風疹流行から学ぶ、5類になったいま考えたい、新型コロナへの向き合いかた。

新型コロナウイルスが最初に現れたとき、未知の感染症による不安と緊張がて広がっていたことを思い出します。しかし、時間が経つにつれて、その不安は薄れてきました。それは風疹の流行が起きたあと、すぐに忘れ去られてしまう現実と重なっているように感じます。

3年前のいまごろと比べると、状況は大きく変わりました。もはやロックダウンや外出制限は求められず、人々は自由に外出して移動できるようになりました。今年5月には、新型コロナウイルスは麻疹や風疹と同じ5類感染症に分類されました。いまや新型コロナが終息したと誤解している人もいます。

風疹もかつては恐ろしい感染症で、1960年代にアメリカで流行した際には、小児病棟に心臓などの病気を抱える赤ちゃんがたくさん入院していました。ワクチンが開発され使われるようになってから流行の規模が小さくなり、身近なところでの流行はほとんど起きなくなりました。そのために「周りで流行っている話を聞かないからワクチンは必要ない」と考える人もいます。

2012年から2013年にかけて日本国内で発生した流行では、合わせて約17,000例の患者が報告が報告され、この流行で45人の母子感染がわかり大きな話題となりました。そのとき、マスメディアは繰り返し、「この流行によって目や耳、心臓の病気を持つ赤ちゃんが生まれた」と報じました。

それから約10年が経ち、生き残った子供たちは今や小学生です。2013年の流行は終息しましたが、その時に生まれた人々にはまだ長い人生が待っており、終わりが見えるわけではありません。彼らは自分の運命に感じる理不尽さを抱えつつ、日々を生き続けるのです。

新型コロナウイルスにも「LONG-COVID」と呼ばれる後遺症があり、その影響で仕事を失ったり、学業を続うんけられなくなった人が増えていることが徐々に明らかになってきています。社会全体にネガティブな影響を及ぼす可能性があり、その人自身や家族にとっては大きな人生の転機となるでしょう。

5類感染症に分類されたことによって、新型コロナの恐怖が完全になくなったわけではありません。むしろ、風疹と同じように忘れられ、予防意識が低下してしまうことに対する戦いが続くことを意味しています。

一度忘れられた感染症への対策はひじょうに難しいといえます。令和5年度時点で44歳から61歳の男性に向けて行われている、風疹の第5期定期接種が進まないのは、まさにその例といえます。

後遺症によって元の生活に戻れない状況にある人たちがいる一方で、世間は新型コロナを忘れようとしています。ですが、台風の爪痕が消える事は決してないのです。世界的なパンデミックによって私たちの世界は変わってしまいました。残念ながら過去に戻ることはできません。

パンデミック以前の過去にこだわるのではなく、現在そして未来に目を向けて考えなければならないと思います。新型コロナをはじめ、風疹や麻疹、おたふく風邪、水疱瘡などの感染症によって失われた命や、今もなお後遺症で苦しむ人々に思いを寄せ、考えることで、これからどのような行動を取るべきか見えてくるのではないでしょうか。

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