Amazon Prime Dayのストライキで考える日本の最低賃金引き上げ

Amazonが世界17カ国で開催した,年に一度の有料会員向けセールPrime dayの初日の7月15日,アメリカ,ドイツ,イギリスなどの配送センターでストライキが行われました。米ミネソタの配送センターは6時間に渡って創業が停止したといいます。Amazonの米国での最低時給は15ドル(1700円)で,米国の最低賃金の2倍近くに当たります。それでも労働者はストライキを行ったのです。

翻って,最低賃金の低さ,大量の非正規労働者の存在が問題になっている我が日本ではストライキが行われなくなって久しいです。まして,楽天スーパーセールやイオンのサマーバーゲンの当日にストライキなど行われようものなら,消費者から強く批判されるのではないでしょうか。

長きに渡って,日本では最低賃金が低く誘導されてきました。労働者たちはストも打たず,大きな声も上げません。経営者にとっては好ましい環境と言えそうです。しかし,残念ながら甘い環境の下で構造改革は進まず,日本の労働生産性は半世紀に渡って先進国中最下位にとどまっています。

「最低賃金が1000円になったら会社は潰れる」という経営者の声を聞きます。自分も一経営者として,気持ちはわかります。しかし,まさしくそれこそが最低賃金を上げる目的。生産性の低い企業を撤退させ,その業界で生産性の高い経営をしている企業だけを生き残らせることが望ましい帰結です。これを個々の経営者が行うことは不可能です。全体の賃金を一斉に上げることは政府にしかできない仕事です。調整過程はあるでしょうが,結果として生産性の高い経営に資源が集中し,財やサービスの価格も上げることができます。

最低賃金の引き上げは,働く側にとってもメリットもデメリットもあります。生産性の低い企業が多いということは,それだけ単純で代替可能な仕事に就いている人が多いということです。正規非正規を問わず,長く続けていても,応用が効くような知識や技を何も身に着けられない労働者もたくさん存在します。最低賃金が上がり,労働生産性が向上するということは,これまでよりも企業が「使える」労働者に投資を集中するということを意味します。まだ何も持っていない新卒の若者や,「つぶしのきく」技を身に着けてこなかった人たちには過酷な現実が待っています。

一見対立しているかに見える企業と労働者は,相互に依存しています。生産性の低い経営が多いということは,労働者にとっても好ましいことではないのです。特に人口が減り続ける日本では,生産性の向上以外に経済を成長させる手段がありません。

ストライキをしない労働者,自社の賃金だけを上げることはできない経営者だらけの日本では,政治の力で構造改革を進めるしかありません。

7月21日は投票に行きましょう。





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