらぼうに言った。
少年といえども彼は元服をしている。

「へい、まいど!」

もちろんビニール袋などない時代なので、
木箱に入れて風呂敷に包む。

タコを買った詩月は武家屋敷に戻り
姉上の “お松” に調理を頼む。

そのつもりだった。
しかし活きダコは箱から抜け出し
ヌメヌメと詩月の体にまとわりつきはじめたのだ。

もう少しで屋敷だと思い
小走りで家に戻る。

ヌメっ! ヌメ! ヌメ!!
「くっ! 早く戻らねば……逃げてしまうぞ」

詩月の体になおもまとわり付くタコ。

江戸の人たちはもちろん和装である。
だから男も女もパンツなどはなく
ふんどしが一般的だった。

タコが詩月のふんどしの
中に入り込もうとするのだ。

暗くて狭い場所を好むタコは
ふんどしの中に入り込んでいく。

ん! まずいでござる……。

間一髪で屋敷に着くが……姉のお松に
変な目で見られてしまった。

「何をやっているの……詩月!」
「いやこれはタコが勝手に動くのでござる……」

今度はお松の方へ
もう一杯のタコが絡みつく。

「キャ! このスケベエダコ~」

タコの触手はお松の和服の帯を解いてしまった……。
「いかん。このタコ! お松から離れろ!」
詩月はもう片方のタコと格闘する。

塩で〆なきゃ……
お松はそう思い、
塩の入ったツボに手を伸ばそうとした……。

そのとき、
タコのヌメリで滑りツボに頭を強打してしまった。

「ううぅ……」

打ちどころが悪かったのだろうか……。
お松は脳震盪のうしんとうを起こしてしまったのだ。

まるで葛飾北斎の「蛸と海女」のような態勢に
お松がなってしまった。

挿絵:https://img1.mitemin.net/5x/4o/38wwwbc4fhhci6xm30z6nbb2624_y07_18g_v0_i6el.jpg

お松はタコに襲われており、意識もない。
まさに絶体絶命だった。

「お松の体に触れるな! 辱めるな!!
ならば……代わりに拙者の体を辱めてみよ!」

詩月は精一杯の虚勢を張り
タコをお松から剥ぎ取ろうとする。

詩月のふんどしもタコたちは解く。
「正気でござるか! まだ童貞でござるぞ」

タコたちは今度は詩月の陰部をめがけて絡みつく。
うぅ! はっ! はぅ!

タコのヌメリ気が意外に気持ちが良い。
詩月は自然と “勃起” をしてしまう。

「何をするか! このタコ!」
タコたちは詩月の肉体に絡みつき。
信じられないくらい強い力を放っている。

詩月の “根” に強く絡みつき
それがなんともこれが気持ちが良かった。

はっ! はっ! はっ!
「ダメでござる。拙者はまだ童貞でござる……
このようなタコどもに我が精水を与えるわけには……」

詩月の顔が強く、また一層歪む……。
ヌメヌメとした快楽との戦いだった。

ヌルヌルヌル!
あぅ。は。うぅ。む。

タコは西洋では悪魔の魚と言われる。
まさに淫乱な魔魚だった。

「まずいでござるぅ~」

詩月はもう限界までいい気持ちになってしまった。

あ~……。
ドクッ! ドクッ! ドクッ!

詩月が悪魔の魚に向かって精水を
漏らしてしまったのである。

そこで姉のお松が目を覚ます。
「詩月! 何をやっているの!!」

この言葉で我に返る。
粘液はすでにネチャネチャと白く泡立っていた。

「姉上。早く塩を塗り込め!」

お松は塩壺からたっぷりと塩をつかみ取り、
この悪魔の魔魚に名一杯塗り込んだ。

ぎゃあぁ……。
シュゥ~……。

タコから悲鳴が聞こえた気がした。
そしてタコたちの動きが止まる。

「これはもののけの類であったか!」
「はい、こんなスケベエダコ初めてです」

今はもう塩で清められ、
もののけの気配が無くなっていく。

「ごめんなさい……詩月。
私のドジのせいで詩月が辱められちゃったんだね……」

「いや、こうせねば姉上が辱められていたでござる」
「ありがとう。詩月。私の貞操を守ってくれたんだね」

そう言って二人はこのタコを “きれい” に洗ってから
さばいて食卓に出しましたとさ……。

何も経緯を知らない父上は
この生タコは美味しいなぁ……。

などとたまわり噛み切れないタコを
いつまでもモグモグしていた。

父上にこんな事情を知られなくて本当に良かった。

詩月はセンズリ大会で良い成績を残すため、
これからズリセン道場という道場に向かうのだった。

また、タコには精力増強効果があるとされている。
なお、もののけの魔ダコならなおさらだ。

「うむ、拙者の根がいつにも増して元気でござるな。
これから優勝目指して頑張るでござるよ……」

詩月は機嫌が良くなって、
ニコッと微笑む。

詩月の笑顔は周りの女性だけでなく
男たちにも好印象を与えるようだった。

これから詩月は
とんでもない性の修行に励むことになる。

そんなことを知らない詩月は
気を取り直して道場に向かっていった。

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