【私たちが選挙に行った方がいい理由】

気に入ったレストランができた。気持ちの良い接客と,ほどよく本格派な美味しいものを食べさせてくれるいいお店だ。週末となれば,家族や友人を誘って通っている。

評判が広まり,地元の常連が増えていった。同じメンバーで,同じものを頼んで,ビールを飲んで楽しんでいる。シェフは新しい料理を黒板に書くが,オーダーする人は少ない。
たまにシェフと話すと,「野菜をたっぷり使った煮込みとか,誰も頼まないんだよね」とちょっぴり寂しそうだ。私も少しずつ足が遠のくようになった。

美味しいものを食べさせたいという料理人は,大抵ナイーブで,客に受けないのはつらいものだ。こっちも美味しいのに,と思っていても,注文されないものを出し続けることは難しい。結果的に店の味は,声の大きい常連に引きずられる。
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昨日,市議会選挙の不在者投票に行った。

会場に来ているのは,お年寄りが多い。帰り際駐車場に降りると,80代と思しき老夫婦が,ボロボロの軽トラで乗り付け,支え合いながらゆっくりと投票場に入っていった。

政治家は全体に若返っている。私の友人にも政治家が何人もいるが,皆若くて熱心で,人の役に立ちたいと願っている人種だ。

選挙演説を聞きに来るのは,動員されている人たちも含めて,お年寄りが多い。彼らは熱心に,高齢者医療の充実や生活支援を訴える。その場で子育て政策を取り上げても,受けない。受動喫煙問題を訴える来場者が一人いても,その声は候補者に届かない。
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食べさせたい料理がシェフにあり,それを食べたい客がいても,ニーズがシェフに届かなければそのメニューは形にならない。数においても,熱心さにおいても常連に負けている少数派にできることは,その思いをシェフにフィードバックすることしかない。

同様に,未来を考え,次の世代の役に立ちたいと思っている政治家に私たちができることは,その思いを率直に伝えることしかない。

熱心な政治家は,ナイーブな存在なのだ。


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