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「ハッピーバースデートゥーユー」はパブリックドメインか否か?(アメリカの話)

ここ数日、誰もが知っている楽曲「Happy Birthday to You」の著作権に関するニュースが賑やかになっています。

A Royalty-Free Happy Birthday Coming Soon?
(TechAttache)
'Happy Birthday' Ownership Judgment Will Wait on 'Smoking Gun' Evidence
(billboard)
"Happy Birthday to You" Could Soon Have Its Day in the Public Domain
(Smithsonian.com)

この曲は日本では保護期間が終了し、すでにパブリックドメインとなっています。しかし、アメリカでは、現在まだ保護が継続していて、記事によると毎年2億円以上の使用料が発生しているとのことです。これはTPPで話題の保護期間の長さの問題だけではなく、日本やヨーロッパ各国などとアメリカの著作権制度の違いがからんでくるので、大変複雑です。Wikipediaによるとこの曲の最初の発行は1924年。今回、それよりも古い1922年に著作権表示をせずに発行されたものが見つかったということです。記事では、著作権表示をせずに発行されているので最初からパブリックドメインであったというようなニュアンスに取れるのですが、おそらく大切なのは1922年という年のことではないかと思います。

アメリカの著作権法は1976年と1998年に大きな改正があります。1976年の改正までは方式主義と言って、日本などとは全く違う考え方でした。登録しないと保護されなかったんです。なので、創作時から自動的に著作権が発生する日本などと違って、「発行」を起点にします。これまで言われていた1924年発行であれば、保護期間28年+更新による延長47年で1999年まで存続。そして、1998年の延長法の対象になり、さらに20年延長されて2019年まで保護されることになります。これが1922年発行となると、1997年に保護期間が終了しているので、1998年の延長法の対象にならないということになります。ただ、この曲は1935年に登録されたということもあるので、そこを起点と考えるとまたややこしくなります。

日本ではパブリックドメインになっているから関係無いよね、と思っていると思わぬところで痛い目にあいます。例えば、日本で作った映画のワンシーンで家族で誕生日を祝うシーンがあり、「ハッピーバースデートゥーユー」を歌っているとします。この映画が好評でアメリカで上映することになったとします。そうすると、アメリカではまだ保護期間中ですから、この曲の出版社であるワーナー・チャペルという大手音楽出版社から、使用料の請求、もしくは損害賠償の裁判ということが起こるリスクがあります。そう考えると、今回の裁判の行方はとても気になるところです。

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