文章のゴールはどこだ
…やってしまった。
どうしてこう文章というのは稚拙な自分が丸裸になってしまうんだろう。
ライター塾アドバンス講座で、「インタビューの記事を書こう」という講座で、
わたしは以前から興味のあった講師のえずさんに聞いてみたいことの企画を立てて、
与えられた45分間という時間を有意義に使えるように、あらかじめ山ほどの質問を考えて、インタビューに臨んだ。
インタビューが始まると、あんなに質問も考えて、(自分なりに)準備万端で挑んだのに質問の順番を間違えるぐらいに緊張した。
わたしなんぞの緊張なんて、インタビューのなんの役にも立たないのに。
無駄に緊張したわたしの支離滅裂なインタビューに、えずさんは穏やかに丁寧に答え、緊張でテンションがおかしくなって、誤作動を起こしてる自分とあまりにも違いすぎて、今思い返してもコントみたいな滑稽な時間だった。
そんなインタビューではあったが、思いもよらなかった感動的なエピソードを聞くことができ、わたしは嬉しくて自分の考えたテーマ以上に、自分の心が動いたことを記事の中に、どうしても入れたい衝動に駆られた。
それは、「読者に伝えたいこと」と、テーマの主軸を完全に見失ってしまった瞬間でもあった。
「感情暴走機関車」と化したわたしは勢いで原稿を書き上げ、何にも気づかずそのまま勢いで提出した。
もはやなんの迷いもなかった当時の自分にドロップキックしたい。(目を覚ませ)
インタビュー原稿のフィードバックの講座は、わたしは急遽臨時に入った仕事があり、アーカイブで見ることになった。
正直、アーカイブで見た講座のフィードバックが衝撃的すぎて、わたしはそのまま2回見た。
(本当のことを言うと、自分の原稿のフィードバックの部分は3回見た)
相手のことを考えず、自分の感情だけ詰め込んだだけの独りよがりの原稿とは、このことを言うのだ、とえずさんのフィードバックを見て初めて気がついた。
他の講座生さんが、「こんな原稿で出していいのかと迷った…」とおっしゃっていたが、いやいやいやいやいや、わたしから見たら、めちゃめちゃ最後もきれいにまとめられていて、わたしのように「何を読まされたのかわからない」原稿なんてもう
それどころの話ではない。
言いたいことの主軸のブレが半端ない。
自分の原稿の、ゴールの見えない文章を読んだ後の、後味の悪さったら。
えずさんはやっぱりすごい。
自分のことをインタビューされたのだから、自分のことを書かれた原稿を俯瞰的に見るのはすごく難しいと思う。
そこをもう、俯瞰、俯瞰、とにかく俯瞰。
ものすごーーーく冷静に、第三者の目で、この原稿は読者が読みたい原稿か、何が伝えたいのかを見抜く。
これがプロなのか。
感情でしか生きてない自分には、えずさんの視点はプロフェッショナルすぎる。
脳みそを搾り出して、原稿を書いたつもりだったけど、全く俯瞰できてなかったなあ、と大反省だった。
でもものすごくいい学びだった。
だって自分が全く気がつかなかったことを、教えてもらえたのだから。
文章を書くうえで、一番自分の弱いところと、自分が一番必要なことをぎゅっと濃縮して学ぶことができた。
わたしは文章をいつも勢いで書くから、自分の弱さが本当に見つけられない。
自分のことが、いつも一番わからない。
49歳になってもわからない。(転んでみないと気がつかない)
そこを、えずさんに的確に細かく指摘してもらえる。
そんな贅沢な時間なのだ。
ではそんな、わたしの学びだらけのインタビュー原稿も、載せさせていただきます!
たくさん、たくさんえずさんに加筆修正していただきました。
ぜひぜひ読んでみてください…!
こちらです!↓
わたしの人生を変えた本との出会い
京都在住でエッセイスト・ライターとして活躍し、同志社女子大学で非常勤講師、「書いて、しあわせになる」をテーマに京都ライター塾やオンラインサロンなどさまざまな活動をする江角悠子さん。
さらに二児の母という顔も持つ。
今回はなんと本好きが高じて私設図書室をオープン。
私設図書室では、本に関わるイベントも開催し、オープン時はいつも満席という盛況ぶりだ。
一見すると、次々と華々しく自身の夢を叶えていく女性に見えるが、
人生の軌跡には、実は立ち上がれないほどの大きな悲しみを経験されている。
そしてそこにはいつも本の存在があった。
いったい本と共に、人生をどう切り拓いてきたのか。
ー小さな頃はどんな少女だったんですか?
自分の学習机の足元の棚にハードカバーの世界童話全集という本があって、いつも机の下に潜って本の世界に浸りながら読むのが好きな子どもでした。
外国の童話、特にヘンゼルとグレーテルのようなお話に強く惹かれました。
知らない世界のお話を読むのが好きでしたね。
大きくなっても京都外国語大学に行って、英語を学ぶほど、外国に興味を持っていました。
実は翻訳家を目指していました。
ーやはり子どもの頃から、ずっと本がそばにあったんですね。
本に人生を救われた、という経験はありますか?
吉本ばななさんの「キッチン」という書籍の中に所収されている「ムーンライトシャドウ」という短編小説です。それは、
(恋人を交通事故で失い、つらく苦しい毎日を過ごす主人公が愛する人との出会いと別れを越え、喪失を抱えて生きていくことを決意するまでの日々を繊細に描いた物語でした。)
この書籍は以前から本棚に並んでいたのですが、内容も忘れていたし、ばななさんの書かれるテーマは死にかかわる内容が多く、20代のわたしにとって、ちょっと重いイメージがありました。
お話の中の主人公は、双子の妹を事故で亡くし、わたしのようにきょうだいを亡くした人は、どうやって生き延びているのかと思うほど辛い時期で、
子どもを亡くした親の話は世の中にたくさんあるのに、きょうだいを亡くした人の話はなかなか見つかりませんでした。
自分だけでは抜け出せず、同じ悲しみを分かち合う人に出会いたいと思っていた時、ふと何気なく手に取って読んだのです。
そこには、大切な人を亡くした人の心情が、当時の自分とピッタリ重なるほど、繊細に表現されていて、とても大きな衝撃がありました。
私の心の奥深くに閉じ込めていた深い悲しみや苦しさを、言語化して整理してもらったような感覚だったのを覚えています。
その時に改めて、「本ってやっぱりすごいな」と救われる思いがしました。
その出会いがきっかけで、今まで読むことがなかった「死」に関するテーマの本も、どんどん読むようになりました。
20代は悩みがあると、図書館に足を運び、悩んでいるジャンルの本を片っ端から読んでいました。貸出可能な最大数借りて30代ぐらいからは、本は買うことも増えましたが、それまでは本当に図書館にお世話になりました。
本は実際に本屋さんに行って買いに行きます。
もう本屋さんに住みたいぐらい本が好きなんです。
ー本屋さんでどんなふうに本を選ぶのですか?
表紙を見て、手に取って気になる一文があれば絶対買いますね。本は全部読まなくても、そのお話がたとえ好きではなかったとしても、
心を刺すような一文にさえ出会えれば、その本に出会えた価値があると思っています。
ーこの人の本が出たら必ず買う!と決めているほど好きな作家さんはおられますか?
翻訳家の村井理子さんです。
村井さんのエッセイでは、現実に自分にも起きたら笑えないと思えるような場面も、クスッと笑える表現にして綴られているんです。
物事の捉え方や視点、考え方がとってもユニークで大好きです。
ーお話を聞いていると、江角さんが私設図書室を持つことは、至極自然の流れのように感じます。
図書室を始めようとしたきっかけはなんだったのでしょう。
ブックディレクターの幅允孝さんという方の私設図書室に遊びに行ったことがきっかけです。
そこがとっても素敵な空間で、今まではそんな発想もなかったけれど、「わたしもこれがしたい!」と強く思いました。
元々わたしは洋館が好きで、一室を借りていたんですが、幅さんの私設図書室に行って、
「やりたかったのは、これ!」と思い、早速本棚を買い、400冊を部屋に運び入れました。
ーどんな本を選んだのですか?
わたしにとって大切な、本当に手元に置いておきたい本ばかりです。
旅や暮らしにまつわるエッセイ、小説、ビジネス本。一番多いのは詩人銀色夏生さんの本です。
ー私設図書室ではどんなことをされていますか?
私設図書室に来てもらった方に、新しい本の読み方を提案したく「ブック占い」をやってもらっています。
ブック占いとは私が作った造語ですが、悩んでいるとき、本から答えをもらえることも多いと思うんです。私自身そういう体験を何度もしてきたので、その楽しさを伝えたいと言う思いもあります。
やり方は、本を読む前に今知りたいこと、興味があること、悩んでいることを書いて、その答えがもらえるように意図しながら、気になる本を手に取る。本は最初から読まなくてもよくて、気になったページからパラパラっと読むのでもいいし、最後から読んでもいい。自分の好きな読み方で読んだらいいと思っています。そうやって本を何冊か読んでいくうちに、ヒントとなる言葉に出会えたり、ほしかった文章を見つけたりすることがある。そんな読み方を私は「ブック占い」と名付けて、楽しんでもらえたらと思っています。
ー来られた方の印象的なエピソードはありますか?
1冊目でドンピシャの答えに出会うという人が何人もいて、感動して帰ってもらったことです。
本を読む前に一旦悩みを書きだしておく、というのがポイントです。
漠然と本を手に取ると答えに気づけないけれど、受け取る準備がこちらにできていると、今までなら気がつかない言葉にも出会うことができるので、とても喜んでもらっています。
ーこれから私設図書室でやってみたいことはありますか?
「ヒュナム堂図書館へようこそ」という本を読んで、ヒントを得たのですが、課題の本を決めてみんなで感想を言い合う読書会もしてみたいです。
ー江角さんにとって本とはどういう存在ですか?
わたしにとって本は、人生そのものです。
本がないと生きていけない。
ーライターになったきっかけも、実は本がきっかけだったとか。
はい。「自分で本を作る」というイベントに参加して自分の本を手作りしたことがきっかけとなりました。当時亡くなった妹のことをどんどん忘れていってしまう、記憶が薄れていくという危機感があり、忘れたくないなと思って妹のことを書いた本を作ったんです。
写真を切り貼りして、自分の文章を載せて、自分の書いたものに感想をもらう、という経験をしました。
その時の感動が、自分のやりたかったことを思い出すきっかけになり、転職をしました。
ー江角さんの人生の分岐点にはいつも本の存在があった。
偶然手に取った本で、自分の人生が変わる。
それは誰にでも起こる可能性のある奇跡ではないだろうか。
今日何気なく手に取った本が、もしかしたら、あなたの人生を変える一冊になるかもしれない。
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