見出し画像

Hear/Here製作日記(完)「手放すことから」

昨年の末から正月から合宿をして駆け抜けたHEAR/HERE公演が終わり、日常の時間へと戻ってきました。終わったら少しゆっくりしようと思いつつも、心の中に残っている感覚を整理しつつ、今だに振り返っては揺れる感情を感じながら次のプロジェクトのことも進めています。
ひとつのショウを創作するということは、あらゆる感情を総動員して、寝ても覚めても夢の中にいるようなそんな感覚があります。たまに夢の中で閃いたことを朝方メモったりすることも。今回はビジュアルのイメージや音楽の制作、振り付けはもちろんあらゆる自分の感情を何か形にできたらと日々感じることに敏感になりながら創作をしてきました。もちろんこれは毎回そうなのですが、ここからここまでが創作の時間と言ったまとまった仕事の時間のようなものはなく、生活している時間の全てが、生きている時間の全てがインスピレーションなのだなと思います。
今回、赤レンガ倉庫では3年目、1回目はコロナ禍真っ只中の20年にNYのロックダウンから日本に帰国して行った"In-Spire"公演があり、あの時は3日間たった一人で踊りました。二週間の隔離を終えての本番でしたが、練習しすぎて前日に歩けなくなってしまったのを覚えています。21年の"Liberation”ではOlaibi、平原さん辻本さん、ハナレグミという親しい仲間たちが日替わりで参加してくれました。
そして23年の今回は新たなカンパニーFreedom Jazz Dance、谷口翔有子、そして中村佳穂さんと共に、これまでの3部作のつもりで創り上げました。

この3年間心に積み上げてきたことを、何か形にできたらという想いがあります。歴史的にも個人的にも大きな変化があったこの3年間、今一番言いたいことは、
『今を心から楽しみたい』
それに尽きました。
エネルギーを目一杯感じながら、それを外に向けて放ちたいと思いました。
それをする為には、やはり人と繋がり、コミュニケーションを深くとり、信頼しあうことが必要だということもこの数年でわかったことです。

この数年で人との距離やコミュニケーションのツールも大きく変わりましたが、やっぱりわかったことは、根本の大切な部分は何も変わっていないということです。
コロナによって翻弄され続けたこの数年。
12月にコロナに実際に感染したことも大きかったかもしれません。
熱にうなされながら、思っていたことは、
『今までやってきたことをもっと深く深くやり続けよう』
ということです。
まわりのカタチが変わろうとも、信じたことを深く掘り下げたい、
楽しみ続けたい。それは、ふと、何かを手放すような時間でもあったような気がします。心のコントロールをやめて天に身を任せるような。
そう思えたことで、ふと心がひらいて、色々なアイディアが湧いてきました。

もう何も恐れることなく、好きなことに向かってただ突っ走ろう。
自分の心がヒライている時、大切なことはやってきてくれます。
大切な人に出会って、その縁を大切にして日々を生きていたい。

踊っている時も、ショウの終盤では、だんだん自分の身体がもう自分でコントロールできない時がやってきます。もうアイディアや自分の思考が出尽くしたような時に、意識や考えを手放して、無意識に身を委ねる時、僕の意思を超えたところでリズムや身体の動きが生まれてきます。結局、自分の考えることなんか、ちっぽけなことなんだと思います。
だから自分を手放す時、もっと大きな感覚に出会えるのかもしれません。
それが自分がタップを踊っていて大事にしていることです。

これにて製作日記は終わりますが、創造の旅は始まったばかり。
これからもこのノートは自分の記録としても書いていこうと思います。
今回、協力していただいた中村佳穂さんはじめ、一緒に踊ってくれた仲間や、関わってくれたスタッフの皆さんに本当に感謝しています。
次のHEAR/HEREでまたお会いできることを願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?