ポケカ警察〜黄色の研究〜

「先輩、民間人より通報がありました。」
報告書を書く手を止め、振り返る。俺はこのポケモンカード警察で日々ポケモンカードにおける犯罪行為に目を光らせている中堅の刑事だ。最近は上司よりこの不出来な後輩を教育する役目を仰せつかっている。
「現場は近隣のカードショップか、行くぞ。」

カードショップに到着して現場を確認する。既に鑑識が入った後で、先程まで散乱していたであろうカード達は綺麗に片付けられており、机の上にはもの言わぬ60枚の紙束が置かれていた。

「ガイシャはルガゾロ、死因はタッグボルトか…」
珍しい話ではない。かつては後手1フルドライブは犯罪などと言われたが、昨今のインフレにより脱法行為として摘発されることはなくなった。
「ピカゼクにやられたようですが、事件性は無さそうですね。ガイシャの所持品はヤドキング、メタモン、ミュウ、こだハチ…」
「ちょっと待て」
こいつはまた基本的なところを見落としている。
「ミュウが入っていたのか?いくら後手1フルドライブされたとはいえ、ミュウを採用している先手のルガゾロがそう簡単に負けるとは思えない。」
「この間教えてもらったそれルガですね。でも目撃者の証言によるとほぼサンドバッグ状態で、サイドは6-0だったそうです。ただの事故ですよ。」
まるで考えていない。こんなことだからこいつはいつまでも学生気分が抜けてないなどと言われてしまうのだ。
「馬鹿野郎、こいつは事故に見せかけた事件だ。最近ピカゼク相手の事故が多発していると聞いていたがピンときたぜ。ガイシャはピカゼクに事故らされたに違いない。」
不思議そうな顔をする後輩に説明を続ける。
「事故を起こすのは不可能じゃない。やぶれかぶれがあるからな。それだけならばかわいいもんだが、こいつは無人発電所にまで手を出しちまったと考えて良さそうだ。」

「後手1フルドライブやぶれかぶれ無人発電所…そんな!犯罪じゃないですか!」
「ああ、後手1フルドライブとやぶれかぶれ無人発電所を揃えることは人道的観点から禁止されている。」

「見てください!あのピカゼク、こちらを見て隠れました!追いましょう!」
後輩の指差す方向に目をやるとこちらを警戒しながらカードショップを出ようとするピカゼクの影が見えた。
後輩が駆け出すのを追いかけて店を出る。この後輩、捜査の方はからっきしだが犯人を目の前にした捕り物となると見事なものなのだ。

あいつなら大丈夫だろう。犯人は後輩に任せ一服する。
俺たちは罪を憎み、闘いを続ける。ポケモンカードにおける犯罪行為が無くなるまで…

「先輩、今度は後手1オルタージェネシスが見つかったそうです。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?