作曲家修業の思い出(7)曲の良し悪しはドラムが9割

※某レーベル事務所で行われた、デモテープ作成特別講座の続き(というかこれが本編)です。

A氏がぼくの紹介をします。

A氏「バンドやサポート経験も豊富、大方の楽器をこなし、直近のバンドではCDを手売りで●●●枚を・・・」

ぼく「実は、池田さんは存じ上げてます。渋谷のROOMでムファウメ薫さんに紹介していただいてますし、お名前はそこかしこで...」

池田氏「あー、あの時の・・・」


・・・てな感じで和やかにアイスブレイク。しかし、A氏がもってきたデモは、よりによってこのエントリ↓

作曲家修業の思い出(3)一番聴かせたいところを一番最初に持ってくる

で作成した、リズムマシーンで作成、ボーカルも仮歌でなくシンセ乗せ⇒「リズムを作り直せ」指令を受けた、一番ダメなヤツだったのです・・・敢えて選びおったな、こんちくしょーと内心思いましたが、時すでに遅し。

ただ、ぼくやA氏と違って、池田さんは元曲を知らずにデモを聴いたわけで、先入観なく聴いたわけです。彼にとっては、仮にどんなにメロディがよかろうと、曲の印象はよくなかっただろうな~、と今となっては思えるわけで。

それを察して、A氏がコメントを先に挟みます。

「曲はいいものあるんだよね、ただリズムが軽い。それでデモの完成度が低くなってしまっている...」

そこに池田さんが挟んだコメントは、今もぼくのココロに深く刻まれています。


「そうですね、デモの良し悪しの9割はドラムで決まりますね」


           ・・・ チーン ・・・


でも、このコメントは、なぜかスッと腹落ちしたんです。

自分はドラムもベースもやったことがあり、それが今のアレンジスキルに直結してはいるんですが、基本はキーボーディストで、たまに作曲・デモ制作用にギターを弾くくらい。どうしても、ドラム・ベースよりギター・キーボードの音圧が気になってしまい、自分で手掛けるミックスも上モノと言われるギター・キーボード類の音が大きくなる悪い癖がありました。よくドラムやベース担当に「リズム隊の音小さくね?」と言われたものです。

まして、それまで自分は生バンドにこだわりすぎるあまり、打ち込みの音楽を避けて通ってきており、リズムの打ち込みスキルは無きに等しい状態でした。ここまでのデモも、一部はサンプラーを使うものの、大半がリズムマシンにエフェクトをかけて音を持ち上げるパターン。使ってた機材もこんなのとかでした(突然判る人にしか判らない、機材モードに突入...)

E-mu Vintage Pro | Vintage Synth Explorer

Alesis QS6.1  | Vintage Synth Explorer

Akai S5000 | Vintage Synth Explorer


これではやはりパワーが足りない。バンドのメンバーに配るDTMなデモと、プロデューサーに渡すデモが同じではアカン。バンドのメンバーには、構成とコード感が伝わればとりあえず何とかなるが、プロデューサーに渡すデモは、それがどこに流通してもいいようにしておかないといけないわけです。


ここで判ったことは、


・リズムの音圧がデモの完成度に直結すること

・適切なリズムネタとベースネタを持てば、デモの完成度がひとつ上がる

・手っ取り早いのはリズムループを使うことだが、リズムキットは自分で組み立てたい

・リズムのネタはサンプラーを使う(当時の池田さんはAkaiのMPC3000だった。今となっては化石ですが)

・デモとはいえ、きちんと聴き手のことを考えてミックスする

・トータルコンプをかけて仮マスタリング的なこともして、音圧も上げる


結果、自分のデモの完成度を上げるには、リズムの音圧を上げ、デモとはいえできるだけ「本物」に近い形に磨き上げていかないとダメ=聴き手のことをきちんと考えて音作りをすべしということがよく判りました。


リズムサンプルの組み上げは一朝一夕にはできませんわな。こりゃ、いろいろやることが増えて、時間をかけないとダメそうです。大丈夫なのか、オレ。


(つづくかも)

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