テレビリモコン多頭飼育崩壊事件  第二話『ハロワ相談員と武士の逆襲』

前回はこちら。すぐ続き書くって言ってこの始末よ


さて、幾度ムギさんをパンにしたところで、リモコンが四つある事実に変わりはない(うち一つは行方不明)。
私は気を取り直してムギさんに問うた。
「ところで、この後リモコンたちはどうなるんです?」
「どう、とは?」
( 'ω' )? ?? という空気を漂わせ、ムギさんは聞き返してきた。
「どうって、ひとつあれば事足りるところに四………まあ所在がはっきりしてるのは三つだけど、四つあるわけですよね」
「はい」
「余りますよね」
「ええ」
「どうなさるおつもりで」
「まあ、一個はベッドの傍に置きますね」
「それもよいでしょう。しかし、まだ余りますよね、二つ」

ぽぬぽぬは黙って私どものやりとりを聞いている。
この時点でムギさんもぽぬぽぬも、私の意図を測りかねているように思えた。
「行方不明のリモコンは、部屋のテレビ専用のリモコンなんですよね?」
「はい」

「ということはですよ、ということは、行方不明のリモコンは他につぶしがきかない……、他所での再就職は難しいわけです」

「 ( 'ω' ) 」

「ですからぜひ、ムギさんにおかれましては彼または彼女の捜索を徹底していただいて、再度手元に置いてあげてほしいのです」

なにいってだこいつ、というオーラとともに押し黙っていたムギさんが口を開いた。
「でも、かなり探しましたし……何度も探して見つからないのでもう無理だと思われるのですが」

「諦めるなよ」

ぽぬぽぬの的確なツッコミが入った。

「ちゃんと探すんだよ、最初のリモコンを」

普段、おやつ感覚でねこまるめされているぽぬぽぬ、今日は妙に斬れ味が鋭い。ねりけしが羊羹ナイフになったかのような閃きである。

「はぁ…」
「で、ですね、できれば、なんですけど」
これも言っておかねば と、私は言い添えた。
「ベッドの傍で使うサブのリモコンなんですが、できれば最初に購入したマルチリモコンにしてあげてほしいです」
「なんで?」
「ほら、彼または彼女はちょっと傷を負っていますから、例えばヤフオクやメルカリで他のリモコンと戦うのは無理ではないかと」

「なんだなんだ、なんだこのハロワ相談員は!」

わけのわからない集団(二人)に包囲されているとでも言いたいのだろうか、ムギさんは激しく異を唱えた。
「そもそもが長旅の末、職場で受けた傷でしょう」
「場合によっては裁判だね」
「リモコンですよ モノですよ相手は」
「一人は行方不明ですし、民事では済まないのではないでしょうか」
「ちょっと落ち着いて。はんぺん食べて  ( 'ω' )」※1
「いらぬ (^・ω・^*)」
「なんでさっきからちょっと武士っぽいのwww ( ゚∋゚)」
「ハロワ相談員と武士! はんぺん食べろ!( 'ω' )」
「はんぺんはいらぬ (^・ω・^*)( ゚∋゚)」

※1:ムギさんは、あろうことかはんぺん主義者でもあるのでした

行方不明者は見つからず リモコンの再就職も不透明。
なにひとつ解決しないまま次回に続く




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