縋るユメの終わりに

2022年、初めての朝
最後のユメを終え、目を覚ます
1時間は寝れただろうか、というぐらいの時間
出会ってから、彼女のいない初めての朝
脳裏に反芻する声で、現実を覚える
「ねぇ、キャズノリィはさぁ」と心地よい声はもう聞こえず、改めて失った物の多さを感じる

もう彼女に会いに行くことが出来なくなったんだと、現実が攻め立てる
自分の生活の中心にまでなっていたんだな、と身に沁みる
頭の中で響く彼女の声、もう届くことのない思い
二度と会えないという事を、改めて実感する

冬の寒さか、脳に血が巡り始めたからか、少しずつ頭が冴えてくる
昨年は別れが多かったが、そのどれとも違った彼女の喪失
人生で2度も似たような傷を負うことになるとは思わなかった
かつて、伴侶を失った時に背負った気持ちと、寸分違わぬ感情を、胸に覚えた

もう誰も愛さないと思っていたつもりが、自分で気が付かないうちに
これほどまでに彼女に入れ込んでいただなんて、我ながらに笑えてきた

「ねーぇ」「あっはっは」「それでね」「私はー」

脳に血が巡るにつれて、よく彼女が言っていた事が、がどんどん溢れていくる
落ち着こうと、紙巻き煙草に火を付け、ゆるりと煙を上げてみては
そっと吐き出し、最後に彼女と会った事を思い出す
今までで一番近くで見た、綺麗な彼女の顔、赤いアイライン、magentaなリップ、本来感じるはずのない吐息すら感じられると錯覚するほどの距離
心拍数が急に跳ね上がったのを覚えている。
彼女と交わした言葉には何一つ嘘偽りなく、本心で全力で追いかけていた。

よく彼女の名前をもじって、「girl」と呼んでいた
彼女はそれを気に入ってくれていたのだろうか、と今はもう聞けない疑問を空に投げる。
彼女の残した言葉に"生きることを締めないで"とあったが、早々に挫けそうである
しかし最後の最後に、諦と締を書き間違えていたのは、彼女らしいなと
ふと笑みを零す

彼女と直接会話する事が出来たのは6時間ほどだろうか
SNSで言葉を交わす事が多かったが、それはもう数え切れないぐらいだった
自分でも、ここまで彼女にのめり込んでいた理由もわからず
本能からか、どんどん彼女の事を知りたいと思うようになっていった

いくら彼女を思っても、返事はもう返ってこない
いつまでもすがり続けるわけにはいけないと、頭ではわかっているのに
心が追従してこない。少しずつこの寂しさや喪失感が晴れていくのだろうか
それともいつまでも情けなく引きずっていってしまうのだろうか
答えは誰にもわからない

終わるとわかっていた儚いユメに、縋っているわけにはいかない
ひとつずつ鮮明に彼女との記憶を思い出す
いつだって背中を押してくれた彼女を
立ち止まっては、何を言われるかわからない
すがるユメの終わりとユメから覚めた現実の始まり
脳裏に焼き付けた笑顔と言葉を胸に、一歩ずつでもユメから歩きだしていかなければと。。。







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