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真冬のスポーツイベントの非日常感

北京オリンピック開催中。

夏の五輪と同じく、欧米のプライムタイムに合わせた変則的な競技時間に、選手やチームから競技時間変更の要望も多いと聞く。

ノルディックスキーのジャンプやスピードスケートは夜の遅い時間に行われ、フィギュアスケートは午前に始まる。プレー環境もコンディショニングにおいても選手、チーム、スタッフの苦労は容易に想像出来る。

東京五輪でも話題となったが巨額放映権料を支払う欧米のテレビ局の事情が日程や時間の決定に絡んでおり、この問題はなかなか複雑だ。

特に極寒の夜に行われているノルディック競技の環境は大変だと思うが、アメリカはその非日常感を逆手に極寒の中で行われるプロのスポーツ興業も多く、時としてその非日常感から逆に多くの関心を集める事もある。

代表的なのは1月にスーパーボウルに向けたプレーオフが行われるNFL。
米国北部にフランチャイズするチームのホームゲームでは氷点下の環境下で試合が行われるのは日常茶飯事。

史上最高の最低気温のゲームは"ICE bowl”とも称された1967年のNFCチャンピオンシップゲーム。気温は氷点下25度、体感温度は氷点下44度というNFL史上最も困難な気象条件の下で行われたが、なんと50,000人以上の観衆が集まったという。

ランボーフィールドに集まったファン

厳しい寒波によりランボー・フィールドの芝の下に埋め込まれたヒーターは作動せず、フィールドは凍りつき、審判はキックオフ後に舌が凍りそうな寒さのために金属製の笛を使えなくなり、肉声でゲームをコントロール。

またウィスコンシン大学ラクロス校のマーチング・バンドによって試合開始前とハーフタイムにパフォーマンスが行われることになっていたが木管楽器が凍り、管楽器のマウスピースはメンバーの舌に耐え難いほど冷たくなり、演奏は中止、7人のメンバーが低体温になったため病院に搬送されたと言う。

NFLでは9.11や今回のコロナのような国の有事以外で試合が中止、または延期となることは無く、過去にはFog Bowlと称される88年度のシカゴとフィラデルフィアの間で戦われたプレーオフのようなゲームもある。

霧が激しくなった後半は視界が僅か15ヤードほどしかなかった。

試合途中から凍てついたミシガン湖から吹き付ける冷気と試合前の好天時の温度の高さがシカゴのソルジャーフィールド周辺に集中して起こった稀な事象でした。

ボールパークに仮設されたリングで正月に戦うウインタークラッシック

普段ではアリーナ内で試合を行うプロホッケーリーグ、NHL。

2003年11月22日にエドモントンのコモンウェルス・スタジアムで行われたヘリテイジクラッシック。地元エドモントン・オイラーズ が3対4でモントリオール・カナディアンズに破れるもレギュラーシーズンでの初の屋外試合は57,167人の観客を集めて成功を収めた。(プレシーズンゲームとしては1954年にボストン、91年にラスベガスで開催実績)

2013年のヘリテイジクラッシック

興行としての成功に気を良くしたNHLは正月に行うウインタークラッシックを2008年から、2014年からはスタジアムシリーズと称しての極寒の冬に毎年3−4試合の屋外スタジアムゲームを開催している。

元々、寒冷地にフランチャイズの多いNHL。当然、冬場の外気温はかなり下がる。

寒かったとされるのが2003年の最初のヘリテイジクラッシック。こちらは氷点下20度、体感温度は氷点下30度だったらしい。

ソールドアウトイベントとして人気を得ているアウトドアゲームはそんな劣悪な環境下でも人気で多くの観客を集めているが2021年初頭のアウトドアゲームはNHLの無観客のリーグ戦運営に従い、全て中止が決定。

そこでどうせお客さんを入れないなら原点に戻ろう、とNHLが企画したのがBridgestone NHL Outdoors Saturday。ネバタ州のタホ湖畔にリンクを設置しリーグ戦2試合を開催。NBCスポーツネットワークで放送された試合は過去最高の視聴率を集める事に成功している。

レイクタホ湖畔に造られたリンク

過酷な環境であろうが、アスリートも観客も楽しんじゃう、ってところにアメリカンスポーツのスポーツ興業に対するスタンスがはっきりと映る。

お客さんも非日常の体験と楽しみ、アスリートも与えられた環境下で誠意一杯のパフォーマンスを見せる。時として不条理や不公平も起こりうるけどそれもスポーツ。

勿論、皆さんが行かれるときは万全の対策を施してくださいね。

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