好きか、好きでないか

 好き嫌いは誰にでもあるもの。私がはじめて「好き」を自覚した(という記憶がある)のは4才の時です。戦隊モノにハマったと同時に、「リーダーの色」である赤が大好きになりました。真っ赤のチノパンが大のお気に入りで、私和矢少年のワードローブの中核を担っていました。

 しかし、小学生になると「リーダーの色」だったはずの赤は突然「女の子の色」に変わりました。トイレの色やランドセルの色など、様々なものが女の子は赤、男の子は青(もしくは黒)。既成事実を押し付けられているような違和感を覚えながらも私は、誰に言われるでもなく、自然と赤いものを敬遠するようになりました。

 時が経ち、2011年の秋。ふらっと山梨県立美術館に足を運んだ時のことです。美術品のコレクターとしても知られる川端康成が所有していた銘品の数々が展示されており、そこに添えられていた川端の言葉が目にとまりました。

「知識も理屈もなく、私はただ見てゐる」
私は美術が好きで、新古にかかわりなく、なるべく見る折をつくる。
しかし、美術については、ほとんど一切かかぬことにしてゐる。
好きか、好きでないか、惹かれるか、惹かれないか、よいか、よくないか、
それだけでゆるされたいとしてゐる。
最高の美にただただ感動するのが生きがひではないか。
そこには知識も言葉もいらない。

 衝撃でした。この言葉に出会ってから、人にどう思われるか?よりも、自分がそれを好きかどうか、やりたいかどうか、に重きをおくようになりました。人の目を気にして赤を避けるようになってしまったあの日の少年はもういません。価値観は人それぞれ。固定観念を取り払い、多様性を認める方向に社会も変化しはじめています。

 皆さんが理屈抜きで好きなものは何ですか?

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