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絵本の世界へ

幼い頃、母に絵本は読んでもらっていたと思うのだけれど、正直心に残っている絵本はほんの数える程。

今でも実家の本棚にある加古里子さんの「からすのパンやさん」と「海」。それをよく眺めていたのは覚えている。

私が絵本に再会したのは娘を妊娠した時。久々に足を踏み入れた絵本コーナーで目にした「どうぞのいす」に心惹かれた。柿本幸造さんの柔らかいタッチの絵に癒されたのはさることながら、登場する動物たちが順繰りに「思いやり」をリレーしていく姿に心がほんわか、じんわりと温かくなっていって、「絵本って何て愛がたくさん詰まった読み物なのだろう」と感動した。

そこから絵本の魅力にどんどん惹き込まれていく自分がいた。

特に赤ちゃん絵本は子供に語りかけるような優しい言葉、優しい絵がたくさん。

私自身も絵本に癒され、自分の周りの日常が多くの発見で溢れていることに気付かされ、パワーをもらい、心が豊かになっていくのを感じた。

子育てをきっかけに絵本と再会した訳だけれど、私にとっての絵本の魅力は止まるところを知らない。

言語を確立させる上で絵本の重要性はよく語られる。確かにそれも真なり。でもそれよりも何より、絵本は心を豊かにしてくれる。

そして、絵を通じて感じる豊かさは想像力に繋がり、心を強くしてくれる。視野を広げてくれる。

子育てを中心に据える生活の中で、ミャンマー、マレーシアと数年間海外で生活する機会があり、その間、現地の絵本も手に取るようにした。

すると、やはりそれぞれの国の文化が絵や文章の中に反映されていて、それがとても興味深かった。

と同時に、ストーリー展開の仕方は日本で目にしたお話とよく似た作品も多く、絵本を通じて人種を超えた人間の「普遍性」や「ユーモア」にも気が付いた。

2019年、約10年振りに東京で生活を始めた。人々の優しさやユーモアを感じる場面に遭遇したこともあったけれど、企業戦士として無表情で出勤する人の多さ、電車の中での活き活きとした目をして周りを見渡す人の少なさ、ビルが立て込んで空は綺麗な青空なのに陽射しが殆ど感じられない現実…

自分の心を強く持たなければ、心を失ってしまいそうになる無機質な世界にあっという間に取り込まれていってしまうような気がした。

人とぶつかりそうになって舌打ちされたり、無表情に憮然とした顔で通り過ぎられる経験もした。

もう少しだけ心に余裕があれば、ぶつかり合うようなピンチの現象だってユーモアに変えられるんじゃないか?

お互いに「ごめんなさい」と優しく言い合えれば、心の中に感じたギスギスとした軋みも和らいで、逆にそこで人と交わり合いを感じることができるのではないか?

相手を思いやる気持ちや周りに目を向ける大切さ、そしてそれによって世界や見方が変わり、広がっていく。

このことを私は再び絵本に触れることで子どもたちと一緒に教わった。それが私が感じている絵本の大きな魅力でもある。
絵本が持つ可能性を私なりにもっと探って、その魅力を多くの人に感じてもらいたい。そうしたら、もう少し優しさや思いやりを感じ合える世の中になっていくんじゃないか…

そんな想いを抱きながら、私の心に響いた絵本を色々紹介してい来たいと思っている。

参考絵本: どうぞのいす
作/香山 美子・絵/柿本 幸造

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