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手当て

先日、通院している病院へ行った。

自分としては次に進むつもりだったけれど、
先生のご判断は「まだまだ」だった。

病院の後はスーパーに寄って、
あの材料を買って帰り、あのお菓子を作ろう♪
などと計画していた私にとってはすぐには受け止めがたく、
交差点で家への帰り道ではない方へ折れて横断歩道を渡り、
川べりのベンチまで歩いた。
外で風に吹かれてひとりになりたかった。

夕暮れ時で空がきれいだった。
写真を撮りたくなった。
数枚撮った。

座ってしばらくすると涙が出てきた。
母に電話をしていると次から次へと涙が出てきて
声をあげて泣いた。
悲しいというより、衝撃を受け止めきれずに泣いていた。

その時、川下から歩いてきた方がすっと私のそばに座り、私の肩のあたりに手を置いてさすってくれた。
温かい手だった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか? タクシー呼びましょうか?」
そう言ってくれていた。
青い目の方だった。
美しい青い目だった。
「thank you」「大丈夫です」「okay」

彼女は私を無言で確認し、
傍らにいた東洋系の女性と川上の方へと
歩いて行った。

それからもひとしきり泣いた。

いつも私の心のそばにいてくれるふたりの友達にメールをし、返事をもらい、少し自分のことを受け止めた。

観光地の近くだったから、旅行者かもしれない。
なんと自然な優しさだったことだろう。
彼女が置いてくれた肩のあたりが温かい。
もう何日も経っているのに。

ひとりで病気と向き合っていると打ちひしがれる思いになるが、
あれから、何もない肩に温かい何かが載って少しその重さを感じるのだ。


🌫 🌫 🌫

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