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理知を継ぐ者(11) 続・足りなさについて③

 こんばんは、カズノです。

【ここまでの本題】

 ある単語/センテンスの意味は、前後の文脈が決めます。どういう状況、どういう関係、どういう話/会話/議論かによって意味が決まります。
 言い換えれば、語り手本人がどういう意図で口にしたかは、前後の文脈を知らなければ分かりません。

「生娘シャブ漬け戦略。田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば絶対に食べない」

 この3つのセンテンスは、どういう前後関係/全体/状況の中にあった言葉なのでしょうか。どういう文脈で語られた言葉なのか。

 受講生Dの言う通り、問題なのは「(差別)意識」だし「(ハラスメントにおよぶ)意識」です。つまり「言葉」が問題なのではありません。この話はあとでもっと詳しくやりますが、問題とは「当人の意識」であって、単語やセンテンスの辞書的な意味ではありません。
 デートに遅れてきた恋人への言葉の意味は前後の文脈によって決まっているとは、要するに「大事なのは本人がどういうつもり(意識)でいるか」だということですよね。意味とは意識にこそあるもので、言葉じたいには無いということです。
 だからその「当人の意識」を知るためには、前後関係/全体/状況──つまりその言葉の置かれた文脈を知る必要があります。でもそれが受講生Dによる抗議文には書いてありません。ということです。
 だからこれも、足りないということです。

 *

 署名を求める記事では、上記の「生娘をシャブ漬けにする…」云々のセンテンスしか引用されていません。事件の詳細記事でも、なんとなく当時の状況が分かるだけで、どのような講話/会場/雰囲気の中でこの発言があったのか、具体的には分かりません。
 つまりどちらの記事にも、このセンテンスの意味合いを決める「前後」「全体」「具体的な状況」が示されていないということです。

 いえ、そもそも「意味合い」でさえ、「語り手の意識/意図/つもり」を推しはかるための手がかりに過ぎませんが、その「意味合い」からしてまず分からない。
 だから「生娘をシャブ漬けにする…」がどう差別/差別的、ハラスメント/ハラスメント的だったのかは、おれには分かりません。

 こういう注釈も付け足しますね。

 上記の発言を読む限り、ここで「シャブ」と喩えられているのは、講師Cの「自社商品」です。そして「生娘」と喩えられているのは「(潜在的な)お客さま」です。
 そして企業Bは、庶民的なイメージの店舗を経営しています。どこかのランキングの「星いくつ」を狙うようなメニューではないし、お客に対して、すまし顔で応対できるような業態でもありません。そんなチェーンの経営陣・Cにすれば、受講生/学生などの若者もまた(潜在的な)お客さまでしょう。
 そういったイメージも手伝って、なおさらこの「生娘をシャブ漬けにする」がどういう意識/意図/つもりで語られたのか、おれには分からないんですね。



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