お笑いの賞レースをみよう
お笑いが好きだ。
関西地方で産まれ育った自分にとって、お笑いは物心ついたころから当たり前に身近にあるものだった。
ベタな話ではあるが、土曜のお昼に吉本新喜劇を観ることは生活のルーティーンに組み込まれていたし、なんでもない普通の日曜の昼間に放送される、ただひたすらに漫才が流れ続ける2時間番組なんかを食い入るように観る幼少期を過ごした。
昨今は動画関連サービスの普及に伴い、多様なお笑いに気軽に触れることができるようになったし、東京で暮らすようになってからは、寄席やお笑いライブに足を運ぶ機会も増えた。
そんな中でも、お笑いファンとして、特別に力をいれて向き合うことになるジャンルがある。
そう、「賞レース」である。
とりわけ全国ネットのゴールデン枠で放送される大規模なものに寄せる思いは強く、例年夏ごろから予選がスタートするいくつかの大規模賞レースの結果速報をチェックするのが楽しみでならない。
こう言ってしまうと、ネタ番組や寄席を軽視しているようにも取られてしまうかもしれないが、そういう話ではない。
ネタ番組で、寄席や劇場でお笑いを見ることが大好きだ。好きな芸人のネタを見て笑い、初めて見る芸人に出会う楽しさがある。
一方、賞レースには、それらとまた違ったベクトルの面白さがあるのだ。
前者が視聴者や会場の観客を笑わせることを目的としているのに対し、賞レースは大会ごとのレギュレーションに沿って優劣を決める「競技」としての側面がある。
もちろんお笑いはエンタメであってスポーツではないし、そもそも笑いの感覚や好みなんてものは人それぞれで、客観的に優劣をつけることができるものではないだろう。
だからこそ、世間の注目度の高い賞レースが終わった後、視聴者たちの間で必ずといっていいほど論争がおこる。
「あの芸人が優勝なんて信じられない」
「こっちの芸人のほうが面白かったし会場もウケていたじゃないか」
「正統派で技術のある芸人よりも荒唐無稽で無茶苦茶な芸が評価されるのはおかしい」
いち視聴者としてのこの意見は間違っていない。見る人それぞれに笑いの感覚があり、好みがあるのだから当然のことだ。
だが、「賞レースの優勝」というたった一つの栄冠を獲得するのは、そんなすべての視聴者・観客を納得させた芸人ではなく、大会の審査システムと審査員の感覚にハマることができた芸人だ。
単純にネタを楽しみ、好きな芸人を応援することと同時に、この「レギュレーションに沿った競技としてのお笑い」を見ることができるのが賞レースの醍醐味のひとつと言えよう。
どういう方法で審査されるのか、審査員はどんなネタを評価する傾向にあるのか、ネタは何本必要で、どんな順番で披露するのが良いのか、複数の要素が絡み合い、たった一組の王者が決まる。
この点に注目して鑑賞するのもまた乙なものである。
季節は春になり、そろそろキングオブコント、M-1グランプリを皮切りに、今年の大型お笑い賞レースの詳細が発表される次期も近づいてきた。
このnoteでも、引き続きあーだこーだと好き勝手に語っていければと思う。
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