2020

ライダーとして「初」な事が多かった一年。

1つ目は「開発ライダー」として走るのが初めて。
2つ目は「一年を通してのシーズンを追わなかった」のが2011年以来初めて。
そして3つ目「MotoGPマシンに乗る」のが初めて。
あ。Youtuberも初めてです笑

どれも自分のライダーとしてのキャリアの中で大きなステップと言えるものでした。

これまでもレースを戦いながら「開発」をしていくというスタンスでのレースの経験はありますが、今年は「開発」をする上でレースを走ると言える形。
「大した差ないじゃん」とも言われれしまうかもしれませんが、
ご存知の通り2021 FIM世界耐久選手権(EWC)に参戦する事になった「YOSHIMURA SERT MOTUL

これまでは「スプリント耐久」とすら呼ばれることのある、鈴鹿8時間耐久ロードレースにフォーカスして多少の先鋭化も内包しつつ、まずマシンをスピードをトップレベルまで押し上げるという意味合いが強い中で全日本ロードレースを戦っていたと思います。

しかし今年は、より長い24時間の戦いも視野に入れつつ、自分自身が速く走れるマシンというよりは、「誰が乗っても」速く、そして乗りやすいマシンを作る事を目指すという意味で新しい挑戦でした。

実際には、テストでも基本乗るのが自分自身である以上「誰が乗っても」というのは概念的なことと言わざるを得ない部分もあるものの、自分という基軸は持ちつつも、時に自分の中に作り上げた「別のライダー」を乗せることでその客観性を補おうとしていました。
もちろん新しいマシン・パーツのテスト時に評価軸がぶれてしまうのは本末転倒であり、絶対的な基準であるラップタイムを求めれば、今まで作り上げてきた自分のベストのライディングスタイルに寄ってしまうのもある程度は避けられない。(まだテストライダーとして未熟な部分です)
ライダーの感覚として別のライダーになり変わるのは不可能ですが、それに寄り添うことはできる。しかし自分というライダーとして譲れない部分もある。

そういう意味で非常にバランス感覚を鍛えられた1年だったと思います。

そして久しぶりにチャンピオンシップを1シーズン通して追わなかった今年。

ライダーにとって年間ランキングは文字通り複数のレースを戦う中での強さを推し量り、「今年1年戦い、日本で〜番目になりました」と言える一番わかりやすい数字。
そのランキングを追わないというのは、そう言った数字としてライダーの力を表せないことで不安になる部分もあります。応援していただいているスポンサーの方々にとって見ればおそらく「開発ライダー」というのは表に出てくる部分も少ないため分かりづらい物になっていたと思います。
(そんな中でも支え続けてくれている方々には感謝という言葉ではとても足りません。)

過去にシーズンを終えなかったのは、2011年まで遡るわけですが、その時は資金面や、体勢面様々な部分で自分が走る環境を整える事ができず、望まない中での留年となった年でした。
結果的に、その悔しさが2012年RS-ITOHでの全日本チャンピオンにつながっているので、結果オーライ(?)だったのかな。

今年に関して言えば、スプリントレースを追う事で「次のレースに向けてどう改善しよう」というものから、より長いスパンでマシンを作るという中でメンタル面でも、これまでのものとは違う形でマシンに乗っていたように思います。

同じ「0.1秒詰めたい」でも、ピークまで持ってきた集中力の中で、数ミリのストローク領域のスピードに注文をつけてたものを、よりリスクを犯さず安全にタイムを詰めるためにはマシンの方向性はこっちでいいのだろうか?とより引いた目線で、と言って正しいかわからないけど、落ち着いてマシンを作れていたと思います。

MotoGPマシン

当然ながらあまり深くは語れませんが、ライダーとして貴重な経験なのは間違いなく。
図らずも世界チャンピオンマシンに乗ることになった今年。
あのマシンを作り上げたメーカーの人たちの尽力はどれだけのものだろうかと、「再起せよ」だったり、レーサーズの特集を読みながら考え馳せています。

そして忘れちゃならないというか、忘れられないのは、今年9月に公開したYoutubeのこの動画。

本当にたくさんの方から反響をいただいて、公開から3ヶ月たらずで100万回再生を超えるほどになりました。

「どノーマルバイクで何秒でるか?」というテーマに、ブライトロジック様に無理言って作ってもらったマウントで実現した特殊なアングルも手伝って、見ている方にわかりやすくプロライダーとしてどんなことをしているのかが伝わったのかなと思います。
モトフィールドドッカーズ様から提供いただいた、誰もが手に入れられる、まさに素の状態のGSXR-1000Rというのが多くの方に見てもらえた理由かな?なんて考えています。
なので基本マシンを大きくいじることはせずに、色んなサーキットに行ってみたいなーと思っています。
ひいては、最近は純ノーマルの車両で走れるサーキットスポーツ走行もたくさんの方が走っていて、この動画を見ることで、楽しく、しかも安全に走ることの一助になったらいいななんて考えています。

ずらずらと振り返りながら書いてきましたが。
今年も1年たくさんの方々のおかげでレーシングライダー(とYoutuber?)として、活動する事ができました。

たくさんの方の応援・声援があってのレーシングライダー。
今年はレースに出る機会が大幅に減ってしまいましたが、故にライダーとして大きく成長できた1年でもあったと思います。
来年もまた大きなステップを踏んでライダーとして成長する姿を皆さんにお見せできればなと思います。

改めて今年1年応援ありがとうございました。
皆様が良いお年を迎えられますよう。

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