絶妙な君のオーダーで

ぷにぷに電機がとても好きだ。シンガーソングライターであり音楽プロデューサーの方で、ソロユニット的に活動されている(と思う)。数年前、Spotifyのサジェスチョンに何気なく現れて、その不思議なアーティスト名に惹かれて何気なく再生した「君はQueen」に心底撃ち抜かれてしまった。予想だにしないアダルトでメロウな歌声、絶妙なコード感とメロディ、四つ打ちでありながら16分のフィーリングが軽快なビート、ビビッドな色合いでアーバンな歌詞。と思えばキュートでデジタルな曲もあり、すっかり虜になってしまった。

そんな「ぷに電」の最新作が「ずるくない?」である。Kan Sanoをフィーチャリングしたこのミディアムナンバーは、誇張なく一小節目から声をあげてしまうくらい完璧に心の中へ入り込んできた。あまりにもクールなトラックとメロディに乗っているので最初は気付かなかったが、歌詞に散りばめられた小道具の絶妙さに、今度は溜め息が出てしまった。

シングルモルト、融けていく氷、リップのアーチ、口元を隠すハンカチ。

そしてフックとして最後に甘く囁かれる「ずるくない?」。こんなにずるい曲は久々に聴いた。もっと言うならば流れるようにキーボードを弾きながらオクターブ下でユニゾンするKan Sanoもずるい。ずっとアウトロに浸っていたいのに3分半で終わるのもずるい。最早ずるくない? なんて問いかける余裕もない。

「ずるくない?」と言いたいか言われたいかでいうならば、間違いなく言われたい方だ。オンザロックのグレンファークラスがカランと音を立てる横でラガヴーリンか何かをストレートで余裕な顔つきをしてオーダーしていたい方だ。何か飲む? なんて言いながら。

でもぷに電には初めて出会ったその日から言わされっぱなしである。ずるくない?

https://youtu.be/oavrIKPzgjA

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