提訴の日_空jpeg

ルートイン開発訴訟の争点(その3)

本来は、土地利用基本計画の立地基準に適合していない開発行為を、「ただし書」を適用して市長が例外的に許可する。その場合の判断基準は『「開発行為等に関する立地基準」の運用に関する指針』(平成26年11月、篠山市)の「3.開発行為等に関する立地の基準に適合しない場合の個別判断」に定められています。本件開発行為の許可は、この「指針」の判断基準に整合しているでしょうか。

今回は、駐車場について考えてみます。

ルートイン開発訴訟の争点(その2)では、観光施策としての妥当性を検証しようとしても、そもそも参照すべき観光ビジョン等が存在しないことを指摘しましたが、駐車場に関しても同様です。

市は、城下町における駐車場整備に関する計画を持ち合わせていません。さらには、今回のホテル開発に伴い発生する交通量、イベント時に必要な駐車台数等について何ら検討が実施されておらず、具体的な計画数値も示されていません。

令和元年9月の市議会において、開発地近隣の「ささやま荘」の閉館に関する質問があった際に、市は、「市内宿泊施設の需要・供給バランスについて」は、「これまでに、調査や研究を行ってはいません」と答弁していますから、そもそも観光入込客数、宿泊者数、ターゲット層、関連施策などの観光戦略を考えていないのです。観光客向けの駐車場の計画も当然ながら考えていない訳です。

城下町について具体的な駐車場計画がないので、現状に即して考えてみましょう。

まず、JRバス跡地は、これまで城下町東側のフリンジ駐車場として機能してきましたが、本件開発が実施されると、その機能を失うことになります。これを代替する駐車場の計画については、当初は明確ではありませんでしたが、令和元年11月2日の市民説明会で資料が提示されました(下図)。現在のJRバス跡地が150台であるのに対して、郡家観光駐車場87台と南新町駐車場40台を整備するというものです。台数の是非は、計画がないので不明ですが、城下町全体の駐車場の配置バランスを考えると大いに疑問の残る計画となっています。

代替駐車場位置図

それと、事業者が公表したホテルの駐車場計画(下図)にも問題があります。客室数105室に対して敷地内の駐車台数は50台、敷地外の10台も含めて60台しか確保できていません。しかも図には表示されていませんが、ここに大型バスも1〜2台入れる計画とのこと。乗用車の駐車台数は何台確保できるのでしょうか。また、ホテルスタッフは50名で、そのための駐車場も別に必要であると説明しています。事業者は「不足分は今後周辺で確保する」と説明していますが、具体的な計画は示されていません。

計画平面図_ルートイン

さて、「指針」の判断基準として「配慮事項② 市民生活への安定への配慮」があり、「集客に伴う交通渋滞など周辺環境及び市全体の都市構造に及ぼす影響を考慮し、必要な対策が十分に施されたもの」と規定されています。また、「配慮事項④ 周辺環境への配慮」があり、その中で「道路等の都市基盤施設の不効率な整備及び維持管理を生じさせないもの」「敷地にゆとりをもち、緑地空間を充分に確保」と規定されています。

駐車場については、市による城下町全体の駐車場計画も、事業者によるホテル駐車場の整備計画も不明なのですから、周辺環境や都市構造への影響について「必要な対策が十分に施された」と言う以前の問題です。代替駐車場は規模が縮小したうえにバス送迎が必要な場所になったのですから、都市基盤施設について「不効率な整備及び維持管理を生じさせない」とは言えません。ホテル運営のために必要な駐車台数が確保できていないのですから、「敷地にゆとりをもち、」とは言えません。

例外として開発を認める根拠はどこにもないと考えます。

駐車場計画の比較表






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