生まれた近所で働くことになって再び
なるべく若いうちは遠くに行きたいと思っていた。
そして、多くの土地を知ってそれから戻りたいとも思っていた。
生きている間、見られるもの聞けるものは限られている。
だから、より多くの物を。後悔のないように。
そう思ってたから一つの場所にとどまりたいとは考えられなかった。
最長最遠で東北に2年ほどいたことはある。昔の仕事だ。
それ以外はずっと東京のあちこちで過ごした。
本当は日本中、できれば世界中くらいは行きたかった。
しかし、そんなことができる金もなく、理想で終わってしまった。
今でもまだ、遅くはないのかもしれないけど、
俺は自分の生まれた地にとどまることにした。
地元にある店を任されたからだ。
学生時代と卒業後のバイトで地元で働いたけど、それ以来になる。
どこか行きたいというわりには臆病で自分からは何もできなかった。
店も自分でやることはなかった。考えもしなかった。
だけど、すでに用意されていて、
できそうだと思われたからにはやろうと思った。
特に家賃以外は求められた目標もなかった。
ただ存在させるだけで、かつ緩くやれた。
積極的に向かう所はなかった。だから、できた。
今こうして文章を書いてるが、それと並行にできると思った。
結果として店は良くも悪くもなく、
文章も恵まれた感じではなかった。
ただただ緩い時間を過ごしてしまっている。
もう何百回も見た建物に公園、神社。
なくなってしまった家の後に建ったマンション。
義務教育時代の同級生もいなくなったり、家が変わってたり。
人間関係をリセットしている自分は
同級生の足跡はFacebookでしか知らない。
もう半数が結婚をしていて、離婚までしている。
ネットの海の向こう側に行ってしまい、
自分だけが取り残されたのを知ったのは
なんとも現代風な話だ。結婚式、葬式の手紙はもらったことはない。
学生時代、最後の方は街づくりに興味を持った。
地域振興こそ最大の社会貢献であり、
国力の増強と思っていた。少しでもそこに携わりたい。
また自分は地域や街が好きだ。
まちづくりに個性や戦略が垣間見える。それが面白い。
また自分が働くフィールドは広い方が向いていると思ってる。
狭い場所でずっと同じようなことをするよりも
変化と広さを持った仕事がしたかった。
結局、そんなことを言いつつ、
店の面倒を見るために店の中にこもりっきりになってしまっているけれど、地域で働くということで少し当初の目標には近づいていた。
決して狙っていたわけではないけれど、流れに流れて今になった。
地域振興に興味ある者にとっては商店街は欠かせない場所だ。
地域の人たちが生きるために始めたビジネス群だ。
商業地区のそれとは違う。
住宅街にある住まいからすぐに行ける商店街。血が通っている気がした。
感情や想いがある。泥臭くて地味な話だ。人情なんて当たり前の時代でもないのに。
資本を軸にした街に集まった人は資本次第でいなくなる。それだけ。
でも、商店街のような生活を基にしている人たちは違う。
物理的にも店が家を兼ねているところもある。
彼らは逃げ場がなく生活する場所も戦場も同じところにある。
生まれ持って自然に覚悟があり、それに慣れている。
人としてすべて繋がっているところに体温を感じるのだ。
自分はそういう人の活動を広める仕事をしたかった。
自分には特に何もできることがなかったから。
不器用で一つのことを突き詰めるには向いていなかった。
なので、自分は何かできる人を一層できるようにしたかった。
店をやることになるとは思わなかったが、
まぁ、イベントバーという性質上、誰かの応援をすることにはなっている。
本当はそれを題材に文章をつづっていきたかったが、
権利とか許可の問題でなかなか書けるものではなかった。
そして、世間に出せない話が多すぎた。
だから、バーというものがあるのだと分かったのと
同時に個人的にはどうしていったらいいのか見当もつかなくなってきた。
一応、ご時世的なアレもあったし、
これがスタートなんじゃないかと思えば、そうなのかと思える。
あんまりのんびりやっている余裕もないのだけれど、
会社とかバイトだけで働いてた時よりは自由で多くの人に会えて楽しいし、
人生の中では前進している。
社会の中で見たらとても遅いとは思うけど、進んでいるのならそれでいい。
いつまでも宇宙のような視点で観てたら進んでないように感じてしまう。
尺度の問題だ。
自分視点に切り替えれば、だいぶ進んでいる。
こうして気持ちを潰さないようにしている。
皮肉な話、本当に生まれた場所に戻ったことでスタートに戻ってしまっているが、
それでも自分の中では進んでいると思いたい。
むしろ地元に戻ることによって、
昔の自分と比較することができて、変化を感じられる。
ひとまず、文章を書いて生きてきたいので、文章を書くことにしている。
本当はテーマを決めて、読者を考えた文を書きたいのだが、
そうやってるといつまでも書けないので、
それはナシにした。前にもそんなことを書いた。
やれることが少ない自分が人の活躍を広める、
手伝うための手段が文章執筆だった。
もちろんそこには文章が好きなのはともかく、
話すのが好きというのもあった。
そして、多くの人に会いたいという目的もいろんな場所に行きたいという目的もあった。
生活になってないだけで、それが満たされてしまっている今、
どうすればいいかわからない。
本当はたくさんの文章を書くことではなくて、
たくさんの人に読まれて評価されることが大事なんだろうけど、
なかなか店がありながらそれは難しい。
今日もそんなことを考えながらイベントをやる人を待つ。
読んでいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。 ところでこの「さぽーと」って何ですかね?神が使う魔法かなんかですかね??良くわかりませんが、これ使う人は人間以上の徳がある人なんでしょうね。