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デカ筐体のススメ。

今年に入ってから物凄い勢いでエフェクターを買い続けております。

年始の時点ではこんな感じだったのですが、この記事を買いている時点では約4倍に増えております…ここに写っているものの中で手元に残っているのは2台だけなのですけどね…何故だ…

所有しているエフェクターをリストアップして整理してみたところ、ファズ、オーバードライブといった歪み系、並びに歪みを得る為にアンプをプッシュするタイプのブースターが合わせて14台と約半数を占めておりました。
でもね、これだけ持っていてこんな事を言うのもあれですが、別にディストーションペダルの類の物が好きなわけではないのですよ。

…え?何言ってんの?

いや、本当は真空管アンプのヴォリュームを上げて行った時に得られる歪みが個人的には最高なのです。
もっと言うと、歪んだサウンドが欲しいというよりは、歪み始めるポイントまでヴォリュームを上げた時のニュアンスや質感、音が熱を帯びていく感じが好きで、それを手元のヴォリュームとタッチの変化で歪みの量と立ち上がり方を調整していくのが楽しいな、と。よって、歪みの深さはさほど重要ではなく、気持ち良いクランチ程度の歪みが得られたら充分です。

その点、うちのOahuのヴィンテージアンプは最高に気持ちの良いクランチサウンドが出せます。買って良かった!!
(注:何だか玄人っぽい事言ってますが、当方弾くのは初心者レベルです。)

ところが…です。
出力4-5ワット程度の小型アンプとはいえ、集合住宅で鳴らすにはまあまあな音量が出る為、良い感じにクランチするポイントまでヴォリュームを上げて弾こうものなら、部屋を追い出されるレベルであります…

そこで、ペダル様のお力をお借りしたく…と思い、あれやこれやと試していたら、何だか増えてしまった次第。
歪みを得るペダルにもいくつか種類が有り、一般的には真空管アンプっぽいナチュラルな歪みが欲しい場合はオーバードライブ、もう少しハードな歪みが欲しい場合はディストーションというタイプのものが選ばれがちです。が、個人的にはこれらのカテゴリーの物はあまりフィットしない事が多く…というのも、確かに歪み方やトーンはアンプがドライブした状態に近く聴こえるのでしょうが、歪ませる為に踏むペダルという感じがするものが多く(それはそうだ)、挙動や反応にアンプっぽさをあまり感じず、弾いていて馴染まない場合が多いのです。(勿論、例外有り〼)

そこで、僕が大好きなのがファズ。Fuzzです。
ファズといえば元祖歪みペダル的存在で、一般的にはより粗い歪みで気まぐれで凶暴な奴というイメージが付いているように思います。

アンプの歪みと全然違うじゃないかって?
いやいや、良質なファズは良質なアンプなのです。

はい…?

物にもよりますが、挙動に関しては多くのオーバードライブ/ディストーションペダルよりもアンプっぽさを感じる場合が多いです。
ギター側のヴォリュームに対する追従性も良い物が多く、手元のヴォリューム操作だけでクリーン〜クランチ〜激歪みと変化させ表情を付ける、というのはファズ(特にFuzz Face系)の扱い方の基本としてよく言われる事です。つまり、アンプの一部として扱う、プリアンプ的な物と解釈する、と。これが、ファズはペダルではない!!アンプだ!!と言い張る所以ですね。
勿論、曲中でガラッと質感を変える為、もしくはソロ等で更にゲインやサスティーンを得る為にオンオフするという使い方もできるわけですが、踏みっぱなしで変化を付ける楽しみを知ってしまうと、ファズ沼から抜け出せなくなります。助けてください。

そして、ファズに関しては筐体が大きい方が良いです。中身スカスカなくせして図体ばかりデカくて何だよ、とか思いますが、重量は意外と軽かったりします。
やはり筐体の音、箱鳴りみたいなものが有るのでしょうか。大きめな筐体の方が鳴り方がワイドでオープン、音に奥行き、ゆとりが有るようにも感じる場合が多い気がします。小さい筐体の物はタイトにまとまって聴こえる物が多いかもしれません。

基本的に常時オンにしておき、アンプの一部として扱うという点ではRange Master系ブースターも近い立ち位置に居ます。トランジスタで増幅しアンプをプッシュしつつ、音の輪郭作りをするような物なので歪みではないですが、ほぼファズの親戚と言ってしまって良いかと。

長い前置きがようやく終わりました。
ここからが本題。

個人的に最高のドライブ/ブーストペダルと出会ってしまいました。

最近仲良くしてもらっているエフェクターマニアの方に「何か良いファズ貸してくださいよー」とおねだりして何台か送ってもらった事があったのですが、その時に送られてきた中の1台がColorsound Overdriver。
これは基本的にブースター〜オーバードライブ的な用途の物で、ファズと言ってはいけないのかもしれませんが(世界初のオーバードライブペダルと言われる事もありますね)、限りなくファズに近い仲間です。よって、ほぼファズです。
右のペダルがそれです。

Colorsoundというのは、ブリティッシュファズの代表選手Tone Benderを製作していたSola Sound社が1960年代後半に立ち上げたブランド。
Overdriverの前身、Power Boostというモデルが1969年に発売され、Jeff Beck、David Gilmourといったギタリスト達の足元に並ぶ事となりました。当初は9V電池×2の18V駆動でしたが、9V駆動に変更されます。数年後にモデル名がOverdriverに変更となり、この仕様の物もJeff Beckがブースターとして使用しておりました。
基本的に中身はほぼ同じだと言われていますが、Power Boostの方がよりプリアンプ/ブースター的、Overdriverの方が歪み始めが早くドライブペダル的、という話だったと記憶しています。まぁ、オリジナルのヴィンテージは入手困難かつ高価なので、僕なんぞが触る機会などほぼ無いでしょう…

お借りした個体に話を戻すと、こちらはヴィンテージではなく、リイシューの物になります。持ち主によると詳細は不明との事ですが、恐らく1990年代のSound City Japanからの復刻ではなく、ロンドンの楽器店Macari'sで販売されている物であろうとの事。

オリジナルのPower Boost/Overdriverはマスターヴォリューム無しの3ノブ仕様ですが、リイシューやこのペダルを模したクローンはマスターヴォリューム付きの4ノブ仕様の物がほとんど。
というのも、このペダル、基本的に爆音でして…Drive(ゲイン)を絞り切ってもわりと音量が上がり、そこからツマミを回していくと歪みと共に音量もかなり上がっていきます…この辺り、かなりアンプっぽいですね。やはり、元々プリアンプ的な用途を想定して設計されていたのでしょう。

ところが、マスターヴォリュームを増設し、全体的の音量をコントロール出来るようにすると、途端に扱いやすく具合の良いドライブペダルとなるのです。シリコントランジスタを3石使用した回路で、クリーンブーストから粗めのファズ的な歪みまで対応します。Treble、Bassの効きもかなり良く、これ1台でかなり幅広く音作りをできる印象です。
そして、驚いたのは踏んだ瞬間にブリティッシュアンプの雰囲気になる事、マスターヴォリュームを絞り気味に設定してもしっかりアンプをプッシュしているような感覚が有る事。エフェクターって、ギターとアンプの音に対してお化粧して変化させていくようなイメージだったりしますが、Overdriverに関しては、もっとアンプの中に入り込んで溶け合っていくような感覚が有ります。

いやー、これは凄い!!
これさえ有れば、セッティング次第で僕が欲しい歪みはほぼ全て得られるのでは…こんなに良いのなら欲しい…

ハマってしまうような気はしていたのですが、いやはや、想像以上でした。
しかし、リイシューであってもColorsound筐体の物を手に入れるのはなかなか難しく、とりあえず、他社のPower Boost/Overdriver系のクローンを試してみる事に。

Manlay Sound Pro Boost、Throbak Overdrive Boost、どちらもとても優秀なペダルです。Pro Boostは9Vでも18Vでも駆動し、特に18V駆動の時の音に宿るパワーとプッシュ感が素晴らしいです。PowerをBoostする、なるほど…と。Overdrive Boostは歪みの質感が良く、また更にゲインをブーストできたり、シリコンとゲルマニウムのモードを切り替えられたり、なかなか痒い所に手が届くような仕様が盛り込まれています。

しかし、やはりColorsound筐体には抗えない魅力が有ります。結局、本物を買わなければ落ち着かないのか…
ヴィンテージは手が出せないとしても、Macari'sのリイシューはいつか買おう、これを個人的に歪みペダルのゴールとして、じっくり地道に探そう、と決意しました。今年の6月の話です。

ところが、出会ってしまいました。
7月終わり、ツアー中に寄った楽器店にMacari'sのリイシューが有ったのです。

いや、実はここに有るのは知っていました。
というのも、6月初めにも同じお店を訪れており、その時に見かけていたのです。しかし、手を出すのは危険だ、僕にはまだ早い、見なかった事にしよう、気のせいだ、忘れてしまおう、と、無かった事にしようとしていたのです。
まぁ、とてもレアかつ素晴らしい物なわけだから、どうせすぐに売れてしまったのだろう、と思いながらお店へ向かうと、なんと、まだ有るではないですか。

まぁ、落ち着け、落ち着け。
とりあえず、試奏だけでも、と触ってしまったが最後。どうしても連れて帰りたくなり、頭を抱えました。
しかし、ここで逃したら、次は一体いつ出会えるか分からない…覚悟を決め、めでたく購入となったわけです。
早々にゴールに到達してしまったわけですよ、はい。

いやー、テンション上がります。
デカくてスカスカな筐体、最高じゃないですか。コンコンと筐体を叩いてみると、結構ローピッチ。

中はこんな感じです。
Macari'sのColorsoundリイシューは複数のビルダーが製作を手掛けていますが、こちらはStu Castledineの製作で、トランジスタはBC550C(オリジナルはBC169C、もしくはBC109、お借りしていた先程の個体はBC184Lとの事)、マスターヴォリューム無しの仕様です。つまり、まあまあ爆音です。

Macari'sからのリイシューは非常に完成度が高いとファズマニアの間で絶賛されており、実際にヴィンテージを所有されている方々によると、ヴィンテージと並べても全く遜色無い仕上がりなのだとか。

この個体も素晴らしいサウンドです。ただし、気を付けないとアンプが飛ぶかと思う程のパワーが有ります…
ファズの話でも触れたように、演奏中のオン/オフはせずに踏みっぱなしで手元でコントロールするのが良さそうです。Power Boost/Overdriver系ペダルもギターのヴォリュームへの追従性がとても良く、絞った時のシャキッとしたトーンもなかなか乙なのです。絞っていっても音量は極端には変化せず、歪みの量が変化していく、という反応の仕方なのは、この手のペダルの特徴かもしれませんね。

Driveを上げていくと、クリーンな状態から音量が増していき、時計方向12時辺りでクランチ程度の歪み、そこから3時方向までで気持ち良いオーバードライブな感じ。この時点では案外歪みは深くないです。
しかし、こんなものか、と油断していると、最後の2目盛分程で急激に深くなり、ダメージを食らいます。そして、最後の0.5目盛分程で凶悪なファズサウンドに…それでも、ギターのヴォリュームを絞ればしっかりとクリーントーンになるのです。
トランジスタの特有のザクザク、ザラザラした質感は有りつつも、音そのものは馴染みやすく使いやすい印象で、ミッドレンジの粘り感も有ります。先にも書いたようにイコライジング次第でトレブルブースターのような尖った歪みにも、マイルドでダークな歪みにも、ブーミーなブーストにもなります。特にTrebleは少し弄るだけで質感が劇的に変化するので面白いですね。
爆音問題こそ有れど、古のデザインのペダルは使い勝手が難しい物が多いとされる中で、この勝手の良さ、万能さ。素晴らしい発明ではないですか。

自宅にてiPhoneで撮影したヘボ試奏動画ですが、とりあえず、何となく雰囲気が伝われば…

これは一生ものです。
家宝にせねば。

というわけで、身分不相応な大変素晴らしいエフェクターを買ってしまいました、という話でした。では、また。

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