ユメグラ60分ワンドロ企画 夢編 たどり着いた道の先に

駅前の群衆を横目に、酒を煽る
繁華街の綺羅びやかな看板に照らされたコンビニの前で座りながら
夏も中盤に差し掛かった頃合
汗ばむシャツが体に張り付き、蒸れた空気を冷ますように
キンキンに冷えた麦を流し込む

今日も今日とて熱いのに元気な人達だとこぼしながら

スキャンダルに揉まれた奴もいれば
闇雲になっちまった奴
異郷の民もいる
いろんな人がいるこの街の片隅で
今日もコンビニのホットスナックをつまみに、夏の暑さを誤魔化すかのように酒を煽る

若者達は夢を語り夢を追いかけ
萎びれた奴らはただ眺め酒を煽る

夜の店の方面では兄ちゃんたちが客引きを行い
反対側では学習塾に通う若えもんたちが彷徨いてる
いつ見ても同じような景色だが飽きが来ない

夢追いかける物達が集まる街
昔に売れたミュージシャンがいたとかどうとかで
区が税を使ってまで次のヒットを出したいらしいが
なんでも世界が誇る雑誌に載っただかなんだかで

夢半ばで破れた者には関係のない話だがな
ただいつものように酒を煽り、紫煙を燻らせ
駅前の雑踏の中を見ながら

いつの間にかこんなにも枯れちまったんだろうな
好きだった事が辛くなっていった
上には上がいる、現実ってもんはそんなもんさ

出る杭は打たれるこの国では
出過ぎた杭にならなきゃ咲くことさえ許されない

ようやく咲いたところで、一つのミスを複数人で寄ってたかって叩き
一時の夢は覚めて終わり
完璧な人間なんてどこにもいやしないのに

折れた杭がもう一度伸びるなんてことは許されやしない
世間様が許しはしない

レールを外れた人は流されるようにどんどん場所を失っていき
最後にたどり着くのが此方側の吹き溜まり
吹き溜まり同士で傷をなめ合い過ごす
夢を見ることすら許されずに

見知らぬ若者に夢を託して、見守ることしか出来ない

なぁ兄ちゃんよ、そんなに目を輝かしてどうした?
良いもんでも見つけたのか?
と顔を見る こりゃ参ったな、吹き溜まりの中でも一番やべえ奴だ
折れちまった出過ぎた杭の目線の先には、最近注目を集めているデュオユニット

兄ちゃん、あれは此方側じゃねえよ、辞めとけと声を掛けてみるが
完全に聞こえちゃいねえ
兄ちゃんは群衆に溶け込み、伴奏を奏でていった

こりゃ敵わないねえと兄ちゃんを見送った

湿気た煙草に火を灯し、半分ほど灰になったあたりでもみ消し
駅前を後にする

ここは夢を追いかける者と心半ばに折れていった者達が集う街

今日も夢を追いかけ続ける若者達の背中を眺め、酒を煽り過ごしている


しかし珍しいもんが見れたな今日は
悪魔の片割れに噂の異国の没落貴族の末裔に、家出少女

こりゃ大きい夢が咲くかもしれない
外れたレールの先の吹き溜まりの中でしか咲けない
大きな夢が

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